サッカー豆知識

2018年6月 5日

指導者に「やれ」と言われるより効果的!? 選手が自ら目標に突き進むための気持ちのくすぐり方

多くの指導者は、選手達に「成長してほしい」「もっと良い選手に」なってほしいと思うもの。

なでしこリーグ2部のバニーズ京都SCでゼネラルマネージャー(GM)を務め、京都精華学園高校の女子サッカー部では、監督として指導にあたる越智健一郎氏は「選手達には直接、目的や目標に向かって進めと言うのではなく、自分から向かって行きたくなるような、仕掛け作りを大事にしています」と話します。
(取材・文:鈴木智之)

(写真は過去のサカイク女子キャンプ)

■気持ちをくすぐって本音を引き出すための仕掛け

「全国大会に行きたい、選手を成長させたい、自分を律するようになってほしい。多くの指導者はそう考えていると思いますが、私は選手に直接言うのではなく、こっそり伝えたい。気持ちをくすぐりたいので、面と向かっては言いません

そう言って、笑顔を見せる越智氏。直接言わずに、どのようなアプローチで選手の気持ちをくすぐるのでしょうか?

「選手をA地点からB地点に向かわせるために、その状況やその選手に合うものは何かを考えて、準備します。その何かはB地点(目的)によって違います。ひとつ例を挙げると、高校1、2年生のときにセンターバックでプレーさせて、3年生でFWとして起用したところ、ブレイクした教え子がいます。センターバックでプレーしたことで、色々と感じることがあったんでしょう。FWで起用したところ、こうすればいいんだと目的が見えたんですね。目的が見えれば、そこに行こうと勝手に走り出します

ほかにも、選手達同士で話をするように仕向けるために、イベントを企画することもあるそうです。

「選手達と合宿に行って、自分たちで火をおこすことから始めたこともありました。真冬だったので、火がないと凍えるほど寒いんです。30分で火がつくグループもあれば、1時間半かかったチームもありました。普段、イベントやチーム分けをするときは、1年生から3年生まで混ぜるのですが、このときは3年生だけのグループを作りました。そこに火をくべて焚き火をすると、誰ともなく話し出すと思ったんです。これも仕掛けです。『去年は全国に行けなかったから、今年は頑張ろうね』という話をしてほしかったんです。普通に『ミーティングをしよう』と押し付けるのではなく、学校の外に連れて行って、火を囲んで話す雰囲気を作るんです」

■直接ほめるよりも効果的!?

人間は、やらされるのと自ら進んでやるのとでは、同じ行動をするにあたって、感じ方や得られるものの大きさが違います。越智さんの仕掛けは、いたるところで行われています。選手とコミュニケーションをとるときも、いくつかの仕掛けを使い、どうすれば効果的に伝えることができるか? を考えているそうです。

「私の考えでは、コミュニケーションは量がすべて。質ではありません。毎日、小さなことでもコミュニケーションをとっている人に注意されると、素直に聞き入れる気持ちになりますが、普段、ほとんど関わりのない人に注意されるとイラっときますよね(笑)。だから私は普段から選手を観察して、些細なことでも会話のきっかけにします」

そう言うと、ひとつのエピソードを教えてくれました。

「オフの日に選手に会って、『今日は○○とパンケーキでも食べにいくんやろ』と言うと『なんでわかるんですか!?』と驚かれます。実は、その子に話をする前に、別の子に『今日はオフだけど何をするの?』と聞いて、『○○とパンケーキを食べに行きます』と言っていたので、知らんふりをしてそれを言っただけなんですけど(笑)。これもテクニックで、選手は『監督はなんでもお見通しなんだ』と思うわけです」

越智さんは日常のコミュニケーションを含む、あらゆる場面で相手の状況を見て、行動を工夫しています。それこそが、仕掛けの正体です。

「相手に何かを伝える時も、直接言うのではなく、誰かを介して言う方が効果があります。選手をほめるときに、直接『今日のプレーは良かったよ』と言うのではなく、他の選手に『越智がほめていたと言っておいて』と間接的に伝えてもらいます。怒るときも同じで、直接言うよりも、効果があります

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