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保護者と指導者 より良い関係作りを目指して

チーム内でいじめ発生!?そのとき保護者は?指導者は?

公開:2013年10月15日 更新:2013年11月26日

キーワード:コミュニケーション指導

「保護者と指導者」をテーマに、両者のより良い付き合い方について考える連載。今回は、チーム内で発生したいじめとその対処について、あるエピソードをもとに考えます。
 
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■もしかしたらいじめ? 大人はどう対処すべき?

「いじめというほど大げさなものではなかったかもしれませんが」
 あるお母さんにお話を聞いたときのことです。
 
 小学生のとき、サッカーをやっていた娘が、同性のチームメイトとのあいだで、少しギクシャクした関係になったことがあったそうです。簡単にいえば“仲間はずれ”。一般的に女の子は男の子に比べて精神の発達が早いとされています。3人いればグループを作る年頃。サッカーチームでは、うまい、下手、小さいころからいた、途中から入ったなど、様々な要素が「違い」になり、そこにちょっとした行き違いが重なり、仲間はずれが生まれることがあります。
 
「そこまで大きなことは起きませんでしたが、女の子はわからないようにやるのが上手で・・・。ターゲットが別の子に移ったときに、その子のお母さんの知ることとなって、チームで問題になったんです」
 
 娘と同時期に入った、あまりボールを触れたことのない女の子。二人が仲間はずれになったのは、技術的にできないことが多かったことも原因のひとつだったようです。大人が気づかないうちにくすぶりはじめる火種。そのとき指導者は、家族は、周りの大人たちは何ができるでしょう。
 
 多くの環境では、サッカーチームと地域の関係は強く、チームでの問題はそのまま学校や地域コミュニティでの付き合いにも直結します。
 
「そんなことがあったなんて知らなかった」
 
 女の子の所属するチームのコーチは、子どもたちのギクシャクした様子を知りませんでした。
 
「すぐに対処します」
 
 そのコーチは、保護者からの訴えがあってすぐ、チーム全員の前で仲間はずれについて注意を与えました。
 
 こういう場合の対処法は、チームの雰囲気や状況によって何が「最善」なのかを言い切るのが難しいのが実情です。このときのコーチの判断や指導が適正だったかどうかはわかりません。また、同じことをしたからといってすべて同じ状態になるとも言い切れません。ただ、事実として、この注意の後、いじめを訴えた子はチームに居づらくなりサッカーを辞め、話を聞かせてくれたお母さんの娘さんもサッカーにあまりいい印象を持たないまま、中学校では別の部活を選んだそうです。
 
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■子どものことを第一に考える

 指導者の体罰や暴力。暴言が問題になっていますが、それと同じくらい根深くて難しいのが、子どもたち同士、チーム内でのいじめや上下関係による体罰です。「小さい子どもたちはそれほど」と思っていても、中学や高校で顕著になる「先輩、後輩の世界」とは別の、小学生には小学生なりの「子どもの世界の上下関係」があります。
 
 子どもの世界に大人がどう介入していくか。その対処法によっては、子どもたちの関係性をさらに悪化させ、深刻ないじめに発展する可能性もあります。ちょっとした問題も見逃さない、良い指導者のつもりが、直接の体罰と同じくらい子どもたちを苦しめる可能性もあるのです。
 
 今回紹介した例は、保護者とコーチ、それぞれがそれぞれの立場で別々に物事を動かしても、なかなかうまくいかないことを示すエピソードでしょう。保護者も指導者も子どもたちには子どもたちの世界があることを理解した上で、お互いにコミュニケーションをとりながら対処する。そうした空気を普段から作っておくことが大切です。
 
「子どもたちにはそれぞれ保護者の方がいて、それぞれの家なりの事情があります。プライバシーに干渉する必要はありませんが、子どもたちの様子や態度を通じてさまざまなことを把握しておく必要はありますし、気になったことがあればこちらも聞きますし、お父さんお母さんにも聞いて欲しいですね」
 
 今回の連載に協力してくれた、保護者とのコミュニケーションを大切にしているという、ある若い指導者は「ちょっとしたことをすぐに聞ける」環境や時間を作るように意識しているといいます。大切なことは子どもたちに「楽しい」と思って始めたサッカーを楽しいまま続けさせてあげること。保護者と指導者がともにそのための環境を作ることがベストなのは言うまでもありません。
 
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■それでも考えたい「チームを移る」選択肢

 再三触れていますが、学校の転校に比べればハードルが低い「チームを変える」という選択肢もあります。サッカー以外のことで煩わされたり、子どもが悩んでいるならそういう決断をするのもひとつの選択肢でしょう。しかし、地域によってはそもそも通えるチーム自体が少ない、移籍後も前チームとの関わりが続く、という問題もあります。兄弟がいる場合は、「どちらかが移りたくない」場合もあるかもしれません。
 
 そうした問題や苦労があったとしても、スポーツ心理学やメンタルトレーニング、そのほかの多くの専門家はチームを移ることを推奨しています。
 チームの問題は、指導者や他の子どもの保護者、チームの歴史や成り立ち、地域性など自分ではコントロールできない問題が多すぎます。子どもたちがサッカーをするのに厳しい状況が続くなら、スパっとチームを変えて心機一転させてあげるのも親がしてあげられるサポートです。
 
 最初にお話した中学生の娘さんを持つお母さんのエピソードですが、この女の子には弟がいます。お母さんはお姉ちゃんのときの経験をもとに、弟とチームメイト、コーチとの関係には人一倍気を使うようになったと言います。弟くんはチームでも技術レベルの高い方ですから、それを理由にいじめられることはありません。しかしそれはそれで聞きたくない外野の声も耳にすることもあるようです。
 
「結局、人間と人間ですからある程度までは我慢しなければいけないのかもしれませんね」
 
 お姉ちゃんの体験は微妙に当事者とはいえない立場ながらも、親としては苦い経験。すべきことができたのかと自問していたというお話を聞かせてくれたあと、お母さんは諦めたように「ある程度は仕方ない」と言いました。
 
 表立って問題になるかどうかは別として、多かれ少なかれどこのチームでも子ども同士、親同士、親と指導者、様々な組み合わせで人間関係の問題は起きているのかもしれません。そこで生じる溝や行き違いを最低限に留め、子どもたちがサッカーに専念できる環境を作るためには、何か問題が起きてからの対処では遅すぎます。普段からの関係性、コミュニケーションが、いざというときのライフラインになるのではないでしょうか。
 
 
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大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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取材・文/大塚一樹 写真/田川秀之(JA杯全農チビリンピック2013全国決勝大会より)

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