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「技術だけをいくら教えても、いい選手は育たなかった」早稲田大学ア式蹴球部監督が大切にする、たったひとつのこと

2016年2月 2日

昨年、アマチュアサッカーの最高峰ともいえる関東大学サッカーリーグ1部で19年ぶり26度目の優勝を果たした早稲田大学ア式蹴球部。この26回という数字は、92年間に及ぶ同リーグの歴史の中で最多です。加えてFC東京の徳永悠平選手、横浜Fマリノスの兵藤慎剛選手を始め多数のプロサッカー選手を輩出している実績からも、競技面にフォーカスして“名門”という見方をする人は多いでしょう。
 
ところが、この組織の本当の強みは、担っている役割に対する責任感の強さや“人としての規範になる”という強い意識を、部員1人1人が持ち合わせているという点にあります。筆者がOBや選手に「早稲田の選手は本当に人間性がすばらしいですよね」と伝えると「それしかありませんから」と答えてくれます。つまり、彼ら自身“この組織の中で人として成長できた”という自覚を持っているのです。
 
この“人としての成長”が関東大学リーグを制する力にもなっているのでしょう。では、この組織はいかにして成ったのか、どういった教育方針が部員たちの人間形成に影響を与えたのか。2010年よりチームを指揮し、“人として一人前に”という明確な目標を掲げる古賀聡監督に話を伺いました。(取材・文 竹中玲央奈 写真提供 早稲田大学ア式蹴球部)
 
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■人としての成長がないとプレーヤーとしての成長もない

早稲田大学を卒業後、鹿島アントラーズ、ブランメル仙台(ベガルタ仙台の前身)、サンフレッチェ広島と9年間のプロ生活を経て、引退後すぐに草津東高校のコーチとして指導者のキャリアをスタートさせた古賀監督。その後、鹿島アントラーズの下部組織で8年間コーチや監督を務め、母校である早稲田大学ア式蹴球部の監督に就任。2016年、7年目のシーズンを迎えます。
 
指導歴17年。Jクラブの下部組織や高校、大学のサッカー部を指導するなかで、古賀監督は選手の成長をサポートするひとつの大きな点に気づいたといいます。
 
「指導した17年の実感として、人としての成長がないとプレーヤーとしてもチームとしても成長しにくいと強く感じました。プレーヤーとして成長するためには、戦術や技術などいろいろな要素があるのですが、第一に“それを吸収しよう”という姿勢や、真摯に学んでいこうとする人間性でなければ、プレーヤーとしても伸びていかない。これはすごく大きく感じています」
 
古賀監督自身、選手生活の終盤になって、ようやく自分自身にこの点が不足していることに気づき、その後のプレーに変化が起きたそうです。もっと早い段階で気づけていれば、選手としてさらに成長できたのではないか……。その経験から、選手を指導するうえでは技術指導よりも人間性を育むことに注力したと語ります。滋賀の草津で高校生を指導しながら、技術以外の指導の重要性を感じたと言います。
 
「実際にサッカーの技術指導だけでは選手は伸びませんでした。そこで、学業との両立をうながしたり、社会一般に広く目を向けてもらうための取り組みを行いました。学校という狭い社会に身を置く子どもたちの目は、どうしても狭い世界に留まりがちです。サッカーの技術や戦術には興味があるけど、社会とかよくわからないし、勉強はいいや。そうではなくて、広く社会一般で何が起きていてなにが問題なのかということまで広げて話をしたり考えさせたりということを、鹿島アントラーズの下部組織でもトライしてみました」

 

■ユースの教育で時事問題に取り組む

一般的に、サッカーの指導がメインとなりがちなユースチームにおいて、古賀監督は上記の発言通り、サッカー以外の側面からのアプローチをしながら人間形成をしていこうと考えました。
 
「時事問題のテストをやったり、サッカーとは関係のない、感情を揺さぶる感受性に訴えかけるような新聞記事や書籍の一文を掲示板に張り出して、選手たちにいろいろと考えてもらえるように取り組みました。そして、“自立”をテーマに掲げました。現在、大学生に実践しているように、選手たちに権限や責任を持たせて、それぞれの役割に対して、自分で考え全うしていくように促しました」
 
古賀監督は、選手たちに責任と権限を与えることで見えたものがあると続けます。
 
「責任や与えられた役割をしっかりと踏まえて、理解して、自分から積極的に挑んでいった子どもたちはサッカー選手としても伸びてました。受け身で捉えてしまい、『なんで指導者がやってくれないんだ』と思ったり、周りから促されないとできない、つまり責任や役割を全うすることの意味を理解できなかった子どもたちは、サッカー選手としてもなかなか成長させることができませんでした。そのどちらかに分かれてしまったことが、私の大いなる反省ですね」
 
古賀監督が一から十までを教えつけるのではなく、大枠の方針を持った中で選手たちに権限を与えるなどして”任せる”ことで成長し、プロへの道に進んだ選手がいます。それが、ファジアーノ岡山に所属する島田譲選手です。「島田は、アントラーズユースで3年間、大学では彼が2年生になってからの3年間を指導しました。アントラーズユースでは、彼がキャプテンをやってくれたのですが、自立し、リーダーとして自分で考えて発信してチームを動かしていくという挑戦をして成長していった選手の1人かなと思います」
 
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取材・文 竹中玲央奈

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