考える力

2016年1月20日

試合に勝つよりも出られない選手を出すことが輝く未来への決断!ドイツ一流クラブが重んじる哲学とは

■まずは子どもとコミュニケーション!親にも理解してほしいコーチの役割

具体的にはどのような接し方で選手たちとコミュニケーションをとっているのでしょうか?
 
「精神的なケアは非常に気を付けている。メンタル面というのは必ず落ちてくるときはあるから、そこのサポートはしっかり怠らずに注視していくこと。モチベーションが落ちているかどうかはもちろんのこと、些細な変化にも気づいてあげることを念頭においている」
 
親ですら難しい部分なのに、コーチがそこのケアする。この親身な接し方がトレーニングにも良い影響を与えるのは言うまでもありません。
 
では、お父さんお母さんと子どもの理想的な距離感とはどのようなものと考えているのでしょうか。
 
「よくイングランドなどでは親と選手を早い段階で離したりするが、ヘルタではあまり介入しない。ただ、U‐12年代はナイーブな年代でもあるから、私たちコーチはすべてを親に話すのではなく、なにか問題が起きた時でも、まずは子どもたちと直接話すようにしている」
 
「たとえば『ウチの子はどんなプレーを改善すべきですか?』とお父さんお母さんから質問されたとする。しかし、それは子どもと我々が直接話すことであり、その質問も子どもから直接コーチに投げかける問題だと考えている。ただ、コーチが親とまったくコミュニケーションをとらないというわけではない。選手も交えての三者面談を年に2回行う。そこでクラブ内におけるその子の状況などをしっかりと報告している。三者の適度な距離感を保つために年2回という回数がベストの回数なんだ」
 

■試合をうまくつかってモチベーションを調整

「今日は練習したくない」「試合に出たくない」などネガティヴな言葉が出てきた場合、どう対応すべきか?
 
「やはりモチベーションをキープするのは非常に難しい。さっきも言った通りモチベーションが下がるのは当たり前のことだから、下がったときのケアをいかにしてあげるかが重要なんだ。具体的には試合に多く出してあげたり、いつもはできないポジションでプレーさせてあげる。言わずもがな、試合に出ることでモチベーションは必ず上がる」
 
なるほど。たしかに言われてみると簡単なことだが、実際の試合では勝敗を意識し、戦力の関係もあるから現実的には決まったメンバーでなければ厳しいと思う人は多いはずです。
 
「よく考えてくれ。いつまでも決まった選手しか出さなければ、もちろん彼らは上達するだろう。しかし出れない子はどうだろうか? それはすなわち偏った戦力になってしまうだろう。
 
そんなとき、いつもスタメンではない選手を試合に使ってみる。彼らが試合に出始めればスタメンの選手達は必然的に焦る。 ポイントはそこなんだ! 多くの選手を試合に出すことでチーム内の競争意識が高まる。試合に出られた選手は、日々の練習は裏切らないと今まで以上に練習に打ち込む。目先の勝利よりも育成をとれば選手は育っていく。とてもシンプルなことだろ?
 
これがヘルタベルリンの育成の信念なんだ。信念がブレてしまうと育成は成功しない。クラブの哲学を信じ続けてやり抜くことだ」
 
お父さんコーチなど実際に現場に立っている人からすれば難しい決断に感じるかもしれませんが、目先の結果よりも育成を取ることこそ「輝く未来への決断」ではないでしょうか。
 

 
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