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こころ

身体が小さいのは本当に不