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勉強と進路

「Jリーグ版[よのなか]科」から知る、子どもを伸ばす接し方

2013年5月29日

キーワード:コミュニケーション

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「Jリーグ版[よのなか]科」の目的は、プロサッカー選手を目指す子どもたちが自分たちの将来像を具体的に描くための支援ですが、サッカー以外の日常生活でもいい影響が出ているとのこと。例えば、ある子の親切な行いに対して「どこでそういうことを教わったの?」と周囲の人が聞くと、「僕はアカデミー在籍です」と誇りを持ってあいさつしたなどのエピソードもあるそうです。これは「自分の言動が所属するクラブの印象を良くも悪くもするのだ」と、自覚が芽生えたからだといいます。
 
また自分で考える、違う考えの人ともコミュニケーションするなどに興味を持ち始める様子が、プログラムの過程や保護者の方のアンケートなどから伺えるそうです。主に中学2年生が対象ですが、大人も積極的な参加を求められるプログラムですから、参加者に「どのような考え、態度が必要か」といった心構えは、これから子どもとどう接するかの参考になるはず。プログラムの特色や子どもたちの成長などをもとに、大人の接し方を考えたいと思います。
 
 
<<子どもが夢を実現する力を養う、「Jリーグ版[よのなか]科」に注目!
 
 

■社会やキャリアを、子どもたち自身で考える

プロのトップ選手育成を目指すJリーグアカデミーで、主に中学2年生を対象に実施されている「Jリーグ版[よのなか]科」。サッカーを題材にキャリア教育や人間教育を行うプログラムは全5回で、以下のように構成されています。
 
授業1.Jリーグをとりまく“お金”から仕組みを考える(ゲストティーチャー有り)
授業2.Jリーグがめざすものを考える
授業3.Jリーグをとりまく“職業”を考える
授業4.職業と「意志」「役割」「能力」の関係を考える(ゲストティーチャー有り)
授業5.自分のキャリアイメージプランを考える
 
どれも身近なサッカーを題材に、一方的な講義ではなく、子どもたちが自分で考え、それぞれ“納得解”を出すことが目的。ロールプレイングやシミュレーションを多く取り入れ、「Jクラブの社長になったつもりで収入を増やす作戦を考える」など、普段は意識しないお金や経営といった視点でも社会の仕組みを考えていきます。後半にはJリーグをとりまくさまざまな職業、自分のキャリアイメージなど、将来を具体的にイメージできる機会が設けられています。こうしたやり方は[よのなか]科の学習アプローチに沿ったもので、子どもたちを積極的に学びに参加させ、学びへの意義や関心を促していきます。
 
「子どもたち同士の話し合いや書く内容の、質や量がどんどん成長していく手応えを感じています。コミュニケーション力においても、自分の意志をはっきり伝えると同時に、周囲の考えも受け入れる姿勢が養われるようです」。(田窪範子さん/Jリーグ企画部人材育成・キャリアデザインチーム)
 
参加した保護者からは、「いつもサッカーに熱中しているので心配していた。アカデミーで職業やお金のことを考える機会を作ってもらえるのは有り難い」といった感想も多く寄せられています。
 
「サッカーの練習に没頭するといっても、1日のうち3時間程度ではないでしょうか。残り21時間をどう過ごすか、どう生きるかを改めて意識することは、将来のためにとても重要だと思います。大好きなサッカーを題材にしたこのような取り組みから、やがて『体のことを知る解剖学が面白そうだ』『バイオメカニクスなど工学分野を学びたい』と、幅広い興味を持つ子が出てくるかもしれません。このプログラムで自分とサッカーとの関わり方を考え、夢を実現する強い意志を大切にするきっかけにしてほしいと思っています」。(吉田国夫さん/Jリーグ企画部人材育成・キャリアデザインチームチーフ)
 
クラブによっては子どもたちより保護者の参加数が多い場合もあるとか。
 
「このプログラムはプロや世界で活躍する選手を育てる目的ですが、それを取り巻く職業もいろいろあることを理解していただくと、保護者の皆さんも安心されるようですね」。
 
サッカーを通して社会の仕組みや将来について話し合い、考えを深めるこのプログラムは、自分の子どもとサッカーの関係を考えるヒントにもなるのでしょう。
 
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■ゲストや進行役の学ぶ、大人の接し方

このプログラムに正解はなく、「何度も失敗を許す経験」の中で、積極的に発言し、自由な発想を育む環境を作り出しています。また子どもたちに刺激を与えるゲストティーチャーの参加も特徴的です。例えば第1回の「“お金”から仕組みを考える」では、社長の立場になって経営のシミュレーションをした後、所属するJクラブの社長がゲストティーチャーとして登場。実際の収支や経営に対する考え方などを話してもらい、現場の視点から情報提供する機会を設けています。
 
さらに授業3「Jリーグを取り巻く“職業”を考える」で職業マップを使ってさまざまな職業を説明。授業4の「職業と『意志』『役割』『能力』の関係を考える」では、それぞれの職業に必要な『意志』『役割』『能力』があることを紹介していきます。その具体例として各クラブでJリーグに携わる職業人をゲストに招き、自らの職業に関する『意志』『役割』『能力』について語ってもらう内容が含まれます。
 
こうしたゲストティーチャーだけでなく、子どもにとって身近な大人がプログラムに参加することも重要なポイントです。中でもプログラムの進行役となるファシリテーターは、特別な養成講座を受けた人材が担当するのです。
 
「ファシリテーター役の方にお願いしているのは、このプログラムが持つ『自分たちの夢を具体的に強い気持ちで描く』という目的を共有して、子どもたちにもしっかりと伝えていただくこと。さらに本人も楽しんで参加することで、非常にいい授業が展開されるという点です」(田窪さん/前出)。
 
「残念ながら全5回のプログラムでは影響も限定的です。練習や試合でいつも向き合っているコーチが『個人の成長は後回し。勝つことがすべて』と考えては、子どもたちは戸惑い、教育の成果もうまく定着しません。ですから指導陣にも『未来のプロサッカー選手、世界で活躍する選手を育てる』と高い意識を持って、サッカーの技術だけでなく実生活の様々な場面で直面する課題に、自ら考え対応する力を育むことも大切だと理解してほしいと考えています。そのためコーチ向けのプログラムもトライアルで実施しています」(吉田さん/前出)。
 
ファシリテーターやコーチに求められる考え方や態度の中でも、「夢を実現しようとする強い意志を持つこと」「子どもと目標を共有して、自分も楽みながら接すること」「さまざまな職業(立場)について、求められる『意志』『役割』『能力』があること」などは保護者の接し方と共通する部分は多いでしょう。こうした例は、子どもとの接し方を見直す機会にもなるのではないでしょうか。
 
 
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取材・文/山辺孝能 写真提供/FC東京

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