インタビュー

2020年10月23日

Jクラブで長年コーチをしていた2人が語る「物事の本質はシンプル」である理由

2020年12月末、サカイクは「タニラダーキャンプ」と「澤村公康GKスぺシャルキャンプ」を大阪のJ GREEN堺で開催します。そこで今回は、両キャンプのメインコーチを務める、谷真一郎氏と澤村公康氏の特別対談を実施。Jクラブでトップ選手への指導経験を持ち、ジュニアを始めとする育成年代の指導にも力を入れているおふたりによる、トレーニングの本質を追求する対談。後編では、技術や駆け引きといった、プレーの成否を分ける部分について、話は進んでいきます。(取材・文:鈴木智之)
>>前編はこちら

■「いかに余計な動きをしないか」が大切な理由

澤村:谷さんが見て、ステップワークにおいて世界との差はありますか?

谷:世界トップレベルの選手が、必ずしもみんなステップワークがうまくできているかというと、そうではないんです。誰もが知るビッグクラブのスター選手でも、相手に抜かれて倒れ、尻もちをつく場面もあります。

澤村:それは意外ですね。

谷:ステップや動きがよくないときは、「なぜだめなのか?」というはっきりとした理由があります。前傾しすぎたり、止まったときに両足が揃ってしまっていたりと、チェックポイントがいくつかあるのですが、それはトレーニングで修正できます。

澤村:いまの話で思い出したのが、GKの「プレジャンプ」についてです。その場で小さくジャンプして、反動をつけて大きく動くための動作をプレジャンプというのですが、僕は「プレジャンプは必要ない」と考えているんですね。

谷:なるほど。

澤村:プレジャンプをして、体が宙に浮いているときにシュートを打たれると反応できないからです。以前、Jクラブで指導していたときに、あるブラジル人選手が何度もトーキックでシュートを打っていました。「なんでトーキックばかり蹴るの?」と訊いたら、「GKのタイミングをずらすため」と言っていました。彼は「決まるシュート=良いシュート」だと言っていて「プレジャンプすると、タイミングをずらされるよ」と言っていました。

谷:僕は現役時代FWだったのでよくわかりますが、GKのタイミングを外せば、ボールに勢いがなくても入るんですよね。

澤村:そうなんです。ではなぜプレジャンプをするのかというと、地面からの反力を使って、より大きなパワーを出すためです。でも、身体の近くに飛んできたボールに対しては、大きな力は必要ありません。それを考えず、どんな場面でもプレジャンプをしているGKをよく見かけます。おもしろいのが、ジュニアの子たちはプレジャンプをしないんですよ。

谷:ほう。


(画像提供:ダートフィッシュジャパン)

澤村:ゴールが小さいので、地面から反力を得なくても、ポジショニングや立ち位置が良ければ、セーブすることができるんです。これが中学生になり、ゴールが大きくなった途端にプレジャンプをする選手が増えます。

谷:プレーのレベルが上がってくると、「いかに余計な動きをしないか」が重要ですよね。ラダートレーニングも同じで、サッカーの試合中にする前後のスプリント、方向転換を、ラダーの4マスを使って繰り返していきます。することはシンプルです。

澤村:物事の本質はシンプルなものですよね。でも、派手なトレーニングに目を奪われてしまう指導者も少なくないと思うんです。GK練習で、前方のコーンにタッチして、下がって背後のボールに対応するトレーニングがありますが、GKが試合中に発揮しなければいけないのは、コーンという目印に対応することではなく、「キッカーはどういうシュートを打ってくるか」という観察力なんです。

谷:そのとおりですね。プロはその部分で駆け引きをするわけで。わざと右を見ておいて左に蹴ったりしますからね。

澤村:「この選手はループシュートを狙っているぞ」「強いストレートボールではなく、カーブをかけて狙ってくるな」とか。キッカーの進入速度や角度、スキルやメンタリティによって予測をたてます。ただし、キッカーより先に動くと逆を突かれてしまいますし、すべての予測が当たるとも限らないので、違うとなった瞬間にプレーを変えられることが大事。そのときに重要なのが、ステップなんです。

