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無名チームから國學院久我山へ―。文武両道を追い求めたとある指導者がレギュラー獲得のために"親に内緒で"したこと

2017年8月10日

キーワード:アンビスタ勉強國學院久我山文武両道

『文武両道』。育成年代のサッカーを語る上で、よく聞かれる言葉です。東京都荒川区で活動するNPO法人スポーツカントリーアンビスタ(以下、アンビスタ)も『文武両道』を掲げるクラブで、代表の石尾潤さんは国学院久我山高校を卒業後、早稲田大学に入り、大学経営のキャリアを積み2016年にアンビスタを立ち上げました。
 
一般受験で久我山高校に入学し、部員が150人いる中で、底辺からスタートした石尾さん。圧倒的な努力のもと、高校3年時にレギュラーとして活躍し、全国高校サッカー選手権でベスト8に進出します。
 
輝かしいキャリアをお持ちの石尾さんですが「久我山の3年間は、人生で最も大きな失敗体験をした時期でした」と振り返ります。(取材・文:鈴木智之)
 
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(子どもたちに指導をする石尾さん)
 

■こんなに頑張っても、何も手に入らないんだ......

「あれ以上、1ミリたりとも頑張れないというほど頑張ったのに、目標を達成できないんだ。こんなに頑張っても、何も手に入らないんだという負の経験をした3年間でした」
 
サッカーが大好きで、プロのサッカー選手になることを見ていた中学時代。久我山の試合を見て「自分と同じ、身体が小さくて足の遅い選手が活躍している。ここでサッカーがしたい」と決意を固めます。
 
久我山に入学するためには、偏差値65ほどが必要でしたが「サッカーをする権利を得るためには、勉強を頑張らなくてはいけない」という信念の元に努力を重ね、見事に合格。喜び勇んで入った久我山高校で待っていたのは、厳しい現実でした。
 
「サッカー部には、スポーツ推薦で入学してきた強豪クラブのエース級が何人もいて、一般受験組の自分は底辺からのスタートでした。勉強も久我山は中高一貫教育なので、高校から入ってきた自分たちは内部昇格の生徒に追いつくために、朝7時半から授業を受けていました。授業も0限から7限まであったんですよ」
 

■サッカーも勉強も追いつくのがやっと。 周囲に追いつくために3時間睡眠の日々

サッカーも勉強もレベルが違い、追いつくのがやっと。常に、もっとやらなければ、頑張らなければいけないというプレッシャーに追い立てられます。
 
「とにかく、必死にやらなければマズいという感覚でした。それ以降の人生で、あそこまで追い詰められる事はないだろうというところまで、追い詰められましたね」
 
サッカーも勉強も、周りは自分より遥かに高いレベルにある――。あれだけ大好きで、人生を賭けていたサッカーを「やりたくない」と思った日が、一日だけあったそうです。
 
「高1の夏前でした。当時の自分はサッカーのためだけに生きていました。すべては、プロになるために。極端に言えば、サッカーをしたくないのであれば、明日が来る意味がないというほどに。ですが、あの日だけ、本当に人生で最初で最後だと思うんですが、『明日部活に行きたくない』って思ってしまったんです。すると一気にそれまでため込んでいたマイナスの感情に飲み込まれて、サッカーをしない自分が生きる意味ってなんだろうと悩み、あまりにも追い詰められて、住んでいたマンションの手すりに足をかけようとしたことがありました。そのとき、偶然通りがかった知らないおじさんに『どうした?』と声かけられ、飛び降りはしなかったのですが、そのおじさんがいなければどうなっていたかわかりません。それぐらい、精神的に追い詰められていたんです(笑)」
 
いまでこそ笑って振り返りますが、16歳の石尾少年は厳しすぎる現実に、押しつぶされそうでした。しかし、そこで踏みとどまることが、後の成長につながります。
 
「中学時代のクラブチームの監督、友人、両親......。色々な人の思いを背負って久我山に行ったのに、サッカーも勉強も通用しない。それが周りにバレたくなくて、親にも心配をかけたくなかったので、親が寝る頃に一度寝て、夜中の2時ごろ起きて、5時まで外でサッカーの練習をして、親が起きる頃に家に戻って寝ていたふりをする。そして朝の7時半から授業を受ける。1日3時間ほどしか寝ない生活を、約1年間続けました。そうしないと、サッカーも勉強も追いつけない。不安で、寝ている場合じゃないと思ったんです。高校2年以降も特進クラスに入ったり国立大学の受験対策やらで、結局高校3年間はそんな生活をつづけましたね。今考えると信じられません(笑)」
 
次ページ:無名のクラブから高校サッカー強豪校のレギュラーに

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文:鈴木智之、写真提供:NPO法人スポーツカントリーアンビスタ

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