中村憲剛の「KENGOアカデミー」

2020年9月23日

ボールを止めることは"普通の練習"でもうまくなる?中村憲剛みたいにトラップがうまくなるコツ

みなさんは、川崎フロンターレの中村憲剛選手をご存知でしょうか? 
 
一本のパスで局面を打開する日本屈指のゲームメーカーにして、一男二女の父親でもあります。
 
身体が小さく足も遅い、お世辞にもエリートとは呼べなかった憲剛少年は、どのようにして日本トップレベルの選手にまで上り詰めたのでしょうか?
 
この連載では、そんな彼がサカイクを読む保護者のみなさんと、子ども達に向けて、これまでのサッカー人生で培ってきたサッカーがうまくなるヒントをお伝えしていきます。
 
第一回となる今回は、彼自身が選手としての生命線と語る究極の技術について。さらに、その技術を高めるために幼いころから意識してきたことを紹介します。あなたのお子さんも、普段の練習への取り組み方をほんのすこし変えるだけで中村憲剛選手のようになれるかもしれません。
 
 

■「ボールを止めること」はあらゆるプレーにつながる究極の技術

こんにちは、中村憲剛です。いきなりですが、みなさんにこんな質問をしたいと思います。
 
「サッカーで一番大事な“技術”は何だと思いますか?」
 
たぶん、人それぞれで答えは違ってくるんじゃないかと思います。
 
1対1でディフェンスを抜き去る必殺フェイント。
大きい相手に当たり負けしないボディコンタクト。
ゴールネットを揺らすための強烈なシュート力。
 
どれも間違いではありません。でも、僕の答えは違います。僕がサッカーで一番大事な技術だと思っているのは・・・。
 
「ボールを止めること」です。
 
「何だ、そんなことか」と思った人もいるかもしれません。確かに、ボールを止めるというプレーはサッカーの基本中の基本です。でも、子供たちのプレーを見ていると、この基本中の基本を大事にしている人が意外に少ないなと感じます。
 
ボールを止めることは、サッカーの基本中の基本であり、あらゆるプレーにつながる究極の技術だと僕は思っています。例えば、フェイントで相手を抜き去るにしても、まずはボールを良い位置にコントロールできなければ、自分の間合いで仕掛けていくことができません。ボールの止め方によっては、無用なボディコンタクトをしなくてもプレーできる。どんなにシュート力があっても、ボールを止める技術がない選手は、そもそも良い状態でシュートを打てる状況を作れない。
 
算数で足し算や引き算ができなければ、難しい方程式が解けないのと同じようなことです。ボールを止めることにこだわり始めたのは、僕自身の経験と関係しています。今のプレースタイルからは想像できないかもしれないけど、小学生のときの僕はドリブラーでした。全国大会にも出場して、地元ではそれなりに有名な選手だったんです。
 
だけど、中学校に上がると身長が伸びなくて、自分のプレーが通用しなくなってきました。当時、136センチで、身体も細かった僕は、ボールを受けても自分より大きい相手に弾き飛ばされてしまったんです。足も遅かったから、スピードで抜くこともできなかった。
 
一時期はサッカーを辞めようと思うぐらい落ち込んだけど、どうすればいいのか必死に考えました。身体が突然大きくなるわけでもないし、足だっていきなり速くなることはない。そこで行き着いたのが「ボールをしっかり止めること」だったんです。
 
ボールをしっかり止めれば、相手に寄せられないし、寄せられたとしても逃げられる。それは「中村憲剛」という選手がサッカーをしていくうえでの生命線だったし、そのことがだんだん自分の武器になっていきました。
 
 

■“普通の練習”でもうまくなれる

プロになってからも、ずっとボールを止めることにこだわってきました。こだわってきたと言っても特別なメニューをこなしてきたかというと、そうではありません。
 
サッカーをプレーされたことのないお父さんお母さんはご存知ないかもしれませんが、練習前のウォーミングアップで『対面パス』という2人1組になって、パスを出し合うメニューがあります。どこのチームでもやるようなことだから、正直何となく止めて、なんとなく蹴っている子が多いかもしれない。みなさんのお子さんはどうでしょうか。
 
もし、お子さんがなんとなく蹴っているようなら、それは僕からすれば、すごくもったいない!自分の意識を変えれば、対面パスという誰でもやっている普通のメニューでもうまくなれるんです。どこにボールを止めれば、一番スムーズに蹴れるのか。ちょっとズレたパスが来てしまった時に、うまくコントロールするにはどうするか。相手がもしも寄せてきていたら、どの方向にボールを置いたほうがいいのか。
 
そうやって1回1回のプレーにこだわるのは、サッカー選手になっていくために、とても大事なことです。例えば、1日に100回ボールを止める機会があるとして、なんとなくやっている子と、考えながらやっている子では、とてつもない差が生まれます。
 
 
サッカーがうまくなるには、特別な指導者に教わったり、特別な練習メニューをやったりしなければいけないと思っている人は多いかもしれません。だけど、ただやっているだけ、ただ教わっているだけでは、サッカーはうまくなりません。
 
大事なのは、毎日の練習の意識を変えること。1回1回のボールを止めることに、徹底的にこだわること。あなたのお子さんもそれさえできれば普通の練習でも絶対にうまくなります。僕たち親にできることは、それを子どもに気づかせてあげることではないでしょうか。
 
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