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インタビュー

サッカーで後ろ向きな気持ちになった時こそ、前向きな気持ちに切り替えるのが大事――兵藤慎剛(横浜Fマリノス)

公開:2013年5月 8日 更新:2023年6月30日

キーワード:横浜F・マリノス

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昨日に引き続き、横浜Fマリノスの兵藤慎剛選手のインタビューをお送りします。高校時代に所属していた国見高校での選手時代や印象に残っている指導者からかけてもらった一言、またご家族との関わりやサッカーをしている子どもたちへのアドバイスなど、たくさんのお話を聞くことができました。
 
 
<<【前編】体が小さくて体格で負ける分、技術でカバーしようと考えてサッカーをしていた
 
 

■自分に足りないものを補いつつ、誰にも負けたくないハングリー精神を常に持っていた

――兵藤選手にとって一番大きな挫折は?
 
「中学時代は部員が少ないこともあって、チャンスをもらって1年生から試合に出場することができました。そのように、高校に入るまでは、割と早いタイミングで試合に出場することができていたんです。でも、国見高校入学後は1年間公式戦には出場できませんでした。『1年生で出てやる』という気持ちで入ったけれど、やはりそう簡単なことではなかったですね」
 
――試合に出られない現実と自分の気持ちはどのように折り合いをつけていたんですか?
 
「モヤモヤした気持ちもありましたが、客観的に考えて、自分よりも、当時、試合に出ていた3年生の方が、実力があるのは分かっていました。ですから、Bチームで自分に足りないものを補いつつ、『負けたくない』というハングリー精神で試合に臨んでいました。結局、公式戦出場という壁は1年生で乗り越えることはできませんでしたが、3年生が卒業して新チームになったときは、『絶対にポジションを取ってやる』という気持ちはさらに強くなりました。2年生の春先に(レギュラー)ポジションを取って、試合に出場するようになってからは、少しずつ自信を持ってプレーできるようになりましたね」
 
――自分自身との戦いでもあったと思いますが、当時、常に自分を刺激した存在はいましたか?
 
「まず“誰にも負けたくない”という気持ちが一番最初にあるのですが、なかでも同学年の平山相太選手と中村北斗選手(ともにFC東京)の二人は特別な存在だったかもしれません。二人とも1年生で高校選手権に出場していましたからね。とても悔しかったですし、高校時代に彼ら二人から受けた刺激はすごく強かったですね」
 
――監督やスタッフなど、指導者からかけられた言葉で印象に残っているのは、どんな言葉でしょうか?
 
「大学時代に監督をされていた大榎克己(現清水エスパルスユース監督)さんにかけられた『サッカーは1日だけではうまくならない。だからこそ、常に同じ気持ち、同じ姿勢で毎日の練習に臨め。それが一番上達する近道だ』という言葉ですね。少し後ろ向きになりかけたときこそ前向きな気持ちと姿勢でいることがいかに重要であるかということを、痛感させられました。そういうところで気持ちが落ちて、練習に身が入らない選手は、結局最終的に上まで残っていけない。逆に言えば、最後まで上に残っている選手は、そういうことをやれているからこそだと思っています。その言葉は今も胸の中に留めていますし、常に心がけていることでもありますね」
 
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■両親から「こうしなさい」と言われることはなかった

――ご家族は兵藤選手がサッカーを続けるにあたり、どのようにフォローしてくれましたか?
 
「自分が決断したことに対しては応援してくれましたし、そっと後押しをしてくれていました。そういう面に関しては、両親に対して心から感謝しています。実は、中学卒業時、高校では全国大会に出場したいと思い、当初はその数年前に全国制覇も成し遂げていた東福岡(福岡)への進学を考えていたんです。その時も、両親は東福岡の練習場に連れて行ってくれたり、東福岡の受験願書を取り寄せてくれたりしてくれました。また、東海大五の練習も見に行きました。中高一貫の中学だったので、そのまま上がるという選択肢やJクラブのユースチームに行くという選択肢もあったのですが、最後は直近で全国制覇を果たし、平山(相太)選手や中村(北斗)選手も国見に進学するということで、より厳しい環境に自分をおきたいと考え、国見へ行くことを決断しました」
 
――その決断をしたときも、ご両親は兵藤選手の意志を尊重してくれたのですか?
 
「反対はしなかったですね。よく考えてみると、両親からはあまり『こうしなさない』と言われることはなかったように思います。ただ、『勉強しなさい』だけはよく言われましたけれど(笑)。小学校時代も家で勉強をするタイプではなかったので、『最低でも授業中の先生の話はしっかりと聞きなさい』とだけは言われていました。とくに中学時代は、勉強にもかなり力を入れている学校だったのでその言葉をよく聞いた記憶があります」
 
――サッカーと勉強の両立は大変でしたか?
 
