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運動能力

ジュニア指導者必見!ジョアン・ミレット氏のGKクリニック(実技編)

2012年8月 9日

キーワード:GKクリニックコーチゴールキーパー練習

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■選手たちの悪いプレー習慣を決して見逃さず、優しくも鋭い眼光で細かくチェック

では、実際にどのように選手に正しい技術をしつけていくのか。実技で最初に教えられたのはキャッチングでした。
 
選手ひとりひとりにジョアンがボールを投げ、キャッチさせます。このとき、
 
●足を肩幅に開く
●ボールを横から挟むようなキャッチをしない
●手を外側に広げてからボールを迎えに行かず、真っすぐスッと手を出す
●受け止めたら、胸に引き寄せてボールを抱く
 
このようなポイントが少しでも欠けていたら、ジョアンは細かくチェックして、しつけを行います。彼の優しくも鋭い眼光は、選手たちの悪いプレー習慣を決して見逃しません。クリニック後、受講した選手に話を聞くと、「こんなに詳しく教えてもらったのは初めて。すごく勉強になった」と目を輝かせていました。
 
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次に行ったのはコーナーキックへの対応。
 
まずはポジショニングについて、「どこに立つのが正しいと思う?」とジョアンから問いかけられます。真ん中、ニアサイド寄り、ファーサイド寄りなど、さまざまな意見を言う選手たち。それに対してジョアンは、
 
「立つべきポジションは、ファーポストから2歩半中央へ進み、そしてゴールラインから1歩出た地点」と緻密に答えました。少しファーポスト寄りになるわけですが、その裏付けも明確でした。
 
「人間の動作では前への2歩と、後ろへの1歩は同じ時間になります。コーナーキックでボールが蹴られてから、ゴールに到達するまでの約2秒間にすべてのコースをカバーするためのポジションがその位置なのです」
 
そして、そのときの体の向きはコーナーに置いたボールとゴール前の様子が両方見られるように、その中間、斜め向きにして立つとのことでした。
 
そしてジョアンは、実際にクロスを蹴ってもらったとき、ボールが飛んで来る前から先読みして動こうとする選手にも注意を与えました。なぜ彼らは落ち着くことができず、先に動きたくなってしまうのか? それはゴールを奪われる恐怖心があるからです。
 
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ジョアンはこのようなメンタルにも働きかけます。コーナーからゴールまで長いひもを張り、それをゴール側のみ固定したまま、コーナーのボール地点をコンパスのように回しながら中央へ持って行きます。すると……ボール地点はセンターサークルのやや外側くらいになりました。ジョアンは言います。
 
「この位置から私がボールを蹴って、決まると思いますか?」
 
ジョアンのねらいは明確でした。選手たちから恐怖心を取り除く。どんなに優れた技術でも、メンタリティーが備わっていなければ、それは開くことないパラシュートのようなもの。ジョアンは実際にひもを使って選手に視覚させることで、ゴールを奪われる恐怖心を克服させようとアプローチしました。
 
 

■こなす練習ではGKはうまくなれない。技術がすべてのベースにある

2時間の実技は、キャッチングの基礎とコーナーキックのポジショニング、この2つの指導のみに費やされました。「2時間もあって、たったそれだけ?」と思うかもしれませんが、今回、ジョアンの通訳を務めた湘南ベルマーレの倉本和昌氏によれば、「これでもジョアンはかなり早く教えているほうです」とのこと。
 
これがジョアンの指導の大きな特徴でした。
 
彼は決して、あわてて先に進もうとはしません。できていないところを放置せず、必ず細かく矯正していきます。しかし、だんだん慣れてくると選手たちは指導された基礎をおろそかにするようになります。「ファーポストから2歩半」と言われたのに、それをいい加減に済ませようとする選手……。ジョアンはせっかちに技術を習得し、先へ進みたがる選手に対して、次のようにしつけを行います。
 
「スペインではこのように言います。墓場へ行くのは、生き急ぐ人だと」
 
ジョアンは終始、時間を使って丁寧に、なぜそれをやらなければならないのかを明確に伝えていました。彼は、「私は選手たちの頭をトレーニングしているのです」と語ります。こなす練習ではGKはうまくなれない。技術がすべてのベースにあるのだと。
 
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ジョアンは自己紹介の中で、次のように自分のことを語っていました。
 
「私は今までにいろいろな経験をしました。その結果、今はこの指導のやり方がいちばん良いのではないかと思っています。私はたくさんの過ちを犯しました。25歳でGKコーチになり、最初は自分のやりたいこと、やりたいメニューを選手にやらせていた。それは選手のためではありませんでした。ある日、“僕はGKになりたいのに、なぜなれないの?どうすればいいの?”と泣きながら訴えてくる子どもに対して、私は何も言えませんでした。私はどうすればボールを止められるのかを選手に伝えられておらず、練習をこなしていたのです。それに気付いたとき、私は3年間コーチを辞め、自問自答の日々を過ごしました」
 
さらにジョアンは続けます。
 
「私の存在は、選手を向上させるためにあります。私自身が満足するためではない。私の仕事は選手をサポートすることです」
 
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ジョアン・ミレット//
経歴
ゲルニカ(スペイン)GKコーチ
バスクコーチングスクールGK戦術、技術指導講師
ビルバオコーチングスクールGK指導、戦術講師
 
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取材・文/清水英斗 写真/サカイク編集部 取材協力/(株)アレナトーレ、湘南ベルマーレ

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