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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

2週間でリフティング百回できなければサッカーやめろと言う夫を何とかしたいけれど、どうしていいかわかりません問題

公開:2025年3月12日 更新:2025年3月13日

キーワード:DVスパルタモラハラリフティング子どもの権利条約毒親精神的に自立虐待

強豪チーム所属の息子。4年生になってそれまでのAチームからCチームに。本人が続けたいなら良いと思ってたけど、夫が「2週間でリフティングが100回できなかったら辞めさせる」と言い出した。現状40回しかできないのに......。

口では頑張ると言うけど自主練しない息子にいら立ち、本人のために辞めたほうがいいと言う。私はどうしたらいいかわからない。という悩めるお母さんからの投稿をいただきました。

スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、日本政府も批准する「子どもの権利条約」などを用いて、昭和のスパルタ教育からアップデートするためのアドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)

 

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(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<自主練しない子に本人が気付くまで待つ、という回答に全く納得いきません。一生気づかない子にも見守り続けろというのか問題

 

<サッカーママからのご相談>

現在10歳の息子は1年生からサッカーをしています。

最初は少年団に所属し、楽しくしていました。

引っ越しを伴って、2年生で強豪のクラブチームに加入しました。いま4年生になって、他のチームから、うまい子がたくさん加入し、子どもはAチームにから現在Cチームになってしまいました。

私は、本人が辞めたいというまで、そこで続けたらと思っていましたが、夫がリフティングが100回出来るようにならなかったら、もう辞めろと課題を与えました。期限は2週間。

現状、リフティングは40回くらいしか出来ませんので達成は難しいです。

本人は、辞めたくないと私には言いますが、夫には何も言わないです。

夫が辞めろと言うのには、口だけは頑張るというのに自主練しない息子に苛立っていることがあります。

本人の為に辞めたほうがいいと夫はいいます。
私はどうしたらいいかわかりません。

 

<島沢さんからの回答>

ご相談ありがとうございます。

日本を除いた多くの先進国では、お父さんのケースは恐らく児童虐待として位置付けられるでしょう。

ご本人はしつけ、教育という言い方をするかもしれませんが、その子の能力ではいかんともしがたい課題を与えて、本人がせっかく楽しんでいるサッカーを取り上げようとする行為は限りなく虐待に近い行為です。著書に『スポーツ毒親』(文藝春秋)がある私から見れば、完全に毒親です。

 

■日本政府も批准する「子どもの権利条約」とは

加えて、1989年に国連で採択された「子どもの権利条約」をご存知でしょうか。子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められたもので、18歳未満の児童(子ども)を「権利をもつ主体」と位置づけ、おとなと同様にひとりの人間としての人権を認めています。

日本政府もこれを批准しています。

以下、日本ユニセフ協会の抄訳から2つほどご紹介します。

★第19条「あらゆる暴力からの保護」
どんなかたちであれ、子どもが暴力をふるわれたり、不当な扱いなどを受けたりすることがないように、国は子どもを守らなければなりません。

★第31条「休み、遊ぶ権利」
子どもは、休んだり、遊んだり、文化芸術活動に参加したりする権利をもっています。

いかがでしょうか。お父さんのふるまいは、息子さんの権利を侵害しています。パワーハラスメントです。

学校で担任の先生が例えば「リフティング百回できないと体育の時間は参加させない」と言えばパワハラだと親御さんたちは皆怒るでしょう。それと同様に、血を分けた実の親であっても「リフティング百回できなければサッカーやめろ」は虐待とみなされます。

 

■苛立ちの「正体」は、AからCチームに落ちた息子さんへの嫌悪、自主練も「親に言わされいる」だけ

またお母さんの相談文のなかに「夫が辞めろと言うのには、口だけは頑張るというのに自主練しない息子に苛立っていることがあります」と書かれています。

苛立っているその感情の正体は、息子さんへの嫌悪だと私は考えます。期待してみていたらAチームからCチームに落ちた。そこを嫌悪している。

自主練をしないという点でも腹を立てています。そもそも自主練をするかしないかは本人が決めること。自主練をすると「口では言う」と嘆かれていますが、お二人に言わされているだけです。

 

■昭和のスパルタが良いと思ってる? もしくはモラハラやDV体質を感じさせる言動であると気づかせて

親は、子どもに最も身近な大人としてその成長を見守り、寄り添わなくてはいけないのにお父さんは逆の行動をしています。リフティング百回の条件を出す行為は、ただの当てつけ、意地悪です。

そこで「ほらできなかったな、サッカーやめろ!」と怒鳴るのでしょうか。その行為のどこが息子さんの成長につながるのでしょうか?

悔しがって練習し始めることを望んでいるのでしょうか。そんなイージーな行動で子どもを育て上げられるのであれば、私たち親はどんなに気楽でしょう。

お父さんは、半世紀以上前に流行った昭和のアニメ『巨人の星』のスパルタ教育をいまだに信じているのか。それともモラハラDV体質なのかもしれません。

唯一救いなのは、息子さんが「辞めたくない」とお母さんに言えていることです。ここはお母さんの踏ん張りどころです。以下に、三つほど具体策を授けます。

 

■アドバイス① 夫と対等なパートナーシップを結ぶ

解決するうえで最も大事なのは、お母さんがお父さんと対等なパートナーシップを結ぶことです。

相談文を読む限り、お母さんがお父さんに意見した形跡は見られません。理屈では叶わないと怯んでしまうかもしれませんが、理屈など述べなくていい。

「息子を追い詰めるのはやめてください。私の子どもでもあるんです。本人がサッカーを続けたいというのだからやらせます。私は子どもの権利を守りたいし、毒親にはなりたくない」

そう言って守ってあげましょう。そこでお母さんや息子に対する暴言や暴力があれば、子育て支援センターや児童相談所にすぐ相談してください。

 

■アドバイス② 夫が息子を追い込んでしまう背景を考える

上記の行動の後、夫に少しでも良い反応があれば、彼が子ども時代にどう育ったかをよく聴いてみましょう。

理不尽な仕打ちや、しつけと称して親から叩かれた経験はないか。それをどう感じていたかを尋ねてみてください。

よくあるのは、「自分も親にガンガン言われてここまでこれた」と、親からの理不尽なパワハラを自分の成功や成長につなげてしまっている暴力容認派です。

こういった方々は実際にいらっしゃいます。

一方で、同じように圧迫されたけれど「大した人間になれなかった」と自己肯定感が低いタイプ。要するに親の期待に添えなかったと思っている方も一定数います。

その方たちが同じことを繰り返すケースは少なくありません。

 

■アドバイス③ 子ども時代の夫を慰める

「おじいちゃん(夫の父)にいろいろ言われて嫌だったね」と過去に共感してみる。

「あの子もそうだよ。辛いと思うよ。私は子どもにはサッカーを楽しんでほしい」とお母さんの思いをきちんと伝えましょう。

  

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構成・文 島沢優子

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