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インタビュー

勝てば何でも良いだろうという考えではその先に繋がらない、新生・流経柏がU-12を立ち上げた理由

公開:2021年4月15日

キーワード:クラブ・ドラゴンズ主体性本田裕一郎榎本雅大流経柏流通経済大学柏高校サッカー部稲垣雄也自立過干渉

流通経済大学付属柏高校の榎本雅大監督に行ったインタビューの前編では、昨年から取り組むコミュニケーション能力を高める取り組みと共に、指導者と選手の関係性についてお聞きしました。

後編の今回は、指導する中で感じる保護者の変化と、今年から新たに立ち上げる下部組織「クラブ・ドラゴンズ柏U-12」についてお聞きしました。
(取材・文:森田将義)

 

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クラブ・ドラゴンズ柏の代表でU-12の監督を務める稲垣雄也さん(C)森田将義

<<前編:「上下関係ではなく、一人の人間として」対話を大事にする流経柏・榎本監督が始めた選手と今まで以上に向き合う新たな取り組み

 

■自立している選手が活躍できる

大学卒業後に指導者としてのキャリアをスタートさせ、この春で20年目。これまで多くの高校生を見てきた榎本監督は、保護者の変化を感じると口にします。

過干渉すぎる気がするんです。失敗して成長していくのに、色んなことを親がやってしまうから、失敗しない。転んでから対処すれば良いのに、転びそうになると『怪我しちゃうよ』と先に手を差し伸べるのと同じです。なので、『努力とか知恵を出さないと失敗するんだよ』という所から教えないといけないんです。サッカーも私生活でも人任せになっている気がします

これまで指導してきた選手の中で、印象に残っているのは北海道コンサドーレ札幌でプレーするMF青木亮太選手です。世代別代表で飛行機移動する際は荷物が多く、朝も早いため空港まで送り迎えする保護者も多いのですが、青木選手は家から空港まで一人移動していました。

「周りに頼らず自分でやらなければいけない習慣がつくと色んな知恵が出てくると思うんです。結果を出さなければと自主練習するのと同じで、私生活で自立している選手がサッカーで活躍できるんだと彼から学びました」

 

■サッカースクールに行けば上手くなるわけではない

そうした保護者の変化に伴い、「本来は失敗と成功から学んでいくのが教育の根幹なのに、"やってあげる"に変わってきている」とも榎本監督は話します。

「サッカースクールに行くとサッカーが上手くなるというのも誤解。こんな練習をすれば良いんだよという仕組みを習いにいく場所であり、上手くなるには自分で練習するしかない」。

自ら成長する選手の重要性は、高校生が受けるインタビューからも感じたと榎本監督は話します。今年、流経柏からジェフユナイテッド市原・千葉へと加入したGK松原颯太選手は取材される度に、「こんなことを話した方が良いな」と気付き、修正することで上達していったそうです。

大人がこうやって話なさいと対応を教えるのは簡単ですが、選手の成長に繋がりませんし、本音ではない仮面と言える言葉を褒められても意味がありません。

「最初は『アイツ口の利き方が悪いな』と思われてもОKだと思うんです。記者の人が聞きたいのは本音の部分。言葉が足りなくても、『この子はこんなことを考えているんだ』と分かる方が良いじゃないですか。松原がプロまで届いたのは、そうしたインタビューも含めて自分で成長したから。プロの練習に参加したら随分大人びて帰ってきたなと思うくらい成長していました」

 

■流経柏がU-12を発足させた理由

選手との関係性を見直し 、コミュニケーション能力の向上に力を入れ始めた昨年に続き、今年の春からは、また新たな取り組みも始めました。これまで3種年代の下部組織として活動しているクラブ・ドラゴンズ柏U-15に加え、U-12も発足させたのです。

監督には、流経柏のGKコーチ、ジェフユナイテッド市原・千葉のスカウトを歴任した稲垣雄也氏が就任し、これから活動を本格化していきます。U-12を立ち上げた理由について、榎本監督はこう話します。

