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考える力

あなたは子どもに説明できる? 体育とスポーツの違い

2014年9月18日

キーワード:スポーツスポーツマンシップ体育写真姿勢運動

明治期、初代文部大臣を務めた森有礼は、「国民教育で重要なことは、知育・徳育・体育の3つである」とし、体育を義務教育に取り入れました。森は元外交官で、スポーツの母国、英国駐在でしたから、「スポーツと体育の違い」を理解していました。その上で、スポーツではなく『体育』を選んだのには理由がありました。当時、普仏戦争でプロシアがフランスに完勝し、ドイツ帝国が成立したことでドイツの体育を取り入れたのです。
 
ナポレオン戦争以降、大陸最強だという自負を持っていたフランスのプライドは、普仏戦争の完敗で粉々になりました。体協会長だったクーベルタン男爵は、スポーツを通じてフランスの若者を鍛える必要を感じ、『オリンピズム』の復活を唱え、近代オリンピックの開催に動きました。
 
勝ったプロシアでは、すでに『体育』が学校の必修科目で、軍事教練を兼ねており、軍隊から講師が派遣されていました。森文部大臣は、明治の日本にとって「兵士の養成」こそが急務であり、日本と同じ頃に帝国を樹立し、急激に勢力を伸ばしていたドイツを模範としたのです。
 
たしかに体育は兵士の教練には効果を発揮します。兵士は士官の命令を忠実に実行する者であり、自分勝手な判断は許されません(まさに『体育会系』です)。軍事教練の名残が、『敵』という言葉にあります(スポーツには『相手』はいますが、『敵』はいません)。
 
一方、スポーツはミドルマネジメント、つまり軍隊では将校を育成するためのパブリック・スクールとして完成したものです。将校は、個人として「考え、判断する能力」を必要とするのです。

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取材・文 広瀬一郎 写真 田川秀之
 

<<ぜったい子どもに伝えたくなる! スポーツマンシップの歴史

■スポーツマンシップとは?

東京オリンピックの前年(1963年)に出版された『コーチのためのスポーツモラル』(金子藤吉著、新体育学講座第14巻/逍遥書院)という本に、「スポーツマンシップとは何か」が、解説されています。要約して紹介します。
 
◆スポーツの主な価値はスポーツの精神すなわちスポーツマンシップにある。もしも学校スポーツの中にこの精神が存在しないならば、そこにはなんら価値も意義も認められない。
 
◆スポーツマンシップは、一言で言えば「尊重(respect)する」ことである。試合の相手を尊重し、審判を尊重し、試合の規則を尊重することだ。このことは、自分の行うゲームそのものを尊重することになる。
 
◆重要なのは、公正(フェアプレー)の精神である。これから「正義」、「規則に忠実」、「審判に従順」、「規律を守る」などが導かれる。そして自分が守るものとして、「最善を尽くし」、「勝って誇らず」、「負けて悔いない態度」、「明朗」、「責任」、「謙虚」、「勇気」、「忍耐」などが挙げられる。さらに競技者どうしがお互いに示すべきなのが、「同情」、「親切」、「協同」、「友情」、「敬愛」などであり、これらが統合されて良き人格(Good sport)になる。
 
◆スポーツマンシップは、他の「倫理」や「道徳」より一層現実的なものであり、スポーツマンは、これを修練して身に付ける機会に恵まれていることを見逃してはならない。
 
 
気をつけていただきたいのは、スポーツマンシップを教えるのは、「扱いやすい態度」を身につけた「良い子」を育てることではない、ということです。これが「体育」との最大の差です。スポーツマンシップというのは「社会が求める人格的な問題」であり、「社会的な能力の源」なのです。
 スポーツを通じてスポーツマンになることは、単に運動能力だけではなく、人格的能力に優れることを意味します。スポーツマンシップで問題にするのは、「型としての正しい振る舞い」ではなく、「正しい振る舞い」を導き出そうという「姿勢」であり、「覚悟」です。フェアなプレーそのものではなく、それを導きだす覚悟がスポーツマンシップなのです。「スポーツマンシップに則る」ということは、原則を理解し、尊重する覚悟がある)という意味なのです。
 
したがってスポーツマンシップとは、単にルールに従い、「期待される行儀の良さ」といったことではなく、一体どういう人間になるか、という、より本質的な問題につながります。そして、「考えること」が、言わば習慣になるように身に付ける機会がスポーツなのです。
 
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取材・文 広瀬一郎 写真 田川秀之

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