親子でチャレンジ

2015年2月 3日

「うちの子は周りについていけない」は親の思い込みかも!?

コーチの言うことを実践できなかったり、チームメイトの動きについていけない我が子の姿を見ると、“チームの足を引っ張っているんじゃないか”と心配してしまうものです。
 
ところが、そんな心配は必要ないのかもしれません。
 
『2-6-2の法則』というものがあるように、ある集団の中にはうまく順応できる層とそうではない層が大小なりとも発生するものです。この法則自体は、現在では経験則であり、科学的な根拠に乏しいとみなされているようです。それでも、一定以上の人数を指導するうえで、誰もが同じように順応したり上達したりするものではないことを実感される方は多いのではないでしょうか。中には、その集団に対して「ついていけない」と考える子が出てくることもあるのではないかと思います。
 
しかし、そもそも「ついていけない」とはどういう状態を指すのでしょうか? どの集団にも必ず発生するケースですが、風間八宏氏(川崎フロンターレ監督)監修のサッカースクール『トラウムトレーニング』はこうしたケースに対して様々な解決策を提示しています。総監督の内藤清志さんに、お話を伺いました。(取材・文 澤山大輔 協力 トラウムトレーニング)
 
小学生から大学生までの男女が混在するチームを、内藤コーチはどのように指導するのだろう(写真 澤山大輔)
 
 

■変えるべきは『この子はついてこれていない』と考える大人の発想

「まず大前提として、トラウムトレーニングでは全体練習において順応できない子に基準を合わせることはしません。上のレベルにある子たちが、伸びていかなくなるためです。それは集団にとってもっとも危険なことだと考えています。全体練習はあくまで上のレベルに合わせ、皆がその基準に食らいついていく……そうした姿が、あるべきものだと考えています。
 
しかし、そもそも『ついていけない』とは何をもってそう表現するのでしょうか? 
たとえば、相対的に技術レベルの低い子がいたとします。その子が、必ず『自分はついていけていない』と思っているかというと、そうとは限らないでしょう。トラウムトレーニングでは、子どもが『オレが王様だ』と思ってプレーしている限り、『ついていけない』という発想は生まれないと考えています。
 
もちろん練習を見て『楽しくなさそうだな』という子がいたら、練習の合間にキャッチボールをしたり、トラップの練習を促してみたり、声掛けに工夫をしたりはします。しかし、そもそも基準は子どもひとり一人にあるべきです。ひょっとすると、変換すべきは『この子はついてこれていない』と考えるぼくら大人の発想なのかもしれません。
 
重要なのは、子どもが自分のやりたいことをやっているかどうかです。トレーニング中に関して言えば、子どもはコーチの発想についてくるべきなのか? 子どもがやりたいことをやっていれば、誰かに追随する必要はありません。もちろん、それは雑然とした状況を許すこととは違います。彼らが主体的に『いま、やりたいことをやっている』と思える状況をしっかりと作ることができれば良いのではないでしょうか。
 

■普段とちがう立ち位置を経験させるメリット

トラウムトレーニングでは、月曜日には中学生チームに小学生を数人参加させます。これは、普段とはちがう立ち位置を経験させるためです。『怖いもの知らずだから』『技術的にしっかりしているから』と理由はさまざまですが、チームを移動することでそれぞれがちがった視点を持ってほしいのです。たとえば、その子たちが入ったチームの中学生たちは『彼らにやられたらいけない』と思いますし、彼らが抜けた小学生チームは『オレたちがやらなきゃ』と奮起します。
 
仮に小学4年生に、周囲より技術レベルが低い子がいたとします。でも、もしその子が小学1、2年生ばかりのチームに入って最年長になったら、やらざるを得ないでしょう。異なる年代のチームに入ることで、『あれ、オレじつはできるじゃん』と思ったり、逆に『いや、まだまだだな』と気づいたり。そういう、自分の役回りが変わる瞬間を作ることが重要だと思います。
 
そこで、『今までやれるのにやってなかっただけだよ』『実は周囲に助けられていたんだよ』と声掛けをするだけでも、全然違うでしょう。肩肘張らず、指導者が見えているものを伝えてあげれば、子どもは変わっていくと思います」
 
トラウムトレーニングは、通常クラスでは「5歳から18歳までの男女」、中高部クラスでは「中学生~高校生の男女」という分け方をしています。中高部クラスでは、(前述の小学生だけでなく)筑波大サッカー部の選手も練習参加をすることがあります。これは、「いつもいろいろなレベルを見ることができる環境づくり」という風間氏の思想によるものです。
 
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