蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

2023年9月 6日

中学生になったらサッカーは部活でする?それともジュニアユースのクラブチームでやる?サッカーの進路に関する問題

小1からサッカーしているが、小6の現在レギュラーではなく公式戦に出れない。中学生になって今のチームのジュニアユースに進んでも、指導者が同じ人なので状況の改善が見込めない。

中学で他のクラブに行った方が良い? 息子は試合に出たいと言うけど候補のクラブは、現所属クラブよりレベルが下がる。サッカーは続けたい、部活じゃなくクラブチームでやりたいと言うが、親として進路選びに迷う。と悩むお母さんからのご相談。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、お母さんに寄り添いアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)


(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<スタメンのレベルじゃない子を監督が贔屓。県大会出場が危ういです問題

 

<サッカーママからの相談>

6年生の息子は、小学1年生から今まで地元のクラブチームでサッカーをしていますが、現状レギュラーにもなれず、公式戦にも出られてない状態です。

通っているクラブチームには、ユースもあるので、レギュラーのほとんどの子がそのまま同じチームで上がりそうです。ジュニアユースは、ほかチームからも大勢入ってくるので、一学年50名位います。

相談は、進路についてです。

中学に上がるタイミングで、他のクラブに行った方がいいのか、悩んでいます。息子ともそれぞれの進路についての考えを話しました。息子は、試合に出られる方がいい! と言っています。

が、上で上げた「他のクラブ」は、今所属しているクラブよりも少しレベルが下です。

今のチームでジュニアユースに進んでも、コーチは今見てくれている人が引き続き見る形なので、形勢は変わらないと思います。

本人は、自分には個の実力はあると自負しています。違うチームで一からの初めましてメンバーでのスタートの方が平等にスタート出来るメリットもありそうですが、親として提案はしたものの、本当にそれで良いのか不安です。

現在、クラブの他に外部のスクールにも通っています。スクールコーチには確実に上達していると言われていますが、すごく迷います。

サッカーは続けたいし、本人は部活ではなくクラブでバリバリやりたいらしいです。

進路選びについて、親としてどうすればいいのか、教えてください。

 

<島沢さんからの回答>

ご相談いただき、ありがとうございます。

大切なわが子ですし、なるべくならその子にとって良い環境でやらせたいと思うのが親心です。よって進路選びについて「親としてどうすればいいのか?」と悩むのでしょう。私もサッカーをしていた長男、長女二人とともに生きてきたのでお気持ちはわかります。

そこで3つアドバイスさせてください。

 

■アドバイス①進路を自己決定させることが親にとって最も重要な振る舞い

ひとつめ。とにもかくにも息子さんに任せることです。

お母さんからのメールを読むと、息子さんなりにきちんと自分で考えているように見えます。

今のチームで試合に出られていない。そのチームのジュニアユースは1学年50人の大所帯だから試合に出られる可能性はほぼなさそう。よって、息子さんは少しレベルが下の他のクラブで考えているわけですよね。

「本当にそれでいいのか不安です」と書かれていますが、先のことをあれこれ考えても予測した通りに行くとは限りません。私が「それでいい」と思えるとすれば、息子さんがお母さんの意見に左右されることなく、自分の進路を自己決定できることです。万が一、今のクラブでそのままジュニアユースに行くと決めて、補欠のまま3年間過ごしたとしても「あのとき他のクラブへ行けばよかったのに」などと親は言ってはいけません。すべて本人の決定に委ね、結果云々ではなくそれを認めてあげること。そこが親の振る舞いで最も重要なことです。

なぜ、自己決定しなくていけないか。それは親の考えや導きによって子どもが進路を決めてしまうと、その先で試合に出られなかったり、例えばいじめに遭うなど嫌なことが起きたときに「お母さんがこうしろって言ったから入ったのに」と親のせいにしがちだからです。サッカーのみならず、受験などで親が干渉しすぎてしまった先で苦難に陥る話は取材でたくさん聞いてきました。

「お母さんが僕(私の)の人生をめちゃくちゃにした」

そう言って子どもたちは泣きます。悪くすると激しい家庭内暴力につながることさえ少なくありません。大袈裟なと思わないでください。自己決定させなかった親にはそのような結末も待っていることは、ぜひ知っておいてください。干渉しないこと。息子さんの考えや決定を尊重することをぜひ心がけましょう。

 

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■アドバイス②親の振る舞いが子どもの印象を悪くすることもある

ふたつめ。

もし、お母さんが気になってしまい息子さんについ何か言いそうになってしまうようであれば、進路を決めるまでのプロセスの段階は、顔を出すのは控えましょう。

わが子のセレクションに付き添ったお母さんが「セレクションはまるで中学受験のようだった」と話すのを聞いたことがあります。クラブチームに所属するには、セレクションに合格しなくてはなりません。定員人数はクラブで異なりますが、Jリーグ下部組織のクラブなどはおおむね1学年20数人で、ほかのクラブは20~30人、多いところだと50人前後加入させます。

多くはその前に練習会とか体験会という名称のトレーニングが行われます。どのチームも複数回行われるようなので「ここに入りたい!」と希望するクラブの練習会に息子さんは参加することになるでしょう。練習会に参加する意味もあります。ほかの参加者とサッカーをすることによって、そこに入団したいと考えている仲間のおおよそのレベルを体感できることです。その子たちと一緒にサッカーをやっていくことを想像して、自分がついていけるのか、競争しても試合に出る可能性がありそうか。子ども自身が検討する目安になります。

ジュニアユースの練習会をのぞくと、子どもの数の倍以上の大人がピッチの周りに立っています。なぜならひとりの子どもに両親や、中には少年団やジュニアクラブのコーチまで付き添っているからです。数年前ですが、練習会に出ているわが子にピッチサイドから終始、指示命令をしているお母さんがいました。よくサッカーを知っていらっしゃるようで「開け」とか「裏!」などと声をかけていました。

その彼女の視線の先にいた息子さんはとても苦しそうな顔をしていました。委縮し、恥ずかしそうでもありました。親は子どもに良かれと応援しているのですが、そのような態度を見せてしまえば、ジュニアユースクラブの指導者たちに対する印象を逆に悪くしてしまいます。そのクラブのコーチは知り合いだったのでそのことを尋ねたら「いくらスーパーな選手でも、あの親御さんではちょっと難しい」と首を横に振っていました。

 

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