「まずは集中して授業を受け、しっかりと先生の話を聞きくことを大切にしました。さらに、部活が休みになるテスト前の期間中は、夜の2、3時くらいまで勉強していました。サッカーだけではなく、勉強でも負けず嫌いな性格が現れ、“少なくともサッカー部のヤツらだけには負けたくない!”と、周りには『勉強してない』と言いながら、実はかなり勉強していました(笑)。高校時代も、みんなが寝静まった頃に勉強を始めていたので、当時は僕が勉強していることを周りは知らなかったと思います。今も『お前は勉強してないって言いながら勉強していたからな~』とよく言われますね(笑)」
 
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■サッカーを楽しむために、どうすればうまくなって、もっと楽しめるかを考える

――勉強も、そしてサッカーでも悩みを抱える少年たちがたくさんいると思いますが、何かアドバイスを送るとしたらどんなことを伝えたいですか?
 
「まず、僕自身、今もそう考えているのですが、サッカーは楽しむということが一番。ですから、“楽しむ”ということを大前提にして、そこから“うまくなるにはどうしたらいいだろう?”と考えてもらいたいですね。1日で劇的にうまくなることはありませんし、うまくなるには、短期間に何かを成し遂げようとするのではなく、やり続けることが大事だと思います」
 
――たとえば、“自分が足が遅いからダメだ”と悩んでいる子どもがいたらどんなアドバイスを送りますか?
 
「人が抱える悩みはいろいろありますが、足が遅いからサッカー選手になれないのかといえば、そうではないと思います。陸上選手ではなく、サッカーは11人でやるもので、それぞれ特性があっての“チーム”ですから。だからこそ、その中で自分にしかできないことを考えればいいと思います。チーム内で自分がどのような役割を担当すれば、自分が一番になれるのかを考えたりすることも大切なこと。逆に足の速い人でも、それだけに頼るのではなく、いろいろなことにトライすることが大事だと思います。サッカーをする上では足が速いほうがいいのかもしれませんが、実は“速さ”と一言でいっても、いろいろな“速さ”がありますからね。足が遅くても、パスがものすごく正確ならそれだけでもチームに欠かせない存在になれますし、団体競技ではそれぞれの役割をしっかりと果たし、なおかつチームの中で“ここだけは絶対に負けない”というストロングポイントを見つけていければいいのかなと思いますね」
 
――サカイクは“自分で考えるサッカー”をテーマにしていますが、どのように養ったらいいと思いますか?
 
「僕は“聞く”という能力は、“話す”以上に大事な能力だと思っているんです。サッカーでも勉強でも、例えば相手が話をしているとき、“この人は何を伝えたいだろう”と自分の中で考えるじゃないですか。僕自身も、昔から監督やコーチが、“こういう練習をするぞ”と話をすると、“この練習にはどんな意図があるんだろう”と考えるタイプだったんですが、しっかりと“聞く”ことで疑問が生まれ、それが次の発想や想像に繋がっていきました。つまり、そこで自然に“考える”能力を身に付けていたと思うんです。なかなか大人の話やアドバイスを素直に聞くことができない年代かもしれませんが、そこは大切にしてもらいたい部分ですね」
 
――子どもが“考える”力を養うために、親御さんはどのようにフォローしたらいいでしょうか?
 
「“こうしなさい!”と決めつけた言い方はしてほしくないですね。あまり道を外れていなければ、過度に干渉するのではなく、やりたいようにやらせるとまではいかなくても、自主性を尊重してほしいと思います。ただ、子どもが道に迷ったときに、子どもから相談してくる環境は作っていてほしいです。まだ、自分自身は子どもを持っていないので何とも言えない部分はありますが、小中学生の頃は何にでもなれるような大きな可能性を秘めた年代だと思いますので、過度に抑えつけすぎず、寛大に見守ってほしいですね。もちろん、人様に迷惑をかけるようなときは厳しさも必要だと思いますが」
 
――最後になりますが、これからの兵藤選手の目標と夢を教えてください。
 
「目標はF・マリノスで優勝して日本代表に選ばれること。そして夢はワールドカップに出場し、活躍すること。夢と目標は自分の中では少し違うという捉え方でいるんですが、目標がかなった時、夢もまた1つ大きくなると思うので、まずは目標に向かって頑張りたいと思います」
 
 
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兵藤 慎剛//
ひょうどう・しんごう
1985年7月29日生。長崎県出身。横浜Fマリノス所属。 長崎県の国見高校では2年時にレギュラーに定着し、全日本ユース選手権制覇、3年時にはインターハイ、高校選手権を制覇し、高校サッカー部の三大タイトル全てを手中に収めた。卒業後は早稲田大学に進学し、2005年にはユニバーシアード日本代表としてイズミル大会に出場、日本代表の金メダルを獲得。横浜Fマリノス加入後は運動量と球際の強さを武器に攻守両面で貢献する。2年連続全試合出場を達成して負傷の少ないことも特徴の一つで、チームに欠かせない存在へと成長した。
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取材・文/石井宏美 写真/田川秀之

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