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サッカー豆知識

めざすは技術と判断力とポジショニングにこだわるサッカー 野洲高校山本監督に聞く

公開:2012年12月25日

キーワード:コミュニケーション育成高校サッカー

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12月30日(日)から1月14日(月)にかけて、国立競技場などで開催される「第91回全国高校サッカー選手権」。この大会の見所を前回に引き続き、第84回大会で優勝を果たした滋賀県・野洲高校の山本佳司監督にお聞きしてきました。前回は高校サッカー全体の見所から始まり、野洲がクリエイティブなサッカーになぜこだわるのか?ということをお聞きしましたが、今回は野洲高校、山本監督のサッカー感についてです。
 
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■サッカーは“ボールを通してのコミュニケーション”

――山本監督にとって“サッカーをする”ということはどういうことだと思いますか?
ボールを通してのコミュニケーションではないでしょうか。選手同士もそうだし、対戦相手ともそう。ボールを扱うには凄いコミュニケーションが必要です。パスなんかそうじゃなかったら、通らない。パサーとレシーバにコミュニケーションが無かったら相手の厳しいプレッシャーの中ではムリでしょう。そういう所が全体的に薄いのだと思いますね。ボールを持っていて、敵にマークされていると出す所がないというふうになるのが日本のサッカー。とりあえず背後に蹴ります。出す所がない、出す所がないから後ろに下げますっていうサッカーが多すぎる。それじゃ、クリエイティブな部分が無いですよね。相手チームの穴を探して、パッと“わ、空いている”とパスを出す。空いてなかったら、出す所がない。ピッチ上に落ちているお金を探しているのと同じ。それではダメだと思います。
 
――野洲のサッカーの根本といえますね
相手が密集していても、わざとそこにパスを入れて、敵が動いた状況をイメージしておく。短いパスを使って相手に入っていくからこそ、少しずつギャップが生まれてきます。ピッチ上に落ちているお金を探すのではなく、お金を稼ぐ、作り出していくという発想でやっていくのです。普通、ピッチにお金は落ちてないし、強いチームは落とさない。落としたくないチームは絶対、手堅くやります。だから、攻めた後での縦に速いカウンター同士のやりあいになるのだと思います。ボクシングの打ち合いみたいにね。それもゲームメイクやと思うけど、私は好きではありません。
 
――そういったサッカーを目指す中で野洲がこだわっている部分とは?
野洲の場合は未来を予測することを大事にしています。未来っていうのは1秒後とか、2秒後のこと。パスが入った、敵がどう変化してくるかということをイメージして、オフの選手で仕掛けて使う。それが攻撃的な方向を向いていようと360℃使えるわけで、どこでも良いのです。そうしたスタイルはジュニア、ジュニアユースからに大事にしているし、長いスパンが必要となります。野洲の場合、地元の3種チームのセゾンとかYasu Clubの存在が大きいですね。その年代での育成は大事。選手の供給源としてだけじゃなくて、彼らが学んできていることはベースになっています。
 
――野洲のスタイルの中で、特に見て欲しい選手はいますか?
先を読むために必要なポイントは状況把握です。結局は見ることが出来ていないとそれは無理なこと。MF望月嶺臣(名古屋グランパス入団内定)の凄い所はそこだと思います。自分が実際、ニアで直接見てなくても、頭の中で見ているというか、間接視野で見ているというか。極端な話、イメージだけで見ています。何秒前にここにいたから、今はここにいるのかな?とか、この辺に何人いて密集しているから、ここにはスペースあるだろうというイメージがあるから、ボールを止めた瞬間にパスが出せます。でも、そこから探していたら遅い。今はこんなもんだろう、後ろとりあえず、入れておけとか。望月の場合は入ってきた時から、そういった能力に関してはずば抜けていました。そういった能力を育てるためにも、状況の設定を練習や試合で与えることが大事だと思うのです。
 
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■日本人に合ったサッカーが世界に通用するサッカーへと繋がる

――ここまで攻撃面についてお話をお聞きしましたが、守備に関しての考え方は?
まずはボールを不用意に無くさない。それが守りの大前提です。そこが野球と違う所ですかね。攻撃をしながら、守備の事を考えているかどうかで、攻守に明確な切り替えがない。もし奪われたら責任を取る。ちゃんと奪い返しに行ってこいとしています。
 
――失わないと仰いますが、簡単ではないことですよね
そう。失わないってことは難しいです。いや、野洲のサッカーって凄く難しい。来年やれと言われても無理で、これは3年間やっているから出来ることでもあるのです。過去、優勝した時と比べても魅力が違うし、やろうとしている志が違います。優勝した時はMF乾貴士なり楠神順平なり個々の魅力がありました。でも、チームとしてやろうとしているレベルは今回のチームの方がよっぽど高いです。
 
――目指すチームはありますか?
目指すのはバルセロナ越えですね。あんなに落ち着いて出来ないですよ、普通。慌てていたら、ブレてしまう。落ち着いているっていうのは、判断が遅いってことじゃなく、駆け引きがあるってこと。落ち着くためには技術力と自信が必要です。皆、自信がないという選手は、不安があるだけ。捕られたら不安に思うけど、ボールを捕られないということを繰り返したら、捕られないって思えるようになるでしょ?そういう地道な作業が必要だと思います。サイズのない子が野洲には多い。だからこそ、技術や、判断力やポジショニングにこだわるのです。フィジカルで勝負をせず、そこが勝負ポイントにならないようなサッカーが大事です。日本人に合ったサッカー、最終的にはそういう所に結びついていきます。世界を目指していくというか、世界に通用するというのはそういう事ではないでしょうか。
 
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山本佳司//
やまもと・けいじ
1963年滋賀県生まれ 日本体育大学卒業後の1986年にドイツ・ケルン大学へと留学。本場のサッカーに触れ指導者の道を歩み始める。帰国後は水口東高校を経て1996年に野洲高校に就任。当時、無名だった野洲高校を育てあげ、2006年の第84回全国高校サッカー選手権大会では2度目の出場ながらも優勝へと導いた。
 
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取材・文・写真/森田将義

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