「1種から4種年代まで持っているJリーグのアカデミーはあっても、学校組織がベースとなっている組織はない。選手が育っていくためには、教育が根幹にあるのが大事だと思うんです。流経が好きで、組織を良くしたいと思ってくれる選手を一人でも多く育てたい」

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流経柏高校サッカー部の榎本監督(右)は、「流経が好きで、組織を良くしたいと思う選手を育てたい」と語ります(C)森田将義

就任にあたって、稲垣監督は「今回ジェフを辞めて流経に戻ってきたのは、相応の覚悟を持ってきたつもり」と話す通り、並々ならぬ想いで小学生の指導に当たります。

「日本一を目指している大学や高校の選手を見ていると、上に行くために必要な勝者のメンタリティーを持っている。同じような組織になるために、強豪ではなく結果でも育成でも突き抜けるのがテーマ。Jクラブが街のシンボルであるように、街クラブがシンボルにもなれると思っています。Jクラブにできて、街クラブにできないことはない

 

■チームの雰囲気や場所が選手のマインドを変える

稲垣監督は流経柏のコーチをしていた時代に、ピッチ外で頼りない選手もいざ流経柏のユニフォームを着れば、キリっと表情が変わり、勇敢に戦う姿が印象に残っていると話します。

「感じたのはチームの雰囲気や場所が選手のマインドを変えるということ。スカウト時代も含め色んなチームを見させてもらいましたが、簡単なことではなく、一番難しいことなんだと感じました。勘違いとギリギリのラインだと思うんですけど、ユニフォームを着ただけで強くなったと思えるのは凄い。それはどの試合や練習でも負けてはいけない、勝ちに拘るんだという所から生まれる物だと思うんです。僕自身、みんなが格上と思うチームが相手でも『負けるわけがない』と思っていました」。

そうした勝者のメンタリティーとも言える心を持った選手を育てるのが、クラブ・ドラゴンズ柏U-12のテーマです。

 

■サッカーの理解度は、自立した心や自分自身での工夫が必要

ただ勝負に拘るのではなく、選手育成との両立を図るのもクラブ・ドラゴンズ柏U-12が目指す方向性です。

「選手を上のステージに引き上げようと考えると勝てば何でも良いだろうという考えでは、その先に繋がりません。勝利と育成の両方を目指さなければいけない。育成に拘っているから勝利を度外視するのは、指導者の逃げだと思うんです。ゴールを目指して、ゴールを守るスポーツというサッカーの本質はしっかり伝えていきたい」。

稲垣監督は指導者、Jリーグのスカウトとして多くのプロサッカー選手と接する中で、能力任せでサッカーをしていては上手くいかない選手が多いと感じていました。一流の選手が超一流に、二流の選手が一流になるためには、サッカーへの理解度が重要です。そのためには、自立した心や自分で考えて工夫できる力がないといけません。

 

■自分の強みを持てる選手を育てたい

目指すスタイルもこれまで多くのタレントを輩出してきた流経大柏と稲垣監督だからこその考え方が伝わります。

サッカーは11人でやるスポーツ。強い選手もいれば、上手い選手もいりますし、汗をかける選手も必要です。自分の強みを持てる選手を育てていきたい。チームに個が合わせるのではなく、個を活かせるようなチームにしていきたい。チームとしてのサッカーに拘り過ぎると『こういうサッカーをするとこういう部分は良くなるけど、これはできないよね』と、他のチームに進んだ時に選手が苦しんでしまう。それに、特定のスタイルが良いと保護者が勘違いしてしまう危険性もあります。バルセロナやマンチェスター・シティのサッカーは素晴らしいけど特殊です。同じサッカーを目指すなら、寝る間も惜しんでインサイドパスを練習する必要が出てくるけど現実的ではありません。全員に押し付けると、良さが消えてしまう選手もいるので、それぞれの良さを活かしたサッカーをしていきたい

 

 

強豪の立場に満足せず、新たな取り組みをスタートさせながら、選手と向き合うのが新生・流経柏。これからもサッカー界を沸かせる選手が出てくるのは間違いありません。

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取材・文・写真:森田将義

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