蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

2020年9月30日

サッカーチームでいじめ? 親はどう振舞えばいいのか問題

優しいけど自己主張が上手くない小6の息子がチームメイトから意地悪を受けている。今のところイジメとまでは判断できないので、わが子にも「やり返せ」しか言えない。

チームではサッカーが上手い子や、技術はそこそこでも口が達者な子が幅を利かせている。大人しく優しい子でもチームで評価され上手くなれればいいけど、放任主義のコーチたちには期待できない。

親としてうまく立ち回ればいいけど、いい方法が思いつかない。どうすればいい? というご相談をいただきました。

少年サッカーの保護者の悩みとして、いじめ問題を抱える親御さんもいらっしゃると思います。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。
(文:島沢優子)


(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

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<サッカーママからのご相談>

子どもの人間関係に関しての悩みです。

小学校6年生の息子が隣町のサッカー少年団に所属しています。息子の立場は、Aチーム(一軍)の控えといったところです。移籍したこともあり、学年内に同じ小学校の子はいません。

優しい性格ですが自己主張やコミュニケーションが苦手な息子は、学年が上がるに連れて仲間から意地悪を受けることが増えました。

悪質なイジメとまでは行かないので、親としてもその子たちに苦情を言うことができないし、コーチに相談するのも気が引けます。ですが息子も言われたことを気にしている時もあり、親としてもどかしいです。

現段階ではイジメにつながらないことを祈ることしかできません。

どこのチームでも同じだとは思いますが、サッカーが上手い子や、上手くなくても自己主張が強く口が達者な子が、幅を利かせると思います。

中学以降は学区も違うしその子たちと同じチームになることはないので、最後まで続けさせようかと思っていますが、状況がひどくなるなら途中でも辞めさせようかと考えることもありますが、Bチームの子達とは割りと上手くやっていますので、辞めさせるのもためらわれます。

私の方で何か上手く立ち回れたらいいのかもしれませんが、どんな風にすればいいのか思いつかず、「やられたらやり返せ」と息子に言うくらいしかできません。

放任主義のコーチや、たまにしか来ない総監督は頼りになりそうにありません。

大人しく優しい子でも、やる気さえあればサッカーが上手くなるようなチームが有るのが理想ですが、私の知る限りでは上記のように上手い子か、口が達者で上に気に入られる子たちが優位に立つチームが多いように思います。

まるで社会の縮図のようにも思えますが......。

義務教育の学校ではないので、「意地悪が気になるなら辞めろ。でなければ我慢しろ」が正しいのでしょうか。

サッカーチーム内のイジメに関しての知見もないですし、何か今後の指針になるようなアドバイスを頂けたら幸いです。

 

<島沢さんのアドバイス>

ご相談のメールをいただき、ありがとうございます。

お母さんご自身「イジメにつながらないことを祈ることしかできません」と書かれているので、まだそこまでの段階ではないのかもしれません。

どんな時に、どんなことを言われたのか、どういった扱いを受けたのか。そのことで、息子さんがどんなふうに傷ついたのか。ご相談のメールだけではいじめかどうかの判断はつきかねます。

したがって、これといったアドバイスは特にはありません。一番いいのは放っておくことだと私は思います。小学6年生と最上級生ですし、あと半年で中学生になります。思春期、反抗期に差し掛かってきてもいるでしょうから、母親に何でも話す月齢は過ぎています。

 

■ぶつかりながら成長する経験も大事、まずは見守る姿勢を

いじめや、子ども同士のトラブルは難しい問題ではあります。が、親や教師、サッカーのコーチなど大人がいちいち介入するものでしょうか。無論、介入すべき酷いいじめもあります。毎日、トイレに連れていかれ、仲間の前でズボンをおろされ続け不登校になったケースを知っています。SNSで悪口を書かれたことがもとで、友人をあやめてしまった小学生も過去にはいました。

まずは、お子さんによく話を聞いて、酷そうだと判断したらコーチに話してみましょう。そうでなければ、意地悪をしたり、されたりは、子どもの世界にはあって当然のことと理解してください。じゃがいもが一緒に洗われると、それぞれがぶつかって泥が取れてきれいになるように、子どもたちもぶつかりながら成長するものです。そんなことを経験することは人間形成に重要です。自分たちで解決するのを見守ることを考えてください。

 

■お母さんの思考の中に子どもの意思が見当たらない

そこで私からひとつ、ご提案します。

今回の「いじめかも問題」をきっかけに、子離れしてみませんか?

中学以降は学区が違うため、いじめらしいことをしている子たちとは同じチームにならない。よって「最後まで続けさせよう」と、お母さんは思っている。ただし、状況がひどくなるなら「途中でも辞めさせよう」と考える。一方で、Bチームの子と上手くやっているから「辞めさせる」のもためらう。

続けさせる。辞めさせよう。辞めさせる。
言葉の端々に、子どもに対し「○○させる」と話す方のほとんどが、過度に干渉する子育てに陥っていました。15年余りの教育やスポーツの育成現場を取材してきた知見からのお話です。

子どものことを考えるとき、話すとき、お母さんは主語が自分自身になっています。「私は」サッカーを辞めさせたい。「私は」今のチームで続けさせる。

この主語を、ぜひ「わが子」にしてください。君はどうしたい? どうしたらいいと思う? そんなふうに「問い」を立てられる母親になってほしいのです。

主語が親御さん自身である限り、お子さんはその手から離れることはできません。

「お母さんは、サッカーを辞めさせる」「お母さんは続けさせる」――この思考の中に、お子さんの存在や意思が見当たりません。サッカーをやるのは、お子さん自身なのに。

この、子離れするために「主語を子どもにする」ことは、今の状況を変えるひとつの鍵になるでしょう。さらに、鍵はあと二つあります。

 

■やられたらやり返せというのは有効なアドバイスではない

もうひとつは、お母さん自身が「正しい大人」になってください。

「私の方で何か上手く立ち回れたらいいのかもしれませんが、どんな風にすればいいのか思いつかず、やられたらやり返せと息子に言うくらいしかできません」と書かれています。

本気でしょうか?

やられたらやり返しなさいと伝えるのは、いじめられたらいじめ返せばいいと教えているわけです。恐らく、意地悪なことを言われたら言い返せばいいじゃないの、くらいな気持ちかもしれませんが、お子さんにとって有効なアドバイスになってはいないように思います。

もちろん悪いのは、嫌なことや意地悪なことを言ってくる仲間です。

ですが、これはお子さんの問題です。まずは、嫌なことを言われたお子さんの気持ちに寄り添いませんか。

「嫌だったね。よく我慢したね。君は何も悪くないよ。大丈夫だよ。お母さんに何かできることはある?」

そんなふうに尋ねてあげませんか。どうすれば、彼らがそういうことをしなくなるか。どんな解決法があるか。誰に相談すればいいか。そこを一緒に考えてあげてはどうでしょうか?

 

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