■キャンプでは「練習のための練習」にならないトレーニングを


谷:サカイクのGKスペシャルキャンプでコラボするときは、GKに必要なステップを細分化して、ラダートレーニングに落とし込めると良いですね。

澤村:ぜひお願いします。ラダートレーニングにキャッチングを加えるのもありですよね。進行方向に向かってボールを投げて、GKが対応したり、進行方向とは反対側にボールを投げて、足を抜いて反応するとか。これは「コラプシング」という技術で、ヨーロッパのGKに得意な選手が多いです。

谷:「このトレーニングは、試合のどの状況で発揮するためにやるのか?」と考えると、トレーニングの組み立てや選手へのアプローチも変わると思います。GKスペシャルキャンプでは「試合からの逆算思考」で、子どもたちに本質的なトレーニングを提供したいですね。

澤村:そうなんです。ステップが上手になることが目的ではなくて、GKであれば、ステップを踏んでボールに反応し、すぐに立ち上がって、次のプレーに素早くつなげる動作が必要なわけです。その目的の第一歩がステップなんですよね。目的はサッカーのゴールキーピングがうまくなることですから。

谷:そこを見失うと、そのトレーニングはなんのためにやっているの?となってしまいます。私も色々な指導現場を見ていますが、「これ、練習のための練習になっていない?」と思うこともあります。

澤村:そこは我々指導者が、常に気をつけなければいけないところですよね。キャンプでは、子どもたちのメンタリティにも影響を与えていきたいですね。僕も谷さんもJクラブのトップ選手を指導した経験があるので、プロになるための取り組む姿勢、考え方など、キャンプが終わっても意識できるようなものをお伝えしたいです

谷:そうですね。取り組む姿勢や考え方が変わればプレーは変わりますし、動きの質が上がると速くなるだけでなくケガも減ります。ジュニア年代で正しい動きを身につけておけば、それがベースとなって成長していくので、その後の成長曲線も変わっていくと思います。

澤村:コラボして、良い取り組みができそうですね!

谷:はい、よろしくお願いします。年末が待ち遠しいですね!

>>谷コーチも参加する「GKスペシャルキャンプ」はコチラ

■対談したコーチのプロフィール

谷真一郎コーチ(ヴァンフォーレ甲府・フィットネスダイレクター)

愛知県立西春高校から筑波大学に進学し、蹴球部に在籍。在学中に日本代表へ招集される。同大学卒業後は柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し、1995年までプレー。 引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻する。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FCに所属し、2010年よりヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務める。 『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』
【取得資格】
筑波大学大学院コーチ学修士
日本サッカー協会認定A級ライセンス
AFCフィットネスコーチ レベル2
日本サッカー協会認定キッズリーダー
澤村公康コーチ

ゴーリースキーム 代表
青山学院大学 GKアドバイザー、専修大学 GKアドバイザー
【指導歴】
1995年 - 1997年 鳥栖フューチャーズ 育成GKコーチ
1997年 ブレイズ熊本 育成GKコーチ
1998年 - 2003年3月 大津高校 GKコーチ/JFAナショナルトレセンコーチ
2003年4月 - 2008年1月 浦和レッドダイヤモンズ育成 GKコーチ/女子日本代表 GKコーチ/JFAナショナルコーチングスタッフ
2008年2月 - 2011年 川崎フロンターレ育成 GKコーチ/青山学院大学 GKコーチ
2012年 - 2014年 浜松開誠館中学校・高等学校 GKコーチ
2003年,2013年 日本高校選抜 GKコーチ
2015年 - 2018年 ロアッソ熊本 GKコーチ
2019年 サンフレッチェ広島 GKコーチ

【公式Instagram】
ゴーリースキーム goaliescheme

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