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こころ

トップアスリートのメンタルトレーナーが教える、長期化する自粛で不安な保護者の気持ちをやわらげる「こころの体操」

公開:2020年5月12日 更新:2020年5月13日

新型コロナウイルスの影響で学校の休校が長引き、スポーツのチーム活動もいつから再開なのか保護者によっても意見が分かれるし、どうしよう。今やるべきことがある、この時期の過ごし方で差がつくと言われても、何だか気持ちだけ焦ってしまって......。という保護者も少なくないのでは。

これまでとは異なる形で仕事や家事や育児に追われて、「しっかりしなきゃ」と思ってはいるものの、先が見えない不安な日々の中で感情が揺らいでいる方もいることでしょう。

今回も、日ごろオリンピック・パラリンピックを目指すアスリートのメンタルトレーニングに携わり、一方でスポーツを頑張る子の親の学び舎「スポスタ」で保護者の皆さんに心理学的な観点から子どもの人生と向き合う習慣づくりをサポートしている筒井香さんに、今不安に思っているみなさんに、不安や焦りといった感情を和らげる「こころの体操」を教えていただいたので、ぜひ実践してみてください。

(文:筒井香)

 

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サッカー活動も休止中でがっかりしている子どもも多い今、気持ちを和らげるためにできることとは

 

 

■大切なことは、感情を否定するのではなく行動を調節すること

日本各地での緊急事態宣言も延長され、学校の休講、スポーツ活動の自粛も延長になっている地域が多く、先日は、インターハイの中止も発表されるなど、スポーツ活動の再開も不透明な状態が続いています。

先が見えない非日常の生活が長期化して、不安や焦りを感じておられる保護者の皆様も多いのではないでしょうか。

「不安」「焦り」といった感情は、おそらく多くの方にとって不快で、避けたいものではないかと思います。

しかし、心理学において、感情には大事なことをお知らせしてくれる機能があると考えられていて、実は、不必要な感情というものはないのです。

例えば、「不安」「焦り」だけではなく、「怒り」「悲しみ」といったネガティブな感情は、心理学では、大事なものが失われていることや、失われようしていることをお知らせしてくれている大切な感情であると考えられています。

緊急事態宣言が出されている生活の中で、保護者の皆様が感じる不安や焦りなどの感情は、子どもの明るい未来が失われるのではないだろうか? という、わが子を想う気持ちの証であると思います。

オリンピックやパラリンピックの選手であっても、プロのスポーツ選手であっても、こうしたネガティブな感情を持つことは多々ありますが、決して悪いことではないと、いつもお伝えしています。

ですので、もし、保護者の皆様で、こうした感情を持ちの方がおられましたら、「この感情には理由があるなぁ」と、今一度、自分の感情を"自分らしさであると認める"ことが大切であると、心理学では考えられています。

ネガティブな感情を持つストレスよりも、ネガティブな感情を持つ自分自身を自己否定することが、最大のストレスになるからですね。

これまでニュース番組等で、デマ情報の広まりと、それに伴う買い占め行動や、車内で咳をした人への暴言など様々な報道がありました。

この現象を心理学の視点から分析すると、やはり人間を突き動かすのは「感情」であるということが言えます。

デマが広がること、買い占め行動が起こること、喧嘩が起こることなどといったこれらの背景にあるのは、「人間の恐怖という感情」ですね。

そうなると「やっぱりネガティブな感情は持つべきではない」と思われるかもしれません。

しかし、ここでも恐怖の感情は、人間の命を守るために大切なことをお知らせしてくれているわけです。自分の命を守れ! 大切な人の命を守れ! と。

そう考えれば、上記の行動をしている人にはその人なりの理由があるわけですね。

しかし、行動自体は肯定できることではありません。だからこそ大切なことは、感情を否定するのではなく、行動を調節することになるのです。

 

■感情を認めて行動を調節する「こころの体操」とは

それでは具体的に、行動を調節するために大切な、「こころの体操」について、お伝えします。

①ネガティブな感情にはお知らせ機能があり、その感情になる素敵なあなたならではの理由があるからこそ、ありのままの自分の感情は否定しなくていいという大前提を理解する。

②「○○な感情の自分がいる」と言葉にする。
 
そして、その感情が何をお知らせしてくれているのか?自分がその感情になる理由を考える。
できればこれらを、紙に書き出してみることがオススメ。これによって、より自分を客観的に捉えられるようになります。

③不安や焦りに思うことを、紙に箇条書きで書き出し、自分でコントロールできること、できないことに仕分ける。

④自分でコントロールできることのうち、今、自分が出来ることを考える。

不安について頭で考えているうちは、同じことが頭の中をグルグル繰り返しめぐるようになり、不安の感情がどんどん膨れ上がっていってしまいます。これは、どんどん部屋が散らかっていくようなものですね。

感情を言葉にすること、書き出すことによって、脳が整理されていきます。部屋の片付けのようなものですね。
脳が整理されることで、今やるべき行動をするために脳を使えるようになるのです。

そして「こころの体操」の最後は、

⑤どうあると今日の自分はリラックスできるだろうか?と考えて過ごすことです。

「コロナ鬱」という言葉も聞かれるように、憂鬱な日々をお過ごしの方もたくさんいらっしゃると思います。「リラックスできない」「この生活でリラックスなどできるはずがない」という考えもあるかと思います。

海外遠征中の選手から、毎日のように「今日もリラックスできなかった」とメッセージがきたことがあります。その際には、「今日どうあるとリラックスできるか?」と視点を変えて一日を過ごしてみることにしました。すると、少しの時間でも、少しのことでもリラックスできる自分を作り出すことができるようになっていったという話があります。

つまり、「どうあると今日の自分はリラックスできるだろうか?」と、自分自身が主体になって考えることで、今の生活の中でリラックできることに目を向けやすくなると思います。

こうした5段階の「こころの体操」が、行動を調節できる準備になるのです。

 

■「使用の心理学」でこころの成長を

今のような、行動が制限される不自由な日々では、これまでと同じ生活の過ごし方を求めることが、嫌なストレスになってしまうことと思います。

心理学には「使用の心理学」という考え方があります。

これは、自分にあるもの(物・環境・人)を使い切る心理で生きる生き方を表しています。

今は"ないもの探し"をしたくなる心理になりがちですが、"あるものを探し"をして、それらを使い切る"使用の心理学"で生きることは、新たな幸せを感じる"こころの成長"にもつながります。

今は、お子様と一緒にあるもの探しをして、使用の心理学で生きる習慣をつけやすい時期かと思います。

1年後、今を"こころの成長"ができた時期であったと振り返られるように、みんなで今を過ごしたいと思っています。

 

 

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筒井香(つつい・かおり)
株式会社BorderLeSS代表取締役 博士(学術)日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士
大学・大学院時代に人間行動学、臨床発達心理学、スポーツ心理学などの心理学から「人間の特性」を広範に学び、また、博士論文では、「個別性を重んじたポジティブシンキングの多様性」に関する理論を構築。現在はオリンピック、パラリンピック選手のメンタルトレーニングのほか、スポーツを頑張る親の学び舎「スポスタ」の講師として、スポーツを(アスリートとして)頑張っている子どもの保護者に向けて、人としてのキャリアのなかにアスリートとしてのキャリアも含めた、包括的な人生設計に重要な理論と実践方法を伝え、子どもの「キャリア=人生育て」を心理学の視点からサポートしている。

株式会社BorderLeSS
https://www.borderless-japan2020.com/

スポスタ
https://www.sposuta.com/

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文:筒井香

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