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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

ついていけないからサッカークラブをやめたい息子の気持ちを尊重すべきか悩む問題

公開:2017年11月15日

キーワード:やる気アドバイスダブルバインドフットサル

周りのレベルについて行けないから、来年になったらサッカーを辞めたいと子どもが言い出したら、どう答えますか? 今回のご質問者さまは、サッカーを強制してはいないものの、中学以降スポーツを続ける土台として、続けさせるよう説得するか悩んでいるのだそう。

自身もサッカー少年少女の母として子育てした経験を持つ、教育・スポーツジャーナリストの島沢優子が、読者の悩みに答える『蹴球子育てのツボ』。今回は、「ダブルバインド」で子どもを迷わさず、やる気につなげる接し方をアドバイスします。(文:島沢優子)

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※写真はサカイクキャンプの写真です。 質問者及び質問内容とは関係ありません
<<パパに放っておけと言われたが......。ダメな息子をどう受け止めればいいの問題
<サッカーママからの相談>

息子は小1から地元のサッカークラブに入っていて、今小4(11歳)です。
練習はあまり好きではなく、週1回しか行っていません。

小5になったら、サッカークラブを辞めると最近言いだしました。本人いわく、理由は上手い子たちと差があり過ぎてついていけない。とのこと。フットサルスクールにも通っていて、そちらは続けていくそうです。

小5になると一つ上の学年との練習になり、コーチが変わるので、本当の理由はそれなのかな、と思っています。また、他の学校の子も居てそもそもこのチームの居心地が悪いのかな、とも思います。

辞めることは簡単ですし、サッカーを強制しているわけではないので、反対しているわけではありません。

ただ私は、今のように週1回のペースでも小学校卒業まで続けていくことは中学、高校とスポーツを続けていく上で大事な土台になると思っています。

本人の気持ちを尊重して辞めさせるべきか、説得し続けていくべきか悩んでいます。

先輩ママとしてアドバイスをいただけませんでしょうか。

<島沢さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

時として、子育ては難しく感じますね。
難しく感じてしまう最も多い場面は、「親の理想」と「子どもの現実」がかけ離れているときかもしれません。
このご相談も、それにあてはまるようです。

結論から申し上げると、子どもの好きなようにさせてあげたほうがいいと思います。

息子さんがサッカーを好きではないとまでは思いませんが、少なくとも辞めたがっている地元のサッカークラブでプレーすることを望んでいないのでしょう。

お母さんは「5年生になると、ひとつ上の学年と一緒になりコーチが変わるからではないか」といった理由を挙げていますが、もしかしたらそもそもクラブでのサッカーは、彼にとってそんなに楽しくなかったのかもしれません。

■親の思いを理解している子どもは、辞めたい理由を素直に吐露できない

冒頭に「練習はあまり好きではなく、週1回しか行っていません」とありますね。週に1回しか行っていない、ということは、恐らく他の子どもたちは練習に2回、3回と通っているのでしょう。本当に楽しければ、もっと行きたい、やりたい、というふうになりますから。

ついていけない子どもと親御さんのお話しをいくつも聞いてきましたが、「いつかレギュラーになってほしい」とか「うまくなってほしい」という親の願いを痛いほど知っているだけに、追い詰められた子どもはやめたい理由を素直に吐露できません。

「頭痛がする」「お腹が痛い」と練習を休み続けることで、親から「もうやめる?」と言ってもらうのを待っていることも少なくありません。そんなわが子の姿は、親にとって情けなく映ってしまうのものです。

なぜなら、「困難に立ち向かってほしい」「克服してほしい」というのが親の理想です。冒頭でお話ししたように、この親の理想が子どもの現実があまりにかけ離れたまま修復できないと、その間にできた溝に子どもは落ちたまま這い上がれません。

「やめたい」のひと言が言えず、ベッドの中に居続けることになります。

しかしながら、息子さんはお母さんに「上手い子たちと差があり過ぎてついていけない」と、正直にやめたい理由を話しています。これはとても良いことです。

お子さんがせっかく本音を明かしたのですから、その勇気を受け止めてあげてください。
「そうなんだ。OK。やめていいよ」
そう言ってあげませんか。

■親に一貫性がないと、子どもが自分の意思を持たなくなることも

お母さん自身、「サッカーを強制しているわけではないので、反対しているわけではありません」とご自分の子育ての方針がきちんとあります。恐らく、お子さんの意思を尊重し、のびのび育ててこられたのだと思います。だから、本音を言える子に育ったとも言えます。

それなのに、ここで「やめないで続けようよ」と説得するのは、それまでの態度と相反するものです。

これは「ダブルバインド」(二重拘束)と言って、二つの相反する価値観を同時に子どもに発信してしまう状態を指します。

「自分の好きなようにやってごらん」と言われてきたのに、急に「中学、高校とスポーツを続けていく上で大事な土台になるからやめないで」といった考えで説得されると、子どもは迷います。戸惑うだけでなく、一貫性のない意見を言う親に対し不信感が生まれます。

まだ子どもだからと油断してはいけないと思います。小さいころからダブルバインドがそこここに落ちている環境で育つと、子どもは自分の意思を持たなくなる傾向があります。

そもそも、中学、高校とスポーツを続けていくかどうかも息子さんが決めることですし、つらいのに週に1回の練習を嫌々続けるサッカークラブでの1年間が彼の土台になるかは疑問が残ります。

次ページ:現代の子どもたちの「やる気」に火をつけるのは...


あなたが抱えるお悩みに、先輩サッカーママ島沢優子がお答えします! ※記事になります
※ご相談者様のお名前、チーム名等は記事に掲載いたしませんのでご安心ください。
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文:島沢優子

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