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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

2018年10月20日

個々の運動能力、理解力の差でうまくいかない。 小学1年生にパスサッカーはマイナスか?

キーワード:コーチングドリブルパス中島翔哉小学生指導池上正目的

■パスを覚える=ドリブルが下手になった ではない

ジェフ千葉で中学生を指導していた時代、県でナンバーワンのドリブラーが入団してきました。ところが、入ってひと月くらいすると、彼のドリブルが通用しなくなりました。子どもは中学1年生くらいからスピード、アジリティーが上がってくるので、それらが均質化してきます。つまり、まわりが追い付いてくるため、抜けなくなるわけです。

私は「こんなときはパスしたらいいよ」と教えましたが、なかなかうまくいきませんでした。いくら言っても、目の前の相手をひたすら抜きに行くのでした。

そうはいっても、徐々にパスが出せるようになり始めて数か月経ったころのことです。休みの日に以前所属していた少年クラブで練習していた彼のプレーを見た父親から「下手になった」と言われてしまいます。

私のところに、父親から電話がありました。
「息子は、最後にゴールキーパーを抜いてゴールを決めるような子だった。周りのコーチもみんな、息子が下手になったと言っている。パスをするようになった、と言ってます」

そこで、私はこう答えました。
「パスが出せるようになって、彼はボールを失わなくなりましたよ。それが下手になったと言うのでしょうか?」と説明したのです。

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※写真はサカイクキャンプでのトレーニングです。 質問者及び質問内容とは関係ありません

■中島翔哉のすごさはドリブルだけではない

日本には「ドリブラー」という呼称がありますが、海外ではそういう概念はありません。
先日のウルグアイ戦で中島翔哉のドリブルが称賛されましたが、彼はきちんとパスもできます。効果的なドリブルをし、有効なパスを出せる選手です。

ドリブルで抜けるのもいいけれど、そこでパスを出せば数的優位になります。そこを教えてください。

数的優位を理解させるためには「判断しなくていけないトレーニングにする」ことです。すべてに判断を伴う練習です。

例えば、ゴールが四つある練習をしましょう。

右と左のゴール、どっちに攻めるか? わざとどちらかに寄せてから、空いたほうのゴールに入れる。そんなことを考えなくてはなりません。

そんな練習をしていけば、間違いなくサッカーIQは上がることでしょう。

相談者様の指導の方向性は正しいものです。決して選手のマイナスにはなりません。自信を持って、常に学ぶことを忘れずに指導してください。

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池上 正(いけがみ・ただし)
「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。
大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。
12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。

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コーチからの質問に池上正さんがお答えします

※質問の文言をご紹介させていただくこともあります。その際はプライバシーには配慮します。

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文:島沢優子

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