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女子サッカー選手に多いケガとは? スフィーダ世田谷に聞いた女子ならではのコンディション管理の方法

公開:2023年9月13日

キーワード:なでしこジャパン.ワールドカップスフィーダ世田谷女子サッカー

先日開催された女子のワールドカップ。なでしこジャパンは準々決勝で惜しくも敗退しましたが、大いに日本を盛り上げてくれました。

2011年、なでしこジャパンが女子ワールドカップに優勝して以降、女子サッカーがメジャーになり、2021年には日本初の女子プロサッカーリーグ『WEリーグ』がスタートしました。

サッカーをする女の子は増えており、指導者や保護者など、女子のサッカーに関わる人は、男子と女子の違いを理解するのも大切なこと。

そこで今回は、2022プレナスなでしこリーグ1部で優勝した『スフィーダ世田谷FC』の代表を務め、20年以上女子サッカーに関わる川邊健一さんに「女子選手に多いケガ」と「コンディション管理」について話をうかがいました。
(取材・文 鈴木智之 写真提供:スフィーダ世田谷)

 

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スフィーダ世田谷FCの選手たち 写真提供:スフィーダ世田谷

 

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■女子選手に多いケガと、ケガする状況

女子選手に多いケガが、ひざの前十字靭帯損傷です。急な方向転換やジャンプ、急停止などの際、ひざに強い衝撃がかかり、損傷してしまうケースが跡を絶ちません。

川邊さんは「各チームで毎年2人ほど、前十字靭帯をケガする選手がいます」と話し、こう続けます。

「でも2人というのは、他のチームに比べて少ないと思います」

他のチームに比べて少ない理由は「練習量の少なさ」と関係があるそうです。

「女子チームは、週に6日練習や試合をして、オフは月曜日だけのところが多いです。でもうちは試合の2日前と試合の翌日はオフにしています。日曜日に試合がある場合、火水木練習、金曜日オフ、土曜日練習、日曜日試合、月曜日がオフです。その他、選手の様子を見て、疲れている場合は休みを入れることもあります」

 

■リフレッシュする時間は大事 長くて非効率な練習になっていないか見極めが必要

トレーニングを1回90分程度と短くしているところもポイントです。川邊さんは「日本一少ない練習量で、日本一走るチームを目指している」と言います。

「うちの選手はみんなアマチュアなので、時間に対する価値は重要視しています。日本は練習時間が長く、非効率的に練習しているチームも多いですよね。確かに『やった感』は得られるかもしれませんが、はたしてトレーニング効果はあるのか。そこを見極める必要があると思います」

スフィーダの選手はスポンサー企業のサミットなどで、働きながらサッカーをしています。フルタイム勤務でないとはいえ、サッカー選手と二足の草鞋を履くのは、肉体的にも精神的にもハードです。

「リフレッシュする時間はすごく大切なので、根詰めて、サッカーばかりにならないようにしています。これはトップチームだけでなく、ユース以下にも共通した考えです」

 

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■練習時間が短いから勝てない、は昔の考え。合理性はない 

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川邊さんは「練習時間が短いから勝てない」という主張には合理性が無いと語ります 写真提供:スフィーダ世田谷

 

移籍してきた選手に「練習時間が短いから試合に勝てないんだ」と言われたこともあったそうですが、川邊さんは「それは昔の考え方なんです。そこに合理性はない」と断言。そのスタイルを続けた結果、2022プレナスなでしこリーグ1部で優勝。正当性を証明しました。

「トレーニングは質と強度を求めているので、練習参加に来る子たちは『めちゃくちゃきつい』と言います。90分という限られた時間を最大限、効果的に使うことを考えていますし、練習が終わったらヘトヘトの状態に持っていくので、その方が時間の使い方として効率的だと思っています」

ジュニアサッカーの現場でも「長く練習すればするほど上手くなる」といった考え方が主流ですが、長時間トレーニングしたからといって、質がともなっていなければ上達しません。練習することが目的ではなく、サッカーが上手くなることが目的なので、そこを履き違えないようにしたいものです。

 

■痛みや疲労はフォームで管理、生理痛などは自己申告制

高強度のサッカーを展開するにあたり、コンディション管理はとても大切です。スフィーダ世田谷FCはGoogleフォームを使い、前日の練習強度や朝の疲労度、痛めている部位、生理痛などがある場合は自己申告で入力しているそうです。

「月経は女性特有のものですが、特別に意識はしていません。選手のパフォーマンスが上がらない、おかしいなと思ったときにフォームを見て『月経だから、動きが悪かったんだな』と、コーチングスタッフがわかっていればいい。原因がわかっていれば、問題はないと思います」

 

■体は食べたものでできている、食事はしっかり意識して

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選手たち自身も栄養や休息、ケガの知識を持つことが大事 写真提供:スフィーダ世田谷

 

女性の場合「太りたくない」という理由で食事を制限することもありますが、サッカー選手に限っては「食べることも大事」と言葉に力を込めます。

人間の体は食べたものによって作られます。それを理解していれば、何をどのタイミングで食べれば良いのか、意識せざるを得ないと思うのですが、そこまで意識が高いとは言えません。クラブが選手を教育する必要性を感じています」

若いうちは、食事や休息にそこまで目を向けなくても、身体が動いたり、コンディションを保つこともできますが、長い目で考えると、栄養や休息の知識は必須です。

「女子の場合、男子よりもケガや痛みに強い気がします。我慢して、頑張れてしまうのは女子の傾向です。ケガからの復帰に関しても、休めば治ると思っている人も少なくありません。リハビリをせず、休んで痛みがなくなったから復帰して、またすぐにケガをしてしまうケースも多いです」

リハビリに関しては、専門家にアドバイスを受けて取り組むことが重要です。

「病院に行って、『3週間安静にしてね』と言われて、何もせずに3週間経って、痛くなくなったから復帰したとします。でもその段階では、筋力が戻っていません。再発防止のためにもただ休むだけではなく、リハビリをしっかりする。その知識は女子に限らず、必要だと思います」

 

■「あのチームがあんなに練習しているんだから、うちも」と考えないこと。子どもは遊ぶことも大事

川邊さんは女子サッカーの課題に触れるとともに、子どもたちについて「サッカーだけでなく、いろいろ遊ぶべき」とアドバイスをくれました。

長く練習をすると、それだけ疲労が蓄積し、ケガにつながるリスクも高まります。日本人は真面目なので、『あのチームがこれだけ練習しているんだったら、うちはもっとやらなければいけない』と考えがちですが、それが本当に正しいことなのか。とくに子どもたちの場合は、サッカーだけにならず、遊びなどを通じて、様々な体験をすることも大切だと思います」

サッカーが上手くなるためにも、自分の体やコンディションと向き合うことは不可欠です。なにより、ケガをして長期離脱すると、大好きなサッカーを楽しむことができなくなります。

そうならないために、日々のコンディションに目を向け、適切な栄養や休息をとることを心がけましょう。長い目で見ると、それがサッカー選手としての成長につながるはずです。

 

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