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汗の分だけ、成長できる

「辞めてもいいよ。両親のそのひと言に責任を感じた」元日本代表GK川口能活

2015年5月22日

キーワード:FC岐阜ゴールキーパー川口能活

サッカー界の第一線で活躍する選手やコーチに、少年時代に汗をかいて努力した思い出や当時の経験から得たものについて語ってもらう月一連載企画『汗の分だけ、成長できる』。第3回となる今回は、1996年のアトランタ五輪や1998年のフランスワールドカップに出場し、40歳を迎える今でもFC岐阜で活躍を続ける川口能活選手の登場です。(取材・文 森田将義 写真 平間 喬)
 
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■テレビで観たかっこいいプレーを真似した少年時代

――まず、サッカーを始めたきっかけを教えてください。
 
当時流行っていた『キャプテン翼』と3歳上の兄の影響で、小学校3年生からサッカーを始めました。兄がGKをしていた関係で、少年団に入る前から公園で一緒にサッカーをしていました。「シュートは正面で取るように」などと、キーパーの基礎を教えてもらいましたね。当時にしてはレベルの高いことを教えてもらっていたので、今でも感謝しています。
 
――サッカーを始めた当初から、キーパーだったのですか?
 
最初はいろいろなポジションをやっていたのですが、小学校4年生の時にGKだった選手が練習試合を休んだことがきっかけで本格的にGKを始めました。当時のコーチがGK出身だったので、キャッチの仕方や砂場でセービングを教えてもらったのを覚えています。また、静岡は高校サッカーが盛んな地域だったので、テレビなどで観た格好良いプレーを真似していました。特に元・清水エスパルスの眞田雅則さんのプレーは衝撃でしたね。帽子を被って、チームメイトに指示を飛ばす姿や、積極的に前へ飛び出してシュートを防ぐ姿に憧れていました。
 

■練習途中には、水を飲めなかった

――川口選手の年代は水分補給も認められていない厳しい時代だったとお聞きします。
 
練習途中に水分を摂ることを認めてもらえず、終わったら水道に走っていったのを覚えています。あの瞬間が何よりの喜びでしたね(笑)。また、中学や高校に入ってすぐはボール拾いをしていたのですが、遠くにボールが飛んだ時は嬉しかったです。「ボールを拾ってきます!」と言って、水道で水を飲んでいました。それができない2、3年生になってからは、キーパーだけピッチ脇にタオルを置いて良かったので、練習前に水をたっぷり含ませて、隠れながら絞って飲んでいました(笑)。
 
ポカリスエットも飲んでましたよ。ぼくが小さいころは今ほど有名ではなかったんです。ある日、水のつもりで水筒を飲んだら甘くておいしくて、「なんだ!このおいしい水は」と驚愕した覚えがあります。あの時の僕らにとっては貴重なモノで、同級生が遠足に持ってきていたり、試合の時にチームメイトに分けてもらっていたのを覚えています。
 
――当時はどのくらいサッカーに打ち込んでいたのでしょうか
 
今の子どもは週に数回の練習だと思うのですが、ぼくらの時代は毎日、2時間近くサッカーをしていました。特に小学生のころに所属していたチームは練習熱心でしたね。よく覚えているのは、入部した初日に行った3年生と4年生に分かれての紅白戦。監督から、1失点するごとにグラウンドを5周走るように言われたのですが、0-8で負けてしまって……(笑) 始めてすぐなのにグラウンドを40周も走って、「サッカーってこんなに走るスポーツなのか……」と驚きました。となりで練習していた陸上部よりも走っていましたからね(笑)。ただ、最初がそうした厳しい練習だったから、以降も頑張れたと思います。
 
――そうした経験が今に繋がっている
 
すごく厳しいコーチでしたが、歯を食いしばったのが良かったと思います。小学校3、4年生の時にハードな練習を続けたことで成長できたし、小学校5年生の時に富士市の選抜に入れたことがきっかけでサッカーが強かった東海大一中学からも声をかけてもらいました。また、頑張れば褒められていたのも嬉しかったし、自信にも繋ったと思います。
 
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■両親の「辞めてもいいよ」に責任を感じた

――中学に入ってからはどんな毎日を過ごしていましたか?
 
中学では、櫻井先生という熱心な恩師に出会い、よく居残り練習に付き合ってもらったのを覚えています。また、練習だけでなく、自宅から毎日1時間かけて学校まで通っていたのもハードでした。それでも、やって来られたのは父と母のサポートがあったから。特に母は朝ごはんだけでなく、お昼のお弁当も作ってくれていました。中学3年間は親に苦労をかけたし、家族のサポートがあったから、やってこられたと思います。
 
印象に残っているのは中学2年生のこと。サッカーを辞めたいと両親に言ったのですが、「辞めてもいいよ」とだけ返されたのを覚えています。その言い方に悲壮感や苛立ちが漂うこともなく自然だったことで、責任を感じましたね。用具代だけでなく、中学に通うことにもお金がかかっていたし、辞めるとこれまで親がしてくれたことが台無しになると気付きました。「なんで辞めるの?」って言われていたら、辞めていたかもしれません。どうしても親馬鹿になってしまい、自分の思い通りにしたい気持ちになるのも分かるのですが、親が子どもを責めず、意思を尊重することも大事かなと思います。
 
――練習は辛くなかったですか?
 
しょっちゅう、休みたいなと思っていましたよ。小学生のころは「監督が来ているかな?来ないと良いな」と思いながら、校庭を眺めていました(笑)。でも、練習を重ねることで、小学校時代に1つ上の学年の試合に出してもらったり、上手くなっている実感があったから続けられたと思います。
 
昔は試合があまり好きではなかったのです。今は逆ですけどね(笑)。
サッカーを始めた当初はちょっと寝坊しただけでも、体調が悪いと休んだりしていたんですが、
小学校4年生の時に、3回ほど続けて休んだら監督に怒られ、「練習に来るな」と一喝されました。
それで、グラウンドの隅から皆が練習している姿を見ていたのですが、その時に「やっぱり僕はサッカーが好きなんだ。練習ができないことがこんなに辛いんだ」という事に気づいて、そこから練習も試合も休まなくなりました。
 
プロになってからも、ちょっと痛いくらいでは休みませんし、小さいころに厳しさを身につけてもらったことが、40歳まで現役を続けられる力になっていると思います。もちろん遊んで学ぶことも大事ですが、厳しさから学ぶこともあるのではとぼくは思います。
 
後編:キーパーグローブが乾かないように工夫してくれた母親に感謝>>
 
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川口能活
1975年8月15日生まれ。静岡県富士市出身の元日本代表GK。国際Aマッチ出場数は116、これは日本代表ゴールキーパー歴代1位の記録。横浜F・マリノス、ポーツマスFC(イングランド)、ノアシュラン、ジュビロ磐田を経て、2014年にFC岐阜へ移籍。37試合に出場。
 
 
【汗の分だけ、成長できる】
高原直泰編
【前編】「努力がつらいならキミは成長できない」
【後編】点を取り続ける秘訣は「気にしないこと」
 
山口素弘編
【前編】自分たちで考えて練習した小学生時代
【後編】負けず嫌いがサッカー選手のベースになる
 

 
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