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運動能力

低下している現代の子どもの運動能力。親が子どもにしてあげられることとは?

公開:2013年6月20日 更新:2023年6月30日

キーワード:体力

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文部科学省の調査によりますと、子どもの体力・運動能力は、1985年ごろから低下しています。現在の子どもの結果を親の世代である30年前と比較すると、ほとんどのテスト項目において、子どもの世代が親の世代を下まわっています。運動能力の低下はサッカーをする上ではもちろん、日常生活でも重要な要素です。そこで、今回は運動能力について、大阪教育大教育学部の赤松喜久教授にお聞きしました。
 
 

■なぜ運動能力が低下しているのか、また、低下とともに起きる問題とは

近年見られる運動能力の低下には運動の出来る子・運動の出来ない子の二極化傾向にあるとの調査結果が出ています。理由について赤松先生は、
 
「一つ目の理由は保護者の中で社会に出た際に必要な読み書きや計算といった勉強が最優先になり、保護者が運動やスポーツを後回しになっている風潮が挙げられます。二つ目の理由は遊びの多様化。僕たちの子どもの頃は遊びといえば、外遊びしかなく、遊びの中で自然と体を動かしていましたが、今はゲームなど室内での遊びを選ぶ子どもが多く、体を動かす機会が減っていることが挙げられます。
 
そして、最後の理由は子どもたちの多忙化です。ある市で調査をした結果では、だいたい週4日は習い事に通っている子が多く、中には週7日毎日、習い事に通っている子もいました。本人に遊ぶ気があっても、友だちとの時間が合わずに遊んでくれる相手がいないのです。よく言われる3つの間、“仲間、時間、空間”が今の子どもにとって不足しています。体を動かすことの意味、重要性を保護者に知ってもらうことが必要です」
 
と分析するように、現代では周囲の大人が運動するための“三つの間”を用意する必要があります。一方で、サッカーや野球などスポーツをやっていない子どもにとって運動は一見、必要ないと考える保護者もいるかもしれません。しかし、それは間違った考えで、幼少期に運動するメリットがあります。
 
「体を動かすと人間の身体の機能が高まるということはよく知られていますが、使わなければ、体の機能は低下するという事はあまり知られていません。小学生の頃には巧に動くことが出きる能力を、中学生は全身の持久力を高めるといった年代ごとに高めておきたい力というのがあります。ほどよく運動すれば高まるのですが、しないままだと本来高まるはずだった力が身につかずに大人になってしまうという問題が潜んでいます。スポーツをやらない子どもたちにとっても、日常生活でも重要になります」
 
小学校でも朝礼で倒れない子がまずいないと言われていますが、ずっと立ち続けることが出来ないという運動能力の問題とともに、朝ごはんを食べない、就寝時刻が遅い、テレビを見る時間が長い、といった生活リズムの変化も大きな要因です。サッカーの上達とともに運動能力を高める意識や正しい生活習慣を身につけることが大事です。
 
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■大事なのは“運動を好きになること” 保護者に必要な心構えとは?

子どもたちが運動するためには保護者のサポートも必要となります。大事なのは“運動を好きになる”気持ちを育むこと。赤松教授は“褒める”ことの大事さについて話します。
 
「些細な事から始めてください。学校体育でも低学年では“多用な動きを作る遊び”、中学年では“多用な動きを作る運動”、高学年になって初めて、“体力を高める運動”と変化していくように、小学校低学年のお子さんにいきなり「体力をつけよう」と言っても分からないと思います。お子さんから『今まで出来なかったこんな動きが出来るようになったんだよ』、『体育でこんな事をやったよ』といった会話が出た際に褒めたり、一緒に喜ぶことが大事です。
 
ある雑誌の編集長が講演会で、『子どもを育てるには、“s”を外すことが大事なんです。“sodateru(育てる)”からsを外すと“odateru(おだてる)”になる』と話していました。育てるという事には褒めおだてることが大事。子どもに“またやりたい!”と思わせる言葉が保護者に必要なのです」
 
赤松教授の“褒める”の反対に子どもたちにかけてはいけない言葉もあります。貶す、怒ることはもちろんダメですが、“人との比較”も子どもたちから楽しい気持ちを奪いかねません。
 
「他の人との比較ではなく、子ども自身との比較を大事にしてあげましょう。保護者を含め、周りの大人が『出来るようになって良かったね』と
声をかけたり、暖かい眼差しを向けることが大事です。私も毎週土曜日に子どもたちを集めて陸上クラブをやっているのですが、誰かと比べるのではなく、その子が記録を伸びたことを褒めてあげて、『よし、もう一本走ってみようか』と思わせるように声がけしています。
 
また、子どもたちに口すっぱく“皆で支えあい、認め合う事が大事だよ”という事を言っています。自分は自分、他人は他人。それぞれが伸びていく事を認め合う姿勢が必要です。学校の体育でも誰かとの競争ではなく、自分との競争を意識するように変わってきている。例えばかけっこの場合、順位は最下位だったけど、前は18秒だったけど今回が17秒だったのなら、順位や勝敗ではなく、記録が伸びたことに着目して、褒めてあげることが大事なのです」
 
 
赤松教授の陸上クラブも初めて出た大会のリレー競技で、240チーム中、ダントツの最下位でしたが、子どもたちのほとんどが「楽しかった」と笑顔を見せていたそうです。順位は上がらなくても、楽しい気持ちが陸上を続けたいという気持ちに繋がり、続けることがバトンの受け渡しなど技術の上達や、記録の向上になる好循環を生みました。
 
競技は違いますが、赤松教授の運動能力についての言葉や陸上クラブでのエピソードはサッカーにも役立つものですし、子育てにとっても重要なものではないでしょうか?
 
 
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赤松喜久先生 プロフィール
大阪教育大学教育学部保健体育講座教授。専門分野は、体育・スポーツ経営学、身体教育学。
未来の教師を育てる傍ら、大阪教育大スポーツクラブ(陸上部)の監督として、子どもたちの指導を行っている。
 
 
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取材・文/森田将義 写真/新井賢一(ダノンネーションズカップ2013より)

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