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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
パパに放っておけと言われたが......。ダメな息子をどう受け止めればいいの問題
公開:2017年10月25日 更新:2017年10月26日
元々運動が得意な方ではなく、チームの課題も1年ほど遅れてできたわが子。親から見ても運動センスがあるようには見えず、試合を観に行ってもガッカリ。パパには「ある程度放っておけばいい」と言われるけど、ついあれこれ言ってしまう。皆さんならそんな時どうしますか。
自身もサッカー少年少女の母として子育てした経験を持つ、教育・スポーツジャーナリストの島沢優子が、読者の悩みに答える『蹴球子育てのツボ』。今回は、今の心配を解消してもっと大らかな気持ちで子どもに接するアドバイスを授けます。(文:島沢優子)
※写真はサカイクキャンプの写真です。 質問者及び質問内容とは関係ありません
<サッカーママからの相談>
こんにちは。小3(8歳)の息子をもつ母親です。
息子は次男で、現在、フットサルチームに所属しています。元々運動が得意な方ではないですが、ポジティブな性格です。
チームには1年生のときから入っています。1年目はほぼ週一の練習に参加するのみで自主練はやらずでした。
2年になり、そのチームのレギュラー枠に入るため課題をクリアするための練習をし始めてみんなより1年程遅くなりましたが、やっとクリアできました。
ただ、そうは言ってもセンスがないのか、うまく出来ているようには見えません。
チームメイトには嫌味を言われ、見ていて辛そうなときも多々あります。みんなに追いつけるように、別のスクールにも行きはじめたりしています。本人はやめたいとは言いません。むしろ楽しいと言っています。
「もっと上手くなりたい」とは言いますが、自分から自主練しよう!とかそういう気持ちが薄いように思います。
試合に出るのも、ほんの短時間。見ていても微妙です。
夫は子どもの頃、セレクションを受けクラブチームに所属していました。
かと言って、息子に熱心に関わったりはしないし、仕事の関係で練習も見に行ったりもできていません。私が息子のことを相談しても、「大丈夫だよ! 上達はしているし、まわりとすごく差があるわけではない。自分の課題がわかって、そこをクリアしていけば...」と言っています。
試合に出られないのも、「仕方ないよ」とか、「本人がやるんだから親がなんか言ってもしょうがない。少し(ママは)入り込み過ぎてる。ある程度は放っておけばいい」と...。それはわかるのですが...。
息子には良かったところを褒めるようにしますが、試合、練習を目の当たりにすると、ガッカリしてしまう自分がいます......。
私自身が自分に自信がなく、マイナス思考になりがちなので、子どもにはあまり見せないようにしたいのですが、ついつい、あれこれ言ってしまいます。
心配や不安で眠れなくなるときもあります。
もっと大きな気持ちで子どもに接するにはどうしたらいいのでしょうか。本人のやる気を出す接し方など色々勉強しましたが、なかなか実践できません。
正直、センスはなく上手くもないですが、楽しくてサッカーをやりたいという息子の気持ちをダメにしてしまいそうです。
サッカーの悩みというか、子育ての悩みになってしまいましたが、アドバイスいただけたら幸いです。よろしくお願いします。
<島沢さんのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
うんうん。辛いよね。子どもが試合に出られないのは辛いですね。
「試合に出るのもほんの短時間」って、クラブももっと平等に出場機会を与えてほしいですね......って、あららら。前回のお悩みとよく似ています。
ひとつだけ違うのは、パパの関与があることでしょうか。「大丈夫だよ! 上達してるよ」と息子を認めつつママを励まし、「少し入り込み過ぎてるよ。放っておけばいい」と的確なアドバイスをしています。
パパの言葉はすこぶる正しい。「主人は子どもの頃、セレクションを受けクラブチームに所属していました」とあるので、ご自分も小学生の時からサッカーに打ち込んだ経験をお持ちのようです。一度通った道だからこそ、息子さんのことを客観的に見ることができるのでしょう。
さて、肝であるママの質問「もっと大きな気持ちで子どもに接するにはどうしたらいいか」にお答えします。三つの順番で考えてみてください。
■悩みを解消する3ステップ! まずは結果より努力に注目
ひとつめ。ママはパパのマインドセット(心構え)を見習えばよいと思います。パパの態度を観察して、同じようにふるまえばいいのです。
二つめ。結果よりもプロセスを見てください。
相談文に息子さんに否定的な文章が多いです。
「元々運動が得意な方ではない」
「センスがないのか、うまく出来ているようには見えません」
「試合、練習を目の当たりにするとガッカリ」
「正直、センスはなくうまくもない」
率直に申し上げると「ダメなわが子」を受け止めきれないご自分自身に悩んでいるのですね。
「私自身が自分に自信がなく、マイナス思考になりがち」と吐露されています。ダメなわが子と、自信を持てないご自分の姿を重ねるがゆえに心が揺れてしまう。これは親になった人なら誰にでもあることです。
しかしながら、親がそこを乗り越えなくては、子どもの育ちに最も重要な「自己肯定感」を積み重ねることができません。乗り越えるためには、お子さんが何かを成し得た結果よりも、頑張ったことに注目してください。
シュートが下手でも、なかなかパスを受けられなくても、子どもが歯を食いしばって走る背中、真剣な眼をじっと見るだけでも感動しますよ。
「頑張ったねえ」と親にひと言われるだけで、子どもは「認めてもらっている」という感情が生まれます。温かい気持ちにもなれます。
さらにいえば、わが子の感情に共感しても、同化してはいけません。
「そっかー、試合に出られなかったんだ。もう少しうまくなるにはどうしたらいいか一緒に考えようか」と残念な気持ちに共感して寄り添うことは大事です。
でも、例えば(なんで出られないんだろう。運動がダメなのは私に似た?)と悶々とするのは、子どもの感情に同化することになります。同化すると、親としての自分の立ち位置や役割を見失ってしまいがちです。
■どんな子に育てたい? 自分の心を整理しよう
三つめ。読む本を間違えていませんか? もしくは、その本の理解の仕方を誤っていないかを確認してください。
「もっと大きな気持ちで子どもに接するにはどうしたらいいか」と考えているのに、「本人のやる気を出す接し方など色々勉強した」と書かれているのが気になりました。
どんな本を読んだのかわかりませんが「子どもにやる気を出させるにはこうしましょう」などと親が能動的かつ活動的になるやり方を学ぶことは、子どもに寛容になることとベクトルが逆な気がします。
もちろんどんな本も参考になるかもしれませんが、子どもに寛容になるには子育ての「スキル」よりも、子育ての「ビジョン」を考えて整理するほうがベターでしょう。どんな大人に育ってほしいのか。どんなふうに育てたいのか。
講演などで尋ねると、みなさん「のびのび自由に」「その子らしく」といった言葉が並びます。
「そのビジョンに合った接し方をしていますか?」と尋ねると、ほぼ全員が全力で首を横に振ります。つまり、ご相談の方と同じように心配し過ぎ、干渉しすぎ、入れ込み過ぎている。私が自分を振り返っても、自分の子育てを客観視するのは、つくづく難しいものです。
難しいけれど、わが子を客観的にみられる親の力は、子育てにおいてとても重要です。両親から生まれたとはいえ、まったく異なる資質と性格をもつ、親とは違う「個体」です。であれば、「自分から自主練しよう!とかそういう気持ちが薄いように思う」ということなど、すべてママの主観ですね。
じゃあ、わが子を客観的に見るとは、どういうことでしょうか。
文:島沢優子
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