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サッカー豆知識

試合会場での着替え、おしゃれなイメージなし、GK不足...... 女子サッカー普及の課題、解決の糸口は?

公開:2025年1月27日 更新:2025年2月 4日

キーワード:なでしこジャパンカフリンガ東久留米原菜摘子垣本右近女子サッカー小林弥生

プレーヤーの少なさが課題だと言われて久しい女子サッカー。

育成年代にスポットを当ててみると、女子は小学生年代は約1万9400人と男子の1/10の割合、中学生は約1万1100人とさらに減ります。(2023年3月末の女子登録者数)

2022年にサッカーとフットサルを活動する女子チームを立ち上げ、女子の育成にも力を注ぐ垣本右近さんに女子サッカーを取り巻く環境について、お話をうかがいました。
(取材・文 木村芽久美)

 

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(2024年12月に開催された第2回ラピスカップに出場した女子選手たち)

 

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■なかなか整理されない女子サッカー界の底辺 

2723375_s.jpg(写真は女子サッカーのイメージ)

 

垣本さんが代表を務めるカフリンガ東久留米の女子のトップチームは全国大会に行くような実力がありますが、その一方で、下のカテゴリーの女子チームも指導しています。

そのような状況の中、男子のサッカー環境は整理されてきているけれども、女子はまだまだ整理されていないと感じているのだそうです。

「女子中学生リーグの3部や4部になると指導者も不足していて、選手も少なくなってしまい解散するチームが多くなっている状況です。数年前は女子の小学校チームもたくさんあったんですが、ここ5年ぐらいで一気に減って、半分ぐらいになっているんです」

競技人口も多い男子は、同カテゴリーでも人数が揃っているし、それなりの強度でサッカーをしていて、モチベーションも高い場合が多いのですが、女子の場合は楽しくサッカーをすることが一番の目的だったりする中で、男子と同じ規則やシステムの中では同様にはならず、最終的にやめてしまう子もいるのだそうです。

小学生年代の女子チームが少ない為、男子チームの中でサッカーをする傾向があり、女子だけでサッカーをする機会が少ない状況です。

 

■女子だけで試合をしよう! と始めた「ラピスプロジェクト」とは

男子の中でしかサッカーをしたことがないという子は、地方にもいます。そういった子に女子だけの試合を提供することを目的に開始された「ラピスプロジェクト」

垣本さんは伊豆諸島でサッカーをしている女子小学生を集めて、女子だけの試合「ラピスカップ」を開催しました。

第1回目は神津島で伊豆大島、新島、式根島、神津島、御蔵島の女子たちに、カフリンガの中学生女子チームも加わり総勢約40人、2024年12月に開催した第2回目では西東京市の岩倉高校で近隣チームも加わり、約70人が集まりました。

「毎年カフリンガでは伊豆大島に合宿に行ってるんですよ。神津島はサッカー文化が根強く、女子プレイヤーも結構いるんですけど、男子の中でしかやったことがないから、女子だけで試合やってみたいよねって神津島や伊豆大島の方たちから相談があって」

元なでしこジャパンの原菜摘子さん、小林弥生さんがゲスト講師として参加し、楽しい雰囲気でイベントは盛りあがったのだそうです。

 

■イベントを通じて感じる感謝の気持ちや楽しい体験

先日の第2回開催では、1日目に悪天候で船が欠航になってしまうトラブルがあり、島からの参加者にとっては移動が大変だったそうですが「普段、年間数試合しかできない状況にいる島の子たちにとって、試合ができるというだけで本当に幸せを感じている」と、参加された監督さんは話されていたそうです。

島の子どもたちにとっては試合だけでなく、島にはないコンビニに行くことや、家族のお土産にマクドナルドやミスタードーナッツに行くことを楽しみにしているのだと言います。

東京の参加者にとっても普段当たり前に試合ができる環境が、当たり前ではないことを実感でき、サッカーができること、協力してくれる周囲への感謝の気持ちを持つ良い機会になります。

また最近は家族で海に行く機会も少なくなっているそうで、参加したカフリンガの女子の保護者は「子どもたちだけで船に乗って島に行くという経験は、とてもありがたい」と話していたそうです。

サッカーに関することはもちろんのこと、サッカーを通じ、貴重な体験ができるのも、周りの大人の見守りやサポートがあってのこと。垣本さんも「島のたくさんの人が協力してくれています」と感謝を示し、次回の伊豆大島での開催についても意欲を見せています。

