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サッカー豆知識

2018年7月 4日

NEXTラーム、アラバを生み出すために。リーグ6連覇のバイエルンが本気で取り組む「育成プロジェクト」で育てるスキルとは

キーワード:ドイツバイエルンブンデスリーガ中野吉之伴育成

ドイツでサッカーコーチとして活動するかたわらサカイクにも寄稿する中野吉之伴さんが、ブンデスリーガにおけるそれぞれのクラブの立ち位置によるクラブ運営や選手育成事情をご紹介します。

前回はホッフェンハイムの育成についてご紹介しましたが、今回はブンデスリーガのトップクラブ、バイエルンについてお送りします。

バイエルンは2017-18シーズンを終えリーグ6連覇を果たし、クラブの収入は世界第4位と経済規模でも世界トップクラスです。このレベルのクラブの育成現場がどんな課題を抱え、どう解決しようとしているのでしょうか。
(取材・文:中野吉之伴)

<<前回:ドリブル、パス...個人技だけではサッカーが上手くならない! ドイツの育成クラブが推奨する選手を伸ばすトレーニング

Bayern Munich_Thomas Muller.jpg

(バイエルンの下部組織出身の1人 トーマス・ミュラー)

■D・アラバ以降自前選手なし

2017年8月1日、バイエルンの新しい育成施設FCバイエルンキャンパスがオープンしました。着工から22か月。30ヘクタールの敷地内には2,500人の観客席のついたスタジアムに加え、グラウンドが7面、フィットネスやリハビリエリア、35部屋の選手寮、バスケットボールやハンドボールができる体育館と、思いつく限り必要な施設と機能がすべてそろっていると言えるでしょう。

完成を受けて、U‐9からある各世代別チームはこれまで以上のサポートを受けることができるとバイエルン会長のウリ・ヘーネスは強調し、「才能ある若手選手の成長を理想的にするために創立された。この施設の完成が、選手が成功への道を歩むうえで大きなチャンスとなる」と話していました。

ヘーネスの言葉には、バイエルンにおける育成の存在意義についてクラブがどのようにとらえ、どのように改善するべきかの思いが表れています。

これまであった練習場に大きな問題があったわけではありません。ですが、より良い育成環境を作り上げ、より選手をサポートできる条件を整える必要性がクラブにはあったのです。

確かにトーマス・ミュラーフィリップ・ラームホルガー・バードシュトゥーバーと自前の育成から誕生し、長くプロの世界で活躍している選手もいますが、2010年にデビューしたダビド・アラバ以降、プロ選手として成功している選手は出てきていません。

ペップ・グアルディオラが才能を称賛し、プロデビューさせたガウディーノはその後出場機会が全くないまま、イタリアのキエーボへ完全移籍。快速FWと期待されていたユリアン・グリーンもレンタル移籍を繰り返させたあと、シュツットガルトにあっさりと売却してしまいました。

これは一方でバイエルンという世界でもトップレベルのクラブが直面せざるをえない問題でもあります。バイエルンだけではなく、バルセロナでもレアルマドリードでも同じような問題を抱えています。どれだけ才能がある選手でも、どれだけ丁寧に育成しても、U‐17、U‐19からいきなりCLで優勝を争うクラブでポジションを争える選手が誕生することは極めて稀だからです。

それだけのジャンプアップを果たすことができる条件とポテンシャルを兼ね備えた選手は世界でも数人しかいません。

とはいえ、要求を満たす選手の獲得手段が補強だけというのも長期的な視野で見たときにいかがなものか、という声もあります。特にここ数年は選手の移籍金の高騰が歯止めの利かないレベルにまで跳ね上がっており、バイエルンのように収入の多いクラブであっても、マネーゲームを続けるのは危険だからです。

ヘーネスはそうした流れを問題ととらえました。『いい選手を高額で獲得しつづけることが当たり前のことであってはならない』と。

それで「育成はバイエルンの将来への大事なベースとなる。我々としては移籍金高騰化が日常化しつつある今の流れに対するアンチテーゼとして、育成への投資を答えとしてやっていくつもりだ」と宣言し、自分たちの政策にもう一度考えを巡らせ、理念を持つことの大切さに立ち返ろうとしたのです。

■バイエルンクラスでも育成のコンセプトが発展していない!?

ですが施設が完成したからと、何もしないまま流れに任せて偶然に期待をして、育成と真正面から取り組まなければ、可能性の芽をつぶすだけです。やるだけのことをやってそれでもダメならしょうがないですが、これまでにクラブはそこまでのことをしてきたでしょうか。

例えば、CL参加クラブはU‐19版CLであるUEFAユースリーグに参戦できるのですが、バイエルンのU‐19チームはここ数年ほとんど勝てないでいました。他国の同世代の取り組みと比べてだいぶ水をあけられていたのは否めません。

そんなトップチームの自前選手へのアプローチに対して、セカンドチーム監督のティム・バルター氏は異を唱えていたことがあります。

南ドイツ新聞の取材に「バイエルンには残念ながらまだクラブを通しての育成コンセプトが発展していない。クラブにとってリーグで優勝することが優先順位の1番上になっている」と話していました。

どのように選手を育成していくのかをはっきりさせなければ、クラブ内での取り組みにも迷いがでてしまいます。バルター氏もこの点を強調しています。

どうすればトップチームでプレーする選手を増やすことができるのだろうか、と。

「今季、セカンドチームやU‐19からフランク・エビナやルーカス・マイといった選手がトップデビューを果たし、プロ契約を結んだ。だが、毎年のように選手をトップに送ることは不可能だ。それに他クラブを通じて育成する方が選手が成長できる場合もあるのを忘れてはいけない。バイエルンのトップチームに上がるべき選手がプレーする場所として、3部リーグというのは要求に満たないじゃないか。そこを最初の段階とするのはいいとして、その次にプレーする場所を1-2部リーグ内で選手に提供しなければならない」

次ページ:本腰を入れたバイエルンが目指す育成プロジェクトの内容

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文:中野吉之伴、写真:新井賢一

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