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こころ

本当の強さとは?小柄なテクニシャンを生み続けるアルゼンチンサッカーから学ぶ

2012年10月26日

キーワード:育成

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 身体が小さいと不利なのか? 今回は世界のサッカー界を席巻するアルゼンチンに学んでみようと思います。マラドーナ、オルテガ、リケルメ、サヴィオラ、アイマール、テベスにアグエロ、そしてメッシと、すらすら出てくる“マラドーナ2世”たち。サッカーをあまり見たことない人でも、公称169㎝、バルセロナの10番、リオネル・メッシのことは知っていますよね? アルゼンチンはマラドーナの活躍した1980年代から続々と小さなテクニシャンを生み出し続けています。
 
 

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■身体が大きい方が強い? それって本当?

 少し古い話になりますが、2005年に静岡で行われたSBSカップ国際ユースサッカーという大会にU-18アルゼンチン代表が招待されたことがありました。迎え撃ったのは若き日の内田篤人(シャルケ)や槙野智章(浦和レッズ)、柏木陽介(浦和レッズ)ハーフナー・マイク(フィテッセ)らのU-18日本代表。後にU-20ワールドカップで“調子乗り世代”といわれる世代の代表選手たちでした。
 
 当時の日本はこれまでの「テクニック重視、育成年代の代表チームは中盤やDFのサイズ不足」という現状を打破すべく、選手の身長にも気を遣った選手選考が行われていると言われていました。アルゼンチンも日本と同じく身長はそれほど大きくない国。ある統計によると日本の成人男性の平均身長は170.7㎝、アルゼンチンが173.5㎝だそうです。当時のU-18日本代表の平均身長は178㎝、対するアルゼンチン代表は170.09㎝でした。それでもこの試合でボール際の激しさ、フィジカルコンタクトの強さを見せたのは体格に劣るはずのアルゼンチン代表の方だったのです。登録は170㎝、見た目は160㎝あるかないかという相手チームのMFに翻弄され、横からチャージを受けてボールを奪われる日本の選手たち。メッシが抜けてタレント不足と言われていたアルゼンチンでしたが、結局2-1で勝利、格の違いを見せつけました。
 
 

■「パワーじゃないよ、強さは頭だよ」モネールさんの言葉

 試合後、選手の傍らに見慣れたスキンヘッドの人を見かけました。横浜フリューゲルス、横浜FCでDFとして活躍し、引退後も日本のテレビ番組で愛嬌のある姿を見せていたモネールさんでした。
 
(日本語が通じるかもしれない)
 そう思い、その試合で見た光景についての不思議をぶつけてみました。
 
「アルゼンチンの選手はすごく小さいですよね?」
「チイサイネー、スゴクチイサイネー」
「アルゼンチンでは選考時にはそういうことを気にしないのですか?」
「大きさ関係ないね。サヴィオラ、アイマール、テベス……みんな小さいよ。テクニック、スピード、強さ、大きくなくていいね」
 
 身長184cm体重82kg、屈強なDFだったモネールさんがそう言うのです。
「強さもありますよね、小さくても全然当たり負けしてなかった」さらに尋ねると「そう。パワーじゃないよ。強さは頭だよ。それがアルゼンチンのやり方。日本の選手、でかいだけ、速いだけね。アルゼンチンは違うでしょ」と、まくし立てるモネールさん。
 
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■身長は絶対的な基準にはなり得ないはず

 その後、このU-18日本代表の選手たちの多くが世界と戦うなかで、本当の意味での“強さ”を獲得し、自らも世界の舞台で戦える選手たちになっていきました。日本サッカー協会もいまは、一時周囲から指摘されたような体格コンプレックスから来る身長重視の選考という考えはありません。
 
 先日イランで行われたAFC U-16選手権で準優勝を果たしたU-16日本代表(96ジャパン)も160㎝台の選手を多く抱える小兵のチームでした。これは96ジャパンを率いる吉武監督が身体の大小だけで選考をしない、サイズよりも大切にしていることがある証拠でもあります。日本のDFが、頭ひとつ上から叩きつけるようなヘディングを決められたり、苦し紛れのハイボールに対応できず失点してしまうシーンを見ると「もう少し身長があれば」という声が聞こえてくるのもまた事実です。しかし、チームが何を大切にしているか、それは平均身長という数字や、物理的なサイズだけでは計りきれないものがあるのではないでしょうか。
 
 背が低いと不利といわれるヘディングでも、たとえば岡崎慎司選手のように横からのクロスにピンポイントで合せ、ゴールに身体ごと飛び込んでいくダイビングヘッドを武器に得点を重ねている選手がいます。メッシのようにしなやかなボディコントロールと一瞬のスピードで大男たちの間をすり抜けていく選手もいます。身長172㎝のCB、ファビオ・カンナヴァーロのように的確な読みとインターセプトの技術でバロンドールを獲得した選手もいます。
 
 それでも身長が低いよりは高い方が良い。そう思う人もいるでしょう。身長が伸びなくて悩んでいる選手もきっといるはずです。ただ、間違えてはいけないのは、何のために身長を伸ばしたいと思っているのか? ということです。強さがほしいなら大きさだけでない、本当の強さを手に入れる努力をするほうが大切ではないでしょうか。多くの選手が取り入れている体幹トレーニングで身体の芯から出てくる強さを身につけることができるかもしれません。伸びない身長に歯ぎしりするよりも相手をかわす、相手を翻弄する技を身につけた方がずっとこれからの試合に役立ちます。身体が小さいことを言い訳にせず、その気になって探してみると、お手本は世界中にいるはずです。
 
 
大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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文/大塚一樹 写真/サカイク編集部(チビリンピック2012より)

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