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『考え抜く』子どもを育てるために

子どもたちに伝えている自分の"言葉"をきちんと振り返ってほしい

2012年10月16日

キーワード:指導者育成

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 上野山氏は自著の中で、例えばフリーな味方にパスをすれば1点を奪えそうな場面でドリブルを選んでボールを奪われた子どもに対し、「逆サイドのフリーな味方を使えば1点取れるだろ!」と答えを押しつける指示をするコーチが多いことに疑問を呈している。
 
 
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■選手の判断を否定するのではなく、選択肢の違いを問いかける

「私が大事にしているのは、選手の意図を聞いあげることです。まずは選手が状況をどこまで見えていたのか、というのを聞きます。多くのコーチは“周りを見ろ、見ろ!”と指示をしますが、“見ろ”ではなく、選手たちが何を見ているのかを聞かなければいけません。
 
もし、味方も相手も見えていて、あえてドリブルを選択したのなら、 “ドリブルだと何秒でゴールまで行ける? パスだと何秒?”と、その判断の根拠を問いかけます。最初にお伝えしたように、短時間で目的を達するのがうまい選手の条件であると私と選手の間では合意しているので、ドリブルなら相手DFがたくさんいるから10秒、パスなら5秒、つまりパスが正解となりますよね。“お前は点を取りたいかもしれないけど、チームとしてはパスのほうが速いよな”と。あとは「パスを出してもボールは疲れないけど、ドリブルするとお前は疲れるんじゃないか?」と付け加えます。ドリブルを否定するわけではなく、選択肢の違いを問いかけているわけです。チームには目標と前提条件があるので、そこに立ち返ればいいわけです」
 
どんなにドリブルが好きな子どもでも、このような伝え方をすれば納得してポジティブに取り組んでくれるのではないでしょうか。ドリブルそのものを否定しているわけではないので、個性が埋没することもありません。
 
「残念ながら、“判断! 判断しろ!”と指導者が選手に怒るケースも問題です。それは突破するための判断なのか、パスを回すための判断なのか? その基準が、指導者と選手の間で合意できておらず、目的がお互いにずれていたら、子どもの判断が間違いだなんて指導者が怒ることはできないでしょう。ずれがあると思ったら、“判断しろ”ではなく、“今、何がしたかったの?”と目的を聞かなければならないのです」
 
今、上野山氏の指摘を読んでドキッとした方もいるのではないでしょうか。指導者は自らが選手にかけている“言葉”を自省し、常に向上し続けなければいけません。
 
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■何を使って指導をしているのか、よく考えてみてほしい

「そもそも言葉を使っているという意識が、指導者の中に薄いように感じます。“指導に何を使っているのか?”と聞くと、マーカーとかビデオとかそういう答えが返ってきますが、指導者がいちばん使っているツールは“言葉”ですよ。
 
例えば“ファーストタッチ!”という言葉をかける指導者もいるけど、ファーストタッチでボールを止めないでシュートしたほうがいい場面もある。でも、こういう言葉をかけ続けていると、ファーストタッチ=ボールを止めるものだと思い込んでしまい、子どもの発想が指導者の枠の中に収まってしまう。だから指導者は言葉を整理して、普段、自分が選手にどんな言葉をかけているのかを振り返り、指導者自身も考え抜かなければいけないと思います。多くのコーチが言う、“判断!”、“ボディーシェイプ!”、“幅と深み!”とか、こういう指示はすべて成功した後の成果物なので、できてないことを、やれ、やれと言ってもダメです。どうすればそれができるようになるのか、そのために子どもを導くのがコーチの仕事ですから。“ボールを奪われたな、何でだと思う?”、“人がいっぱいいたから、狭かった”、“じゃあ広いところを使うにはどうすればいい?”と子どもに考えさせればいいわけです。
 
何よりも、自分が使っている“言葉”を振り返ってほしい。“考えろ”とか“何をやっているんだ”とか“しっかり止めろ”とか、そんな言葉でいいのかと。毎週同じ言葉ばかりをかけているということは、子どもたちが進歩していないという事ではないですか?進歩していないとしたら、この“言葉”は間違った言葉ではないですか?そこで自分がかけている言葉は本当に適切なのか。今一度、振り返ってほしいと思います」
 
 
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上野山信行(うえのやまのぶゆき)//
公益社団法人日本プロサッカーリーグ技術委員長
1957年大阪府生まれ。
1976年からヤンマーディーゼルサッカー部でDFとして活躍し、1986年引退。
その後、釜本FCでジュニア、ジュニアユースの指導を皮切りに、92年ガンバ大阪ユースの監督に就任。
2009年Jリーグ技術委員長に就任し、現在に至る。
「自ら考えさせる」一貫した指導で、多くの日本代表選手を育てている。
日本サッカー協会公認S級コーチ。
 
 
 
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取材・文/清水英斗 写真/サカイク編集部

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