サッカー豆知識

2014年1月10日

バーモントカップ サッカーにもつながるフットサルの考え方

 1月4~6日、東京・駒沢オリンピック公園総合運動場体育館・屋内球技場にて「バーモントカップ第23回全日本少年フットサル大会」が行われ、江南南サッカー少年団が10年ぶり2回目の優勝で幕を閉じました。江南南サッカー少年団の他、準優勝の鹿島アントラーズジュニアや3位のベガルタ仙台ジュニアなど今大会は普段はサッカーをしているチームが上位に入りました。サッカーにつながる部分、そしてサッカーとフットサル指導の考え方について、上位進出チームに伺いました。
 
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10年ぶり2回目の優勝を果たした江南南サッカー少年団
 
 

■狭いところでの判断・技術向上に生かせる

 3位となったベガルタ仙台ジュニアの西洋祐監督は「僕らはあくまでもサッカーに生かすためのフットサル練習を一番に考えています。狭い局面で打開するところや、守備のところがサッカーにつながると思います。前に進ませないとか、チャレンジ&カバーなどはサッカーに生かすことができるのではないかと思います。ゴール前の局面のよりシビアな状況でも、切り替えが速いので、ゴール前の攻防にも生かせると思います」と狭い局面での攻防がサッカーにもつながると語っています。
 
 準優勝の鹿島アントラーズジュニア小谷野稔弘監督も「スペースが無いので、狭い中での判断や技術、切り替えはサッカーに通じる部分がすごくあると思いますので、サッカーに生かせて行けると思います」と同様に語っています。
 
準優勝の鹿島アントラーズジュニア
 
 優勝した江南南サッカー少年団の松本暢佑監督もフットサルをやることによって「少しは判断が速くなったかな、と思います。ゆっくりした間合いでは無くて、零コンマ何秒で人が寄ってきてしまいますし、相手の距離も味方の距離も近いです。サッカーの場合はスペースがあるので、ちょっと時間があって、判断が少し遅くても収拾できますが、ちょっと判断が遅いと何もできなくなってしまいます」と判断の速さがついたことをフットサルの効用として語っています。
 
 狭い中での判断や技術向上、攻守の切り替えの速さをつけるといったところがサッカーにも生かせるというのは、どの上位チームの指導者の方も同様に考えているようです。
 
 

■試行錯誤しながらフットサルに取り組むJクラブアカデミー

 ベガルタ仙台ジュニアの西監督は「大会前は守備のところでまだまだ隙があったと感じています。大会を通して隙を無くそうとする中で、一人一人の守備への取り組み、意欲がしっかりできていたのではないかと思います」と今大会の選手たちのプレーを振り返りました。先に述べたとおり、守備の部分で相手の前進を遅らせるプレーや、チャレンジ&カバーといったプレーが大会中に磨かれていったと言います。
 
3位のベガルタ仙台ジュニアは高い守備意識で今年も上位に入った
 
 鹿島アントラーズジュニア小谷野監督は変わった試みとして「Fリーグで指導されていた監督さんとも交流があって練習に来てもらっていたりしていました」と実際にフットサルを指導していた方にも練習を見てもらったそうです。
 
「僕も分からない部分の方が多いのですが、出して蹴る動きやセットプレーパターンも勉強して、子どもたちと一緒に考えました」と選手たちと共に考えてフットサルに臨んだという小谷野監督。サッカーとは違った部分がある中で、選手たちやフットサル指導者と共に試行錯誤しながらチームを作っていったそうです。
 
「サッカーで良かった子もフットサルだと難しい部分があるという子はいます。僕らも専門でやっているわけではないので、いろんなチームと試合をやらせてもらったり、こういう大会に出たりして学ばせてもらっています。僕らももっと勉強しなければいけないと思います」と今後もさらに試行錯誤を重ねながらこの大会に臨み、今年達成できなかった優勝を目指します。
 
長身選手をうまく生かし今年も上位の鹿島アントラーズジュニア
 
 

■優勝の江南南「サッカーと変わらない」

 江南南サッカー少年団の松本監督は 「特にはサッカーと違う指導などやっていません」と断言しました。「サッカーがしっかりできないとフットサルもできないかな、と思っています。フットサル専門のチームも普通のサッカーで県トレ・ナショトレの子ばかりで、サッカーチームに入りながら通っている子も多いです。フットサルはフットサルで良いところはありますが、ベースになる部分はサッカーとそんなに変わらないと思います」と、フットサルをサッカーとそれほど変わらないと捉えていました。
 
「いつも前から行って倒れるまで走って下さい、と言っています。うちの練習はミニゲームが多いのですが、フットサルはミニゲームの延長という感じです。フットサルでも8人制でも11人制でも前から行くのは変わりません」今大会で見せた素早いプレス、よく走るプレースタイルはサッカーになっても変わらないとのことです。
 
 それでも、フットサルならではという部分に関して、松本監督は考えを持っていました。今大会、シュートで終わるプレーが多かったことについて「フットサルの失点は崩してと言うよりは、パスミスを取られてカウンターを喰らうパターンが一番多いかな、と思います。それだったらシュートを打って終わった方が戻る時間もあると思います」という考えを示しました。まずシュートで終わり、カウンターを防ぐという部分は、フットサルだからこそより意識を強めた部分でしょう。
 
江南南サッカー少年団は速いプレス、高いシュート意識で栄冠に輝く
 
 また、今回は徹底したスカウティングがはまりました。「その子が右利きなのか左利きなのか、どういう癖なのかを事前にスカウティングして情報を入れておくと、守備に行きやすくなります。最後に右足で蹴る選手や、必ずボールを止める選手とか…。自分のことも大切ですが、相手があってやるスポーツです。相手が何をするかを考えないといけません」1対1で対峙する場面の多いフットサルでは、相手の癖をよく見て、考え、駆け引きをしながらプレーすることがより重要になります。
 
 今回紹介した大会上位3チームはいずれもサッカーにつながるフットサルを心がけ、チームを作ってきました。それぞれサッカーとフットサルの違いについての見方は異なりましたが、狭い局面での技術向上や判断スピードの向上が望めるという面では一致していました。優勝した江南南サッカー少年団出身の浦和レッズ原口元気選手は、決勝途中で会場を訪れ、優勝したチームを激励したそうです。原口選手のような高い技術を持ったサッカー選手が今回大会に出場した選手から現れることを期待したいです。
 
 
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