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ジュニア年代の正しいフィジカル・コンディショニング論

【第4回】『全力で寄せる!』ことの落とし穴。相手にかわされない理想の動き方とは?

公開:2012年9月25日 更新:2020年3月24日

キーワード:コンディショニングタニラダートレーニングフィジカル走力

ボールを追うときや相手に寄せるとき、速く到達するためには「全力」で走ることが良いと思われがちですが、Jリーグフィジカルコーチの谷真一郎さんは「全力は逆効果」と言います。陸上競技のように一直線に走るだけではないサッカーとうい競技において、身につけておくべき動きとはどのようなものなのでしょうか。(取材・文/鈴木智之)

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サッカーの試合中、9割以上がボールを持っておらず、走っている時間です。試合の多くの時間を占める「走る」という動きについては、私自身指導をしていく中で、まだまだレベルアップできる選手がたくさんいると感じています。例えば、ボールに寄せる動きや、ドリブルをしている相手選手についていく動き。その際のターンの仕方や身体の使い方を、正しく理解して、実践できる選手を増やしていきたいと思っています。

同時に、指導者の方にも正しい動きや、身体の動かし方を理解してほしいと願っています。代表的なのが「寄せる」動きです。
相手がボールを持っているとき、コーチに「速く寄せろ!」と言われ、全速力でボールに寄る選手を多く見かけます。相手の自由を奪うために速く近づきたい気持ちもわかりますが、守らなくてはいけないのは、自分の背後にあるゴールです。前だけでなく、後方に対する準備をしながら近づかないと、簡単に入れ替わってしまう危険性があります。ボール保持者のレベルが上がってくると、寄せても保持者からボールを奪えないケースも多くなります。そこで相手の動きを規制して、次のアクションで奪うことを考えます。そのときに一番やってはいけないのが、全力でボールに寄せて行って、相手にかわされて入れ違いになることです。

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■大切なのはリラックスした状態でプレーすること

「全力で寄せろ!」とコーチに言われ、そのとおりに行くと、かわされてしまった場合、次の動作に移るのは簡単なことではありません。全力で走ると、身体に余計な力が入るのでスピードは落ちます。スピードを上げる際には力まないことが大切で、それはプレーの判断にも影響します。全力で寄せるような局面では、「寄せることだけ」に意識が集中してしまい、とっさの動きに対応することができません。脳からの指令が出ないと動き出せないので、「あっ、しまった」と思った瞬間に相手の動きについていくことができなくなってしまうのです。

プレーの判断にしても、身体の動きについても、大切なのはリラックスした状態でプレーすること。リラックスした状態から爆発的に、ダイナミックに動かすのが良い身体の使い方です。私は、指導において「全力」とか「100%」という言葉は使いません。力みによるスピードの低下、視野の狭まり、次のアクションへの遅れをなくす為です。感覚的には「80~90%」で動くことが、これらの問題を解決してくれます。

更に、良い対応をする為には、前方だけでなく後方にも意識を払う必要があります。私が考えるベストの割合は前方3割、後方7割です。後方への意識が多いことに、驚く方もいるかもしれません。これはあくまで『意識』の話なので、前方へ全力で行く割合を落としても、スピードが急激に落ちることはありません。むしろ全力でいくよりも、力みがなくなるのでスピードが上がり、エネルギーのロスもなくなります。

一生懸命やりすぎることで力みが生じ、エネルギーをロスすることにもなりますし、視野も狭くなります。結果、スピードが落ちて、次のプレーに対応しづらくなるのです。『全力で寄せる』という言葉は、サッカーにおいてはリスクをはらんでいます。全力で寄せて行って、ダブルタッチなどでかわされた場合、反応することはできません。次のアクションを速くおこすために、後ろへ7割の準備をすることが、次のプレーへのスピードを上げることにつながります。

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その際、重要になるのが『ターンの仕方』です。前々回のコラムで紹介した、地面反力を使うパワーポジションを確認するとともに、腰をひねる『ツイスト』の動きがポイントになります。腰のひねりを維持しながら、どの方向にも対応するために上半身はバランスを保って正面を向き、下半身だけを半身にします。同時に、進む方の足のつま先が斜めか横を向いた状態で『ひざをロック』させ、ひざを過度に曲げることなく地面反力を使って進んでいきます。この動きはアジリティ系やラダートレーニングで身につけることができます。

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効率的なターンの仕方を覚えれば短期間で動きのスピードを上げることが出来ます。理想的な動きは、プロ選手でもできていない人が多いです。なぜなら、そこにフォーカスされておらず、方向転換の方法を教わっていない選手が多いからです。

このように、速く走りたい、速く動きたい人は、トレーニングを通じて『正しい身体の動き』を知ることから始めてみるといいと思います。

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谷真一郎(たにしんいちろう)//

愛知県立西春高校から筑波大学に進学し、蹴球部に在籍。在学中に日本代表へ招集される。同大学卒業後は柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し、1995年までプレー。 

引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻する。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FCに所属し、2010年よりヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務める。 

『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』(2012年9月現在)


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