  

■女子選手はガサツで洒落っ気が無いというイメージを変えたい! 日本でもオシャレでサッカーが上手い選手の育成環境を

「プロや上のレベルを目指す中で、強い強度の中でできたり、早い判断力も身につくので男子チームでサッカーをするのもメリットは多いと思います。

ただ女の子の中でやることで男子にはないキャッキャ楽しい雰囲気があったり、女子だけの感性や悩みを相談できたりします」

垣本さんはスペインに毎年女子の選抜チームを連れて試合に出場するのだそうですが、初めて行った時、多くはスカートを履いていたり、綺麗なロングヘアーが多かったり、日本との違いに驚いたと言います。

ガールズスクールも担当している元なでしこの原菜摘子さんはネイルをしたり、オシャレを楽しんでいますが、2005年のアジア最優秀選手にも選ばれたこともあるレベルで、サッカーが上手くてオシャレな先輩ということで、子どもたちからは憧れの的なのだそうです。

必ずしも女子が誰しもスカートを履きたいわけではないし、ロングヘアーに憧れているわけではありませんが、男子チームに所属している場合、女子特有の感性やマインドが表現しづらいかもしれません。

垣本さんは原さんと「日本の女の子もスカート履きたい子は履いたり、オシャレしたり。でもサッカーも上手いよねっていう中で育成していかなきゃダメだよね」と話しているのだそうです。

 

■着替えについては周囲の大人が目を配ってほしい

また、サッカー先進国であるスペインでは、スポーツの文化がしっかりしていて、グラウンドには必ずロッカールームがあります。試合前は必ずここに案内され着替えやミーテイングを行うことができます。

日本の場合、例えば河川敷のグラウンドなど、更衣室どころかトイレも整備されていない場合があり、着替えもその場で行うことがしばしばあります。

最近は低学年であっても「プライベートゾーン」についての説明があったり、体をほかの人に見せないように注意喚起されているので、男女一緒の着替えに抵抗がある子もいるでしょう。ましてや高学年になれば、同じ場所での着替えを躊躇する子も出てくるもの。プレー以外の要素でサッカーが嫌になるきっかけになりかねません。

子どもの着替え環境に関しては、日本におけるスポーツの考え方が古く、競技レベルが高くになっているにも関わらず環境が整備されない実情があります。

特に女子の更衣の問題は、日本のスポーツ文化の発展のために早く良い環境にしていく必要があると思います。

 

■女子は男子チームと女子チーム、どちらでサッカーをした方が良い?

2723354_s (1).jpg(写真は女子サッカーのイメージ)

男子チームに入れたほうが、強度が高い練習ができて上手くなれると期待して男子チームに入れる保護者も多いですが、垣本さんは、サッカーが上手い子が、男子チームに所属することについて、理想としては女子チームでサッカーをすることを勧めています。

「女子サッカー界全体のレベルを上げるためには小学生年代から女子チームでやることも大切だと思います。レベルの高い小学生女子が男子の中でプレーすることもいいとは思いますが、カテゴリーを越えて女子中学生や女子高校生に混ざってプレーすることで自分のレベルを知ることと共に、強度も保つことができます。そして女子全体のレベルがアップすると思います」

以前は日本サッカー協会で「女子部」が存在していたそうですが、数年前から女子は男子の第3種に所属され、種別での女子の縦関係が繋がっていない状況なのだそうです。

「女子部」として一括した組織化ができれば、例えば、普段は男子チームに所属していたとしても、学年の垣根を超えて中学生の女子の試合に出場できるような環境を作ってあげることもできるのでは、と垣本さんは言います。

自分が女子の中でどの位のレベルにいるかが理解できること、また原菜摘子さんの例のように、先輩が身近にいる環境にいる方が、先々の自分のイメージができ、サッカーを続けやすい環境につながるのではないかと話しています。
(後編に続く)


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垣本右近

NPO法人東久留米スポーツクラブ代表理事/株式会社KELNCHU代表取締役
カフリンガ東久留米/カフリンガBOYS東久留米/FCフエンテ東久留米など8つのクラブを持ちそれぞれの年代でサッカーを楽しめる環境作りをしている
指導者・選手としても活動中

 

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取材・文 木村芽久美

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