子どもの自立について中谷彰宏さんにお聞きしているコラムの第二回は「親が自立する方法」に重点を置いてお話をお聞ききします。「親が子どもの障害にならないために明日からできること」とは?
■見守ってあげることの大切さ
「子どもが転んだときに、親ができることは抱きかかえて起こしてあげることではなくて、自分で立ち上がるのを見守ること。あえて突き放すこと」
中谷さんは子どもの自立に一番必要なことは「親の自立」だと繰り返します。
「たとえば子どもが試合でミスをしたとき。一番わかっているのは本人です。そこで色々言われてしまうと、子どもたちは反発を覚えることもあります。ミスをしたときこそ成長のチャンス。唇を噛みしめてでも喉まで出かかった言葉を呑み込んで、見守ってあげるのが正解です」
中谷さんは「自分できちんと悩ませてあげる」ことこそ、親の優しさだと言います。
「自立ができていない親は口は出すけど肝心なときに子どもを見ていないことが多いんです。子どもにとって一番ショックなのは『見られていないこと』。 “突き放す”“我慢する”というのは何も無視をしなさいと言っているわけではないんです。しっかりと見ている。できなかったときも、できたときも子どもをちゃんと見てあげた上で、口は出さない。これが大切なことです」
■日常生活で養われることの大切さ
一方でピッチから離れた日常生活では「徹底的に厳しく」決めたことを守らせるというのが、自立へのカギになるそうです。
「家庭では親にしかできないことがたくさんあります。食生活や健康管理、しつけや礼儀もサッカーにつながる大切なこととしてしっかり教えるべきです。たとえば自分の道具は自分で持つ、手入れをする。優れたアスリートは自分の道具を大切にします。いざというときに自分の命運を託すものを他人に簡単に触らせたり、委ねたりしないものです。ゴルフのクラブを安易に『一回打たせて』なんてお願いしてくる人もいます。上級者は貸すくらいなら『それ、あげるよ』と譲ってしまう人もいます。それくらい道具は大切なものなのです。朝ご飯を食べるというのも、単にしつけの意味ではなく、レギュラーになる選手は朝ご飯を食べている選手が多いのは実際データになっています。お父さんたちにも聞いてほしいのですが、朝ご飯を食べる人と食べない人では年収が200万円違います。親が朝食を食べないのに、子どもが食べるわけはありません」
子は親の背中を見て育つ。よく言われることですが、子どもを変えたければ、まず自分から。それが一番の近道のようです。中谷さんはさらに続けます。
「親の行動は子どもたちに大きな影響を与えます。親の習慣が遺伝しているんですね。一方で運動能力というのはほとんど遺伝しないことがわかっています。二世選手が活躍するのは、習慣が遺伝しているからで身体的な遺伝からではないという説が有力なのです。裏を返せば、自分に運動能力がなくても子どもたちは伸びる可能性があるということ。習慣を変えれば『どうせ私の子どもだから』と諦める必要はないのです」
■サッカーは普段の生活で上手くなる!
「サッカーセンス、サッカーの上達はむしろサッカー以外のところで鍛えられる。親はサッカーに口出しはしない方がいい。でも親がきちんと関わるべき普段の生活こそがサッカーの上達を促す」
中谷さんは「普段の生活をしっかりとすることで、親も子どもも自立でき、集中力、発想力が豊かになり、結果としてサッカーの技術も身につくようになる」と言い切ります。
たしかに子どものサッカーを理由におろそかにしていること、子どもたちの言い訳を作ってしまっていることって意外に多そうです。サッカー以前、サッカー以外の生活の部分、もう一度見直してみる必要がありそうです。
中谷彰宏//(なかたに・あきひろ)
1959年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。【中谷塾】を主宰。全国で、セミナー・ワークショップ活動を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。『14歳からの人生哲学』『中学時代にしておく50のこと』(いずれもPHP研究所刊)など。著作は、920冊を超す。公式サイトはコチラ
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取材・文/大塚一樹 写真/田川秀之(JA杯全農チビリンピック2013全国決勝大会より)