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楽しむからうまくいく!ポジティブ心理学で良いプレーを引き出す

チャレンジとスキルのレベルが噛み合ったとき、子どもは上達する!

2014年3月25日

キーワード:コントロール

もっとサッカーがうまくなりたい! クラブで楽しくプレーしたい! お父さんお母さんたちも、子どもたちと一緒にもっとサッカーを楽しみたい。そんな願いを叶えるポジティブ心理学についてお届けしています。ポジティブ心理学が体系的に整理されたのは1998年。成立年代が比較的新しいこの分野では、現代人の思考や現代社会の持つ問題などについても研究が進んでいます。
 
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試合中
 
 

■集中力を高めるスイートスポット “フロー”とは?

「従来の心理学は“心に傷を負った人、問題を抱えている人”のためのものという意味合いが強かったのに対し、ポジティブ心理学は日常生活をさらに良くしていくためにはどうしたらいいかという観点で構成されます」
 
こう語るのは、この連載の講師としてご登場いただいたポジティブ心理学を日本で正しく広める活動を展開されている青木みちるさんです。前回はポジティブ心理学の概要と集中力についてのさわり部分をご紹介しましたが、今回からはポジティブ心理学の理論に基づいた、サッカーに役立つテクニックを実践していきたいと思います。
 
夢中になっている。集中している。入り込んでいる。お子さんのサッカーを見ていて、声をかけるのもためらわれるくらい集中してプレーしている姿を見たことはありませんか?
 
サッカーにかぎらず、一流のアスリートに起きる極限まで集中力が高まった状態、身体の活性を伴う「ゾーン」と呼ばれる現象があります。何時間もやっていたはずなのに、本人は時間の概念すら忘れて夢中でプレーしていた。自分でも信じられないようなパフォーマンスが出せた。「ゾーンに入った」なんて言い方もしますよね。じつは超一流アスリートにしか入れないと思われているゾーンと、子どもたちの“楽しい”とか“夢中“という状態は学術的に見てもかなり近いものだと言います。
 
「心理学ではゾーンのことをフローと呼びます。ミハイ・チクセントミハイというアメリカの心理学者が提唱した理論なのですが、この人物もポジティブ心理学の研究者で、ゾーンやピークエクスペリエンスといった高パフォーマンスが発揮できる状態を“フロー”と呼び、そのフローに入るためにはいくつかの条件があると言っています」
 

■「集中」と「上達」が生まれるのはチャレンジとスキルのレベルが噛み合ったときだけ

チクセントミハイ博士のいうフローは下図の一定条件が整ったラインの中の状態を指すようです。
表の縦軸はチャレンジのレベルを示し、横軸はスキルのレベルを示します。
 
フロー
 
子どものサッカーを例に考えてみましょう。A君は試合出場も経験し、最近ではボールコントロールも身に付き、サッカーが楽しくなってきていました。次の課題は流れの中での技術の習得です。
いま練習しているのはスムーズなトラップの習得です。転がってきたボールを止めるボールストップの技術はすでに身につけています。A君にとってボールストップの練習はすでに物足りないものになりました。フローの図表で言えばスキルに対してチャレンジが低すぎる状態です。
 
そこで実戦同様に、ボールストップの際にしっかりと顔を上げて周囲を見渡す動きを加えました。はじめのうちは戸惑いましたが、あと少しでもっとスムーズなトラップができそうになったA君は次第にこの練習に熱中していきました。
 
ほんの些細なことですが、W杯や五輪などの大舞台でなくても、私たちの身近にフローはあるのです。よく言われる「100%の練習しか101%の実力を養えない」というトレーニングのセオリーもありますが、精神面でも簡単で慣れている練習では退屈だと感じて集中できず、逆に難しすぎることに挑戦しても意欲を持って取り組むのが難しくなるのです。
 
「基本は大切だから集中してやれ!」
「これができたら明日の試合勝てるんだから真剣にやれ!」
 
基本練習の大切さや反復練習の効果は別のところにあるとして、コーチが何気なく言ってしまう言葉通りに選手が集中(フロー状態に入る)ことはどうやら難しそうです。
 
 

■ポジティブ心理学ではポジティブになる方法、プロセスを大切にする

このフローの図表は主にチャレンジと技術に特化していますが、これ以外の練習に効果がないのかというとそういうわけではありません。
 
「何度も言いますが、ポジティブ心理学の指すポジティブは、ひたすら前向きに! という日本で広く知られているポジティブシンキングではなく、どうしたら前向きに考えられるか? というプロセスを大切にするものです」
 
青木さんは、嫌なことややりたくないことを無理に飛躍した行動や方法を使ってポジティブに見せかけることは「ポジティブ心理学の定義から外れる」と言います。
 
「技術とチャレンジのバランスが取れていない練習でも、意味づけさえできていればフロー効果に近い効果は得られます。そのために重要なのが『目標が見えていること』です」
 
苦労を伴わない成功はないといいますが、幸せや成功のためなら、苦しいけれど続けられることがあります。ポジティブ心理学では、目標のために多少チャレンジ度が高くてもがんばってみようという状態は、明確な目標設定によって生み出されると考えます。青木さんはこのことを「適切な苦労」と表現しますが、子どもたちに必要なのはできるだけ多くフロー状態に入れる練習を提供してあげて、さらに個人の目標や練習への意味を動機付けてあげることで、多少嫌なことがあっても集中力を切らさずに続けられる状態を作り出してあげることです。
 
こうしたアプローチをするためにはサッカークラブのコーチや監督のほかに、日常的にお子さんと接するお父さんお母さんの協力が不可欠です。
 
次回は、お父さん、お母さんのための子どもたちが大好きなサッカーを楽しく、ポジティブに捉えて上達していけるサポートの方法についてお話しいただきます。
 
 
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青木みちるさん
青木みちる
国際基督教大学教養学部国際関係学科
コミュニケーション学・心理学専攻
マーティン・セリグマンによって提唱されたポジティブ心理学を研究、日本に正しく紹介、普及させることを使命に活動する。PwCコンサルティング株式会社(現日本IBM)人事業務の改善、システム導入のコンサルタント株式会社エル・ティー・エスでは複数部門の責任者を経験し、現在はマーケティング部 部長 兼 新規事業開発の責任者
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取材・文/大塚一樹 写真/新井賢一

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