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子どもの疲れやケガを防ぎパフォーマンスを高めるには?

ストレスに負けない7つの休養とは 片野秀樹×谷真一郎対談2

公開:2023年1月13日 更新:2023年1月19日

キーワード:コンディショニングリカバリーヴァンフォーレ甲府休息疲労回復睡眠谷真一郎

サッカーがうまくなるために必要な3つの要素。それが「運動・栄養・休養」です。近年は、運動(トレーニング)だけでなく、栄養や休養の重要性も広く知られるようになってきました。

3要素のうち、運動と栄養の知識については、たくさんの情報がありますが、「休養」に関しては「睡眠が大事」程度しか知らない人も多いのではないでしょうか?

そこで今回は「休養学」の第一人者であり、日本リカバリー協会の代表理事を務める医学博士の片野秀樹さんと、タニラダーでおなじみ「日本で唯一、日本代表キャップを持つフィジカルコーチ」の谷真一郎さんが「休養の重要性」について、対談を行いました。

対談2回目は「休養とはなにか」「日本人とストレス」に迫っていきます。(取材・文 鈴木智之)

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■回復をサポートする7つの休養タイプ

谷:片野先生は「休養学」を研究されていますが、休養をどのように定義されていますか?

片野:休養とは、活動能力が低下したときに出てくる「休みたい」という願望です。アクションや行動ではなく願望なので、その願望があるときは休むべきなんですね。

谷:サッカー選手の場合、連戦が続いて、肉体的、精神的に負荷がかかってくると、休みたいという気持ちが湧いてきます。そうはいっても試合はやってくるので、試合と試合の合間をどのように過ごすかが、休養のとても大切な要素になります。

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片野:おっしゃるとおりで、我々は休養を7つのタイプに分けています。それが「休息タイプ」「運動タイプ」「栄養タイプ」「親交タイプ」「娯楽タイプ」「造形・想像タイプ」「転換タイプ」です。まず休息タイプですが、代表的なものが睡眠です。寝ている間に、酷使した細胞が修復しますし、脳で言えば勉強したものを整理するのも睡眠中なので、睡眠はとても大切です。

谷:安静にして疲労を回復する「パッシブレスト」ですね。

片野:そのとおりです。そして「運動タイプ」は、体の血液を流すことを目的に行う「アクティブレスト」です。サッカーの練習の後にジョギングをするのもアクティブレストで、血液を循環させることで細胞へ酸素を届け、体内の老廃物が回収されます。

谷:試合の翌日に行うトレーニングにも、アクティブレストの要素は入ってきます。

片野:そして「栄養タイプ」。これは摂取する栄養ももちろんですが、食べ過ぎると消化器に負担がかかるので、必要な栄養素を必要な量、食べることが大切になります。ただ食べるのではなく、消化器を休ませることも休息につながります。

谷:食べ過ぎ、飲み過ぎは逆効果。何事も過ぎたるは及ばざるが如しですね。

片野:はい。そして「親交タイプ」ですが、友達や家族と会話することも、休養のひとつです。ペットと触れ合うことや、自然を楽しむことも親交と言えます。「娯楽タイプ」は音楽を聞いたり、ゲームをしたり、漫画を読むなど、趣味に没頭すること。「造形・想像タイプ」は絵を描いたり、DIYで何かを作ったり、料理も含まれます。

谷:僕は精神的・肉体的に疲れてくると、ラダーを作りたくなるんです。ひとつの作業に集中して物を作ることで、リフレッシュできるんですよね。

片野:まさに「造形・想像タイプ」ですね。好きなものを作っているときは、ストレスを忘れるのでリセットされます。想像は妄想でもいいんです。海辺にいる自分を想像したり、空を見て、向こう側はどうなっているんだろうと考えたり。瞑想もいいと思います。最後の「転換タイプ」は、環境を変えること。代表的なのが旅行です。

谷:僕は日々忙しくしていますが、日本各地を講習会などで周ることで、移動は大変だけど、精神的にはリフレッシュできている感覚があります。

片野:素晴らしいことだと思います。旅行や移動ができない人は、家の中を掃除するなど、環境を変えることも休養になります。練習後にグラウンドの掃除をするのも、環境を変えることになるのでリフレッシュになるんです。

谷:先生のお話をうかがって、自分自身、特別に意識しなくても、様々な休養をとっていたことがわかりました。

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片野:私がおすすめしているのが、いくつかの休養をミックスすることです。「栄養タイプ」であれば、粉末のスープを買ってきて、お湯で溶いて飲めば身体を温め栄養は摂取できますが、そうではなくて、野菜を切るところから始めると「造形・想像タイプ」も追加できます。さらに、家族や友人とスープを食べると「親交タイプ」にもなります。ベランダやお庭で食べれば「転換タイプ」にもなります。

谷:そう言われると、普段の生活で休養をとるチャンスはたくさんありますね。僕はこれまで、子どもたちや選手にアプローチするときに、肉体的な疲労に関することが多かったので、これからは精神的な休養にも目を向けていきたいと感じました。

■アジアの中でもストレスに弱いといわれる日本人

片野:日本人にとって休養はすごく大切で、実をいうと日本人は、世界有数のストレスに弱い人種なんです。

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谷:そうなんですか!?

片野:はい。神経伝達に必要な「セロトニントランスポーター」という物質があるのですが、これが長いか短いかで、ストレスに強いか、そうでないかが遺伝的に明らかになっています。「セロトニントランスポーター」は人種間で長さが違っていて、一番長いのがアフリカ系の人、中位が西洋の人。一番短いのがアジア人で、なかでも日本人はかなり短いと言われています。

谷:つまり、日本人はストレス耐性が低いと。

片野:そうなんです。日本人はストレスに弱いので、「みんなと同じことをしよう」というマインドになりやすいのです。電車が遅れると、ストレスを感じますよね?

谷:はい。

片野:見方を変えると、日本の電車が時間通りに来るのも、それが一番ストレスが少ないからなんです。ストレス耐性が低い日本人は、正確なものを好みます。きちっとしていないことがストレスを生むのを、本能的に知っているからです。

谷:なるほど。

片野:社会としても、みんながバラバラなことをすると、それぞれにストレスを抱えてしまうので、全員が同じことをします。それが暗黙のルールになるわけです。つまり日本人は「ストレスが少ない状況を作りましょう。その方がみんな一緒でラクですよね?」という考え方なのです。

谷:すごく面白いですね。日本人って、間違ったトレーニングであっても「これをやりなさい」と言われると、黙って従う傾向にあります。言い換えると、正しいトレーニングをしっかりと広めて「これをみんなでやりましょう」と言うと、真面目に取り組むことのできる人種だと思うんです。片野先生の話を聞いて、よりいっそう、正しい知識や方法論を広めることが大事なんだと痛感しました。<第3回に続く>

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●片野秀樹

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医学博士、日本リカバリー協会代表理事。リカバリーウエアを展開する株式会社ベネクスの創業メンバーであり、主に商品の研究開発責任者として日本および欧米の大学と共同研究。その後、疲労を科学し、テクノロジーによって解決するためのさまざまな手法の実践に勢力的に取り組んでいる。現在は理化学研究所客員研究員として活動に取り組むかたわら、「休養」を学問として体系立てた初の著書「休養学基礎」を出版。また、研究活動の一環として、休養先進国ともいえるドイツと行き来する日々を送っている。

●谷真一郎(ヴァンフォーレ甲府・フィットネスダイレクター)

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筑波大学在学中に日本代表へ招集される。同大学卒業後は柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し、1995年までプレー。 引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻する。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FCに所属し、2010年から2019年までヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務め、現在はフィットネス・ダイレクターとして幅広い年代の指導にあたる。『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』

【連載】片野秀樹×谷真一郎対談
パフォーマンスアップのために考えるべき「休養」の課題 片野秀樹×谷真一郎対談1
ストレスに負けない7つの休養とは 片野秀樹×谷真一郎対談2
子どもの成長に必要な疲労とストレス 片野秀樹×谷真一郎対談3

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