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全員で戦う!U-17日本代表「96ジャパン」の激闘を支えた教え

2013年10月29日

キーワード:日本代表育成

現在UAEで行われている17歳以下のW杯。我らがU-17日本代表は昨日惜しくも敗れてしまいましたが、圧倒的なボール保持率で試合を支配する華麗なパスサッカーは、大会に大きなインパクトを残しました。このチームにはいくつかのこれまでにない特徴がありました。戦術的な特徴や、W杯での戦いぶりは現地からの情報に譲りますが「フル代表の試合より面白い!」と多くの人を魅了した「96ジャパン」のチームコンセプトを紹介しましょう。
 
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■96年以降に生まれたすべてのサッカー選手の代表

 あまりご存じではない読者の方もいらっしゃるかもしれません。17歳以下の選手たちで構成されるU-17日本代表はジュニア年代にとってちょうどお兄さんのような存在。U-17W杯は一番身近な世界大会です。その世界大会で戦ったのが吉武博文監督に導かれた「96ジャパン」です。
 
 まずご紹介したいのが、この「96ジャパン」という呼び名です。通常、日本代表の愛称にはフル代表のザックジャパンのように監督の名前が付くのが通例です。これも本人がそう名乗ったわけでも協会がそう決めたわけでもないのですが、日本ではなぜか監督+ジャパンが一般的でした。「主役はあくまでも選手たちだ」吉武監督はこれに異を唱えて「96年以降に生まれたすべての選手たちの日本代表」という意味で自らのチームを「96ジャパン」と呼びます。これは94年生まれ以降の選手たちを率いた「94ジャパン」の頃から吉武監督が発信してきたことです。
 
「この年代はうまい選手を頭から順番に11人選んでいるわけではない」
 
 代表に選ばれなかった選手も含めた96年以降に生まれた全員で戦っている。すべての選手に可能性がある。「96(年代)+ジャパン」というチームの呼称には吉武監督のそんなメッセージが込められているのです。
 

■世界大会でも21人全員が均等に出場!

 全員で戦う。これはU-17W杯本戦でも貫かれています。96ジャパン大きな特徴のひとつにローテーション制があります。グループリーグ2試合目のベネズエラ戦では、初戦のロシア戦から8人のメンバーを入れ替え、3戦目となったチュニジア戦でも7人を入れ替えています。チャンピオンズリーグを戦うヨーロッパのビッククラブでもお目にかかれないこのローテーション制は「21名のメンバー全員で戦う」という強い意志の表れでもあります。
 
 全員を出場させる。しかも出場させるための交代ではなく、より良いサッカーをするための交代で。これを選抜チームとはいえ、世界大会で実践してしまうあたりが「これまでになかったチーム」と言われる所以です。
 
 戦術面がクローズアップされると、なんだか選手たちが将棋の駒に見えてこなくもないのですが、大分の中学校の数学教師だった吉武監督が最も重視しているのが人間性です。スペインサッカーを彷彿とさせるシステムを説明するのにも「フリーマン」「ワイドトップ」「フロントボランチ」などの独特の言葉を用いて説明し、選手たちには「見失っている日本人の良さでサッカーをしよう」と呼びかけ続けます。
 
 U-17W杯ももちろん大切ですが、選手たちの本番は5年後、10年後だと言い切り、その場しのぎの指導は絶対にしません。
 
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■技術は体力、戦術、精神力の上にそっと乗せる

 以前取材に伺ったスポーツ医学研究会で講演された吉武監督はこんなことを話していました。
「体力、戦術、精神力の上にそっと乗せるのが技術。そういう意味では技術はすごく大切。かといって、それだけでは意味をなしません。この年代は教えてもできないことは沢山ある。けれど、教えなくていいことはひとつもない」
 
教えなくてもいいことはひとつもない。その教えはサッカーだけに留まりません。
 
「最後の最後は人間性がモノを言うのだと思います。だから、海外遠征の時にも選手たちにはサッカーだけじゃなくて、色々なものを見せてあげたいと思っています。美しいものを美しいと感じる感性。それこそが人間性につながると思うからです」
 
 昨日の決勝トーナメント1回戦、96ジャパンの選手たちは平均身長184cm、胸板の厚いスウェーデンの選手たちを相手に自分たちの持ち味を出そうと最後までチャレンジし続けました。
 
 後半40分を過ぎた頃、一度試合が途切れ、給水ができる間ができました。日本のベンチに向かう満身創痍の選手たち。ベンチからは今日は控えに回った選手たちが、両手にボトルケースを持って一斉に飛び出します。その姿はピッチとベンチを隔てるものが何もない、美しい光景でした。96ジャパンでは、ベンチに回った選手たちも明確に役割を持って試合に臨んでいます。ピッチに立っていなくても一緒に戦っている。吉武監督が掲げた21人メンバー全員で戦うサッカーは、今大会の選手出場時間を見れば一目瞭然ですが、それ以上にこの最後のシーン、選手たちの自然な行動に色濃く出ていたように思います。
 
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■やれなかったことを胸に 5年後、10年後の成果

「もっと試合をやらせてあげたかった」
 敗戦後、吉武監督は自らが「96ジャパンの展覧会」と呼んだ大会を振り返りました。
 
 講演会で聞いた吉武監督の言葉でもうひとつ、印象に残っている言葉があります。
「子どもたちに安易に『やれば必ずできる』とは言いたくない。やったけれどできないこともかなりある。それを胸に、その悲しみを越えて、それでもやって止まない人になってほしい」
 
 結果としては前回大会「94ジャパン」が残したベスト8には届きませんでした。「パスは回せたけど試合には負けた」。結果だけを見れば、体格で勝るチームに敗れた事実だけが残るのかもしれません。それでも吉武監督は次の課題を口にします。
 
「前半早い時間の失点は多くあることなんですが、点が取れなくても失点しないということを学ばないといけないと思います」
 
 97年生まれの6人の選手は7年後の東京五輪世代。この日の敗戦の課題への答えは、5年後、10年後の彼らのプレーが教えてくれるはずです。
 
【この記事を読んだ人にはこちらもオススメ!】
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大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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文/大塚一樹

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