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インタビュー

『1%でいいから上積みしていく感覚を持っていてほしい』北嶋 秀朗(柏レイソル)

2012年2月 3日

キーワード:Jリーグレイソル

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■胸に響いた布監督の言葉

――そもそも北嶋選手が市船に進学しようと思ったのは?
 
「高校進学を考える時期になった時、市船をはじめ3つのチームから話を頂いていたんですが、中学時代に千葉選抜で一緒にプレーしていた選手の半分が市船に行くということもあり、また、1つ先輩の(砂川)誠さん(現コンサドーレ札幌)がいたこともあり市船に進学することを決めました。誠さんは習志野四中の先輩でもあるのですが、僕にとっては憧れの存在で、いつも『誠さんのようになりたい』と中学時代からよく真似をしていました。本当に大きな影響を受けています。そういう存在が身近にいたことは、自分にとっては本当に大きかったですよね」
 
――当時、市船の監督を務めていた布啓一郎氏(現・日本サッカー協会)とのエピソードは数えきれないくらいあると思いますが。
 
「実は僕が市船に行くことを決めた理由の一つに、布先生のある言葉が関係しているんですよ。『君はダイヤの原石です。それを磨かせる努力を僕にさせてほしい。原石なんていくらでもいて、一生懸命磨いても光らないのは、自分が努力しないから光らない。それでダメになってしまう選手もいっぱいいる。僕は磨く努力をしたいし、だから君も努力してほしい』と。その言葉が僕の胸に響いたし、努力とか頑張る気持を大事にしたいと心から思いましたよね」
 
――しかし、実際に市船に入ってみると……。
 
「地獄のように厳しい練習の日々が待っていました(笑)。あの時はああ言ってくれたのに、やたら突き放すなって(笑)。今でも布先生の姿を見ると、当時のことを思い出し、背筋がピンとなります。まるでメデューサの目をみたように動けなくなります(笑)。でも、本当に感謝してもしきれませんし、もちろん、布先生がすべてというわけではありませんが、受けた影響はやはり最も大きいんじゃないのかなと思います」
 
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■夢と会話し、夢といつも向き合うことができるか

――高校になると、よりプロというものが現実味を帯び、もはや『夢』ではなく『目標』に変化したと思いますが。
 
「絶対にプロになるということは自分の中で決めていたので、常にプロで通用するためにはどんなプレーをしなければいけないのかということを、『これは必要だ。これはいらない』とふるいにかけていましたね。あまり勉強は好きではなかったけれど(笑)、栄養学などを勉強する体育理論の授業はいつも真剣でした。だから、周りが菓子パンを食べていても味付けのない普通のパンにしたり、おにぎりにするとか、飲み物もオレンジジュースにしたりと徹底していましたね。夢を実現するために工夫する力は、昔から備わっていたし、それが今も癖になっているんじゃないかと思います」
 
――北嶋選手のように、幼いころに『考える力』を養うためには、どうしたらいいと思いますか?
 
「夢と会話し、夢といつも向き合うことができるか、かな。たとえばライターになりたいという夢があるのであれば、「そうなるためには?」といつも会話する。そう自分に問いかけながら行動していれば、自然と考えるようになるだろうし、工夫するようにもなる。だから、僕は自分の子どもにも必ず『夢はなに?』と聞くようにしているんですよ。『じゃあ、そのために何をしなきゃいけないの?』って。些細なことだけど、そういうことは誰にでもできると思いますから」
 
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■一気に何かを実現することは難しくても、積み重ねていくことはできる

――三児の父親でもある北嶋選手ですが、親が子どもに考える力を身につけさせるためには?
 
「すごく難しいテーマですよね。『これ!』という答えがあるわけじゃないので。僕は自分の子どもが何かをするたびに正解を言わないようにしています。子どもから答えを求められて、答えを言って、子どもがその通りに行動するということはしたくないと思っているので。いつも、子どもに考えさせるために『じゃあ、お前はどう思ってるの?』と問いかけるようにしています。もちろん、これがいいのか悪いのかはわからないけれど」
 
――ジュニア世代の選手たちにあらためて何か伝えたいことはありますか?
 
「繰り返しになりますが、夢をかなえるために(夢と)向き合ってほしい、語りかけてほしい。そして夢を実現させるために少しずつ、1%ずつでいいから上積みをしていくという感覚を持っていてほしい。一気に何かを実現させることは難しくても、少しずつ積み重ねていくことは誰にでもできることだから。よく『夢は見るものじゃなくて、かなえるもの』と言うけれど、僕は見ることも、もちろんかなえることも大事だと思う。だから、本当に夢を見て、夢と会話して、一歩一歩進んでいってほしいですね」
 
――それは北嶋選手のお子さんにも話しているんですか?
 
「そうですね。小学2年の息子は、将来FCバルセロナの選手になって、その後、レイソルの選手になるのが夢らしいのですが、『じゃあ、バルサに行くためにはどうしたらいいんだ?』というところから聞いていますね」
 
――息子さんが出場している試合はいつもどのような気持ちでご覧になっていますか?
 
「正直自分の試合よりも緊張します(笑)。大事な大会になると余計に。現場では僕よりも奥さんのほうが熱くなっていますが(笑)。僕は試合の後、息子が家に帰ってきてから、その日撮影したビデオを見ながら、いろいろ話したりしますね。その時も、何か聞いてきてもなるべく答えは言わないよう心がけています」
 
――ちなみに、北嶋家の教育方針は?
 
「常に笑いを忘れないことですね。いつも熱い思いを持っている人間に成長してほしくて」
 
――やはり息子さんにはサッカー選手になってほしいと思いますか?
 
「なってくれたら幸せですが、かといって無理してまでなってほしくはないかな。ただ、自分もそうだったように、サッカーを通じていろいろな人と出会い、そしてたくさんのことを学んでくれたら嬉しいですね」
 
――では最後になりますが、J1優勝を成し遂げた昨年を振り返り返りながら、2012年の目標を聞かせてください。
 
「昨年は夢の1つだった、レイソルがJ1で優勝することをかなえることができ素晴らしい1年でした。優勝するまでの道のりは長かったけれど、いろいろなものを乗り越え、そして経験を積み重ねながら優勝できたことはすごく誇りに思っています。今シーズンもレイソルが良い結果を残すことはもちろん、幸せに1年を終えることができれば。それが一番の理想ですね」
 
――1度優勝を味わうと、また優勝したいと欲深くなりますよね。
 
「チームとしてはあの景色を見ているので、やはりみんなが何度も味わいたいと思っているはず。『もう1回』ってね。それが常勝チームになっていくことなのかなと、優勝した瞬間、感じましたね」
 
 
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北嶋 秀朗//
きたじま・ひであき
FW。1978年5月23日生。千葉県習志野市出身。柏レイソル所属。市立船橋高校時代、第73回、第75回全国高等学校サッカー選手権大会で優勝。第75回大会では得点王となり、選手権大会通算16得点を挙げ、当時の通算最多得点数を記録した。1997年に柏レイソルに入団後、2003年に清水エスパルスへ移籍。そして2006年に柏へ復帰後は、精神的支柱としてチームを牽引し、J1昇格、そして昨年のJ1優勝へと導いた。
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取材・文/石井宏美 写真/新井賢一

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