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保護者と指導者 より良い関係作りを目指して

保護者も指導者もサッカーファミリー! 相互理解を深める方法

2013年10月28日

キーワード:コミュニケーション指導

この連載では4回にわたって「保護者と指導者」のより良い付き合い方について考えてきました。保護者、指導者、それぞれが直面している身近な具体例を取り上げてきましたが、最終的に行き着くのは、やはり両者の相互理解。主役はあくまでも子どもたちという原点に立ち返って、保護者も指導者も同じ「サッカーファミリー」として子どもとサッカーに向き合うことで、その関係性は大きく変わるのではないでしょうか?
 
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連載の最終回は、あるクラブの取り組みをご紹介します。保護者が本当に「サッカーを理解する」瞬間とは?
 
 

■お母さんのためのレディースサッカークリニック開催!

ある平日の午前中。河川敷でサッカークリニックが開かれています。集まっているのは、思い思いのウェアに身を包んだ女性たち。一体ここで何が始まるのでしょう?
 
「では、ボールを蹴ってみましょうか」
 ウォーミングアップを終えると、コーチと思しき男性が声をかけます。
 
 女性たちは、川崎市で活動するクラブチームに通うお子さんを持つお母さんたち。子どもたちは日々サッカーに打ち込んでいるものの、お母さんたちはサッカー未経験。「サッカーを理解するにはまず自分たちがボールを蹴ってみたらいいのでは?」そんな声が挙がり、自然発生的に開かれることになったお母さんたちの『レディースサッカークリニック』。このクラブの名前はその名も“エンジョイ”スポーツクラブです。
 
「お母さんから自分たちもやってみたい! という声があって始めたんですよ」
 こう話してくれたのは指導に当たる須藤純矢コーチ。
 
「クラブの名前がエンジョイって言うくらいですからお母さんたちにもサッカーを楽しんでもらおうと思って」
 夏の間はお休みでしたが、エンジョイスポーツクラブでは週一回、お母さんたちがこの河川敷でサッカーを体感しています。須藤コーチの傍らで実技指導をしているのは刀野真一コーチ。ともに20代の若き指導者です。
 
 教えてもらったインサイドキックで、ゴールに向かって黙々とボールを蹴るお母さんたち。笑い声は絶えませんが、その眼差しは真剣そのものです。
 
「子どもたちに馬鹿にされないようにね」
 あるお母さんが参加の動機を話してくれました。
 
「子どもとのコミュニケーションのほとんどがサッカーなんです。というか、ほぼサッカーの話しかしません。なので、サッカーをやる機会があればやってみたいと思っていて」
 いざボールを蹴ってみると、思っていたようにボールは飛んでくれません。数メートル先のゴールにボールを入れるのがこんなに難しいなんて。
 
「やってみると、難しいですね。もう子どもたちに偉そうなことは言えません……」
 
 サッカーを外から見ていたのでは気がつかない、難しさ、楽しさ。お母さんたちは、ピッチレベルでサッカーを体感します。
 
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■お母さんがサッカーをすると子どもが喜ぶ!?

「ちょっとリフティング教えてもらっていいですか?」
 給水タイムの最中に、あるお母さんがコーチに声をかけます。そこからはコーチの周りに輪ができ、即興のリフティング講座が始まります。
 
「面を作ってまっすぐボールを上げます」
 いとも簡単にボールを空中に弾ませるコーチを見てお母さんたちは感嘆の声を挙げます。
 
「ちょっと、子どもに負けてられない」
 明日からはリフティングの回数を競う親子が続出しそうな勢い。この日の『レディースサッカークリニック』に集まったお母さんは学年もバラバラな数名。仕事に学校行事、家事とお母さんたちはとても忙しいため、一堂に会するのは至難の業ですが、時間をやりくりしてでも、このクリニックに参加してくれるそうです。
 
「ゴール! やったぁ」
 クリニックの締めくくりはコーチ二人とのトレーニングマッチ。どのお母さんも子どもたちに自慢するために?一生懸命ゴールを目指します。
 
 不思議なことに、お母さんがサッカーをすると、一番喜ぶのが子どもたちだそうです。
「サッカーの話ができるのがうれしいみたいです」
 
 一心不乱にボールを追いかけるお母さんたちは、よく見る「サッカーが楽しくてたまらない」サッカーキッズと同じ表情をしていました。
 
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■サッカーを理解すること 保護者の気持ちを理解すること

「別にお母さんチームを作ろうとかそう言うことではないんです。サッカーをわかってもらえる場ができればいいかなと思って」
 
 二人のコーチはボランティアでこのクリニックを開催、チームのお母さんに限らずボールを蹴りたい人はウェルカムという姿勢。サッカーを通じた子どもたちとお母さんのコミュニケーションが促進されるのは言うまでもありませんが、コーチと保護者も、子どもを介した関係から、サッカーを通じた関係へと変化していき、より信頼が深まります。
 
「お父さんたちともボールを蹴ります。飲みに行ったりもしますよ。お母さんの方がサッカーに触れたことがないと思うので、こういう時間は大切ですね」
 須藤コーチは今後も『レディースサッカークリニック』を続けていきたいといいます。
 
 保護者と指導者のより良い関係作りには、相互理解、コミュニケーションが不可欠だと繰り返しお伝えしてきました。連載でご紹介した残念なエピソードのなかには、このコミュニケーションがうまく行っていれば防げること、起きなかったことも沢山あります。“保護者”と“指導者”の垣根を越えて、サッカーを通じて、ひとつのボールを通じて関わり合いを持とうというエンジョイスポーツクラブの取り組みは、子どもたちを巡る大人たちの「より良い関係性」の大きなヒントになるのではないでしょうか?
 
 保護者がサッカーを理解することとは、単にサッカーの知識を増やして語れるようになることではなく、ボールを蹴る楽しさ、子どもたちが感じているサッカーの楽しさを理解することなのかもしれません。またコーチが保護者の気持ちを理解することとは、保護者と指導者という線引きを一度取り払い、サッカーファミリー、サッカーの仲間として迎え入れることからはじまるのかもしれません。
 
 みなさんのお子さんが、数多くあるスポーツの中から選んだサッカー。まずはボールを蹴ってみてはいかがでしょう?
 
子どもたちにとっては保護者も指導者もなくてはならない、かけがえのない存在です。周囲の大人たち次第で子どもたちの未来は大きく変わっていきます。相互理解のためにお互いに何ができるかを考えて、一歩踏み出すこと。「保護者と指導者」のより良い付き合い方については、今後も様々な取り組みをご紹介していきたいと思います。
 
 
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大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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取材・文・写真/大塚一樹

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