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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

食トレだと無理やり食べさせられ胃潰瘍に。安全無視のクラブをやめたい問題

公開:2020年9月 9日

キーワード:タープテント合宿夏合宿指導者摂食障害熱中症罰走胃潰瘍遠征食が細い食トレ食事トレーニング

食が細いのに夏合宿の「食トレ」で無理に食べさせられ摂食障害になった息子。合宿後は自宅、学校でも嘔吐するように。合宿前は主要メンバーとして活躍していたのに、今は本人が気乗りしたときだけ練習に行くといった状態。

本人の意向を大事にしたいが、夏場に罰走、テント・タープ無しで熱中症の子が出ても保護者の手出しを禁ずるようなチームに不信感しかなく、移籍も考えるのだけど...... というお母さんからのご相談です。

最近では栄養面の正しい情報も浸透しつつあり、身体を大きくする=たくさん食べさせることではないという認識を持つ指導者も増えてきていますが、未だに量を食べさせることを実践しているチームもあるようです。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。
(文:島沢優子)

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(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<出場機会を均等にしてほしいけど親は黙っていたほうがいいのか問題

 

<サッカーママからのご相談>

夏合宿でのことです。

食の細い息子(10歳)は、チームの合宿で食トレとして無理やりご飯を食べさせられ、嘔吐すると言うことを繰り返し、摂食障害になりました。
合宿後は入院し、点滴で栄養を摂りました。

退院後から胃痛を訴え自宅、学校でも嘔吐するようになり、病院で診てもらったところ専門医の見解は胃潰瘍でした。

現在は嘔吐はほぼ収まりましたが、たまに蕁麻疹が出るようになり、無意識のストレスと診断されました。

合宿前は主要メンバーとして活躍していたのですが、今はサッカーもほぼ休んでいて、本人がやりたいときだけサッカーに行く、気乗りがしないときは行かない、無理強いはしないと言うことにしています。

それでも、子どもはチームをやめたくないと言っています。

私も子どもの意に反する事はしたくないので、無理やりやめさせようとは思いませんが、その一方でコーチのやり方には納得できない事もあります。

息子だけの話しではなく、「食トレ」の時に泣きながら、吐きながら食べている子どもも多数いるようです。

それだけではなく、真夏に罰走させたり、テント、タープ無し、熱中症の注意情報が出ても練習を続けるなど、子どもの命を軽視しているフシがあり信用できなくなっています。

飲み物がなくなろうと、熱中症の子がいようと保護者の手出しは禁止されています。それでもあまりにも酷いときは見かねて勝手に手を出しますが......。

もちろん良いところもあります。勝つことだけにこだわらないチームの方針も好きです。

ですが、いろんなことが積み重なって私にとっては不信感しかありません。

このように信用できないコーチでも子どもの気持ちを考え、移籍せずにここで頑張らせたほうが良いのか悩んでます。

アドバイスをお願いします。

 

<島沢さんのアドバイス>

ご相談のメールをいただき、ありがとうございます。

このコロナ禍で夏合宿を実施されていることにも驚きましたが、指導というよりもクラブのマネージメントが大いに問題ですね。

 

■子どもにサッカーを好きになってほしいと思っているのか疑問

嘔吐する摂食障害から入院しての点滴、ストレス要因の胃潰瘍が判明。しかも、罰走はあるわ、熱中症予防がずさんだわのチーム状況のなかで、息子さんはかなりのダメージを受けていることでしょう。

お母さんは「良いところもあります。勝つことだけにこだわらないチームの方針も好き」と書かれていますが、そのクラブが本当に勝つことにこだわっていないのかどうかは私としては半信半疑です。

勝利にこだわらないということは、楽しくサッカーをして、サッカーを好きになることを第一目標にすることがチームコンセプトなはずです。サッカーを好きになってもらいたいと真摯に思っている大人が、子どもを罰走させたり、テント、タープ無しで熱中症の注意情報が出ても練習を続けるでしょうか? 飲み物がなくなろうと、熱中症の子がいようと保護者の手出しを禁止にするでしょうか?

このあたりが、かなり乖離がありそうです。もう少し、目の前の現実を客観視する必要がありそうです。

 

■息子さんがチームに居続けたいと思う根拠を探りましょう

そこで、お母さんに三つアドバイスがあります。

ひとつめは、息子さんに「どうして続けたいのか?」を尋ねてください。

「子どもの意に反する事はしたくないので、無理やりやめさせようとは思いません」とあります。子どもの意思を尊重するのはいいことですが、お母さん自身はそのチームでサッカーを続けるという判断に疑問を持っているわけです。であれば、なぜこのような目に遭いながらこのチームに居続けたいと思う根拠を掘り起こしてはどうでしょうか?

なぜ同じチームで続けたいと思うのか?

ここでしかサッカーができない、選択肢がないと思っているのかもしれません。もしくは、同じ仲間といたいだけなのかもしれないし、同じ目に遭っている仲間を見捨てられないのかもしれません。

そのようなことを問いかけながら、お母さんが心配に思っていること、気持ちよくみていられない部分を共有してみてください。例えば、胃潰瘍になったけれど、そのあとコーチが謝ってくれたとか、反省していたとか、何かお母さんがまだ知り得ていない情報があるかもしれません。

 

■所属チームがどうか、ではなくわが子の本心を理解する方に重点を置きましょう

二つめは、ひとつめと関連することですが、お子さんの気持ちをもっと深彫りして理解することを心がけてみてください。

夏合宿で摂食障害になったことを機に体調を崩して練習に参加できなくなったことは、息子さんの中で辛い出来事だったはずです。「主要メンバーとして活躍していた」のですから、それは尚更です。今現在はサッカーもほぼ休んでいると言いますが、それは本人の体調がまだすぐれず本調子でないのか、他に理由があるのかを探ってください。

「本人がやりたいときだけサッカーに行く」とありますが、どんなときにやりたくなって、どんなときに気乗りがしないのか。

「気乗りがしないときは無理強いしない」のはいいのですが、もう少し息子さんの気持ちに寄り添ってみてください。

そんなに難しいことではありません。食事中やお風呂に入っているとき、お風呂の後、布団に入ったばかりのタイミングなど、少しリラックスしているときに「ちょっといいかな?」と話をしてみてください。

ご相談文を読んだだけなので、こちらもすべて把握できるわけではありません。すでにそのようなことをされているのならいいのですが、文章を読む限りではお母さんのこころが「息子のチームは本当に大丈夫か?」という不信感で占められている印象を受けます。

ここは、チームよりも目の前の息子さんの様子や気持ちを理解し、解きほぐすほうにエネルギーを注いでみませんか。

 

■胃潰瘍になった原因、今後についてコーチと話してみること

三つめは、コーチと話してみることです。

良いところもあって、勝つことだけにこだわらないと感じているのなら、お母さんもチームを嫌いではないはずです。お子さんももしかしたら同じ感覚なのかもしれません。

好きなチームだったのに、こんなことが起きた。

したがって、お母さんは少し混乱していないでしょうか。息子さんが胃潰瘍になったことについて、担当コーチと話しましたか? サッカーの活動が起因して入院までしているのに、コーチと対話したことが何も書かれていないことが気になります。

どうして、このようなことになったのか。
責任の所在はどこにあるのか。
今後は食トレはどのように改善するのか。
息子の今後について、コーチはどう考えているのか。

息子さんを真ん中にして、コーチと保護者は本音で語り合うべきです。それができないような状況では、息子さんは本当の意味でこのチームで成長できないでしょうし、サッカーを楽しめないと私は思います。

 

次ページ:お子さんが今後サッカーを楽しめるように、今、保護者がしなければならないこと

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文:島沢優子

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