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こころ

綾羽高校のボトムアップ指導から学ぶ、『積極性』の引き出し方

2014年2月25日

キーワード:指導

前回はボトムアップ指導に必要な3つの軸と共に、子どもを選手として、人として育てるために必要な指導者や親の心構えを紹介しました。後編の今回は、綾羽がボトムアップ指導を取り入れた事で効果が表れた、子育てに大事な“積極性”の引き出し方を、実例を交えて紹介します。
 
<<子育ての参考にもなる!? ボトムアップ指導の綾羽高校から学ぶ
 
練習中
 

■“話せる”ようになると、“聞ける”ようになる

 ボトムアップ指導を始めた当初の選手ミーティングでは、キャプテンが話すばかりで、他の選手が話す機会は少なく、「キャプテンが監督の代わりを務めているだけ」(岸本監督)の状態が続いていました。
 
「キャプテン、副キャプテンは自分に最終決定権があるので、本当にそれでいいのか?など考える時間が増えます。失敗を誰かのせいに出来ないので、責任感が増し、より逞しくなる」と岸本監督は話すように、肩書を貰った者は成長しますが、彼らに任せっきりでは他の選手が成長出来ません。彼らの状況を見た岸本監督は、「自分たちの“たち”とは何だろう?キャプテンだけじゃないし、試合に出ている選手も話さないといけないのではない?」と問いかけました。
 
 この一言がきっかけで、まずは話せる選手たちから意見が出始め、ミーティングの雰囲気が出てくると、口数の少ない選手からも意見が出始めました。こうしたやり取りが出来るのも、ベースに前編で紹介した挨拶の効果があるからです。
 
 選手のみでのミーティングが、軌道が乗り始めると、次に大切なのは内容です。単に話をしているだけでは意味がありません。試合のハーフタイムはわずか10分。実戦を想定すると、それぞれの意見をどう纏めるか、出た意見が今の議題に沿ったものなのかなど、精度の向上が必要です。
 
 前編で紹介した返事の徹底で身につけた判断力が重要となるだけでなく、意見の良し悪しを判断するために、「話すだけから、人の話をよく聴くようになる」と岸本監督は話します。
 
 ボトムアップ指導には、重要な対話力が身につく効果がありました。
 
練習中
 

■自分の意見を話せるようにするコツは“怒らない”こと

 選手主体のミーティングでは、選手たちからは間違った意見が出るかもしれません。ただ、岸本監督が「失敗するのは悪ではありません。発言でダメと言われるのがショックで、怒られたくない、恥ずかしい思いをしたくないと授業でも発言しない子どもが増えるのだと思います。でも、失敗しても大人が何も言われなければ、“またやってみてもいいかな”という気持ちが生まれます。ただ、ずっと何も言わないままでは楽な方向に流れてしまうので、たまに『それは違うよ』などと軌道修正してあげる事が大事」と説明するように、常に日頃から子どもを見守り、適切なタイミングで軌道修正してあげる事が大事です。
 
 軌道修正のポイントは怒るのではなく、「これで本当に日本一になれるのかな?」などと問いかけを含める事。怒る事のデメリットについて、岸本監督は「怒ってしまうと、子どもたちは“怒られたくない”気持ちを最優先に、物事を進めるようになる。サッカーでもそうですが、勝ちたいとか、嬉しいとかではなく、怒られたくないというが一番になると、何かに取り組む際に必ずブレーキになって、チャレンジしなくなる」と話します。怒られたくないから、何かをするという発想は、怒られないと何もしなくなる可能性にも繋がっていきます。
 

■過干渉は禁物。子どもたちに“見ているよ”と伝える事が大事

 これまで紹介した取り組みは、実生活に置き換えて、実践出来るものですが、「高校生の親御さんを見ていて、人間形成には保護者の影響力が大きい」と岸本監督が話すように、保護者だからこそ気をつけないといけない、保護者だからこそ出来る取り組みも多く存在します。
 
 そして、岸本監督は「僕らはケーキで言えばクリームの部分。スポンジの部分は今まで15年間、育ってきた環境だと思います。スポンジの味を変える作業は簡単に変える事が出来ません」と続けます。
 
 子どもたちは素直で楽しい事、やりたい事は熱中します。保護者はサッカーや勉強を楽しめる環境や、状況を提示してあげる事が大事です。
 
練習中
 

■もう一つ大事なのは過干渉にならない事

「無関心でもダメですが、関わりすぎると子どもたちは“分かっていないのに口を挟まないでほしい”と思うようになり、近づきたい親から離れていく。心の距離は離れていくのに、優しい親にどこか甘えてしまい、自転車で行ける距離でも送り迎えを頼むなど、大人になりきれなくなるように思います。そして、子どもを思うあまり、『こうした方がいい』などと口を挟むと、子どもたちの考える力を奪う結果になると僕は考えています」
 
 岸本監督がそう話すように、“見ているよ”という姿勢を子どもたちに立ち振る舞いで伝える事が重要です。
 
「言えば勝てる、『監督のおかげで勝てました』という言葉を選手たちから貰っても僕にとっては美談でありません。それよりも、高校サッカーを経験して、10年後、15年後彼らがどうなっているかの方が大事」
 
岸本監督がそう話すように、ボトムアップ指導はサッカーが上手くなるだけでなく、子どもたちを大人にする取り組みでもあります。ご家庭でも取り組み、考え方だと思いますので、子育ての参考にしてみてはいかがでしょうか?
 
 
<<子育ての参考にもなる!? ボトムアップ指導の綾羽高校から学ぶ
 
 
綾羽高校
全日制・昼間定時制・通信制の3課程をもち、学業とともにインターンシップや実習、部活動などを重視する実学に力を入れる。サッカー部は1997年に創部。に指導者としてドイツ・国立ケルン体育大学に留学、帰国後はガンバ大阪のジュニア・ジュニアユースの指導を行っていた岸本幸二監督が2000年に就任。着々とチーム力をつけ、昨年は初めて全国高校サッカー選手権に出場。新チームで挑んだ県新人戦でも初優勝を果たした。
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取材・文・写真/森田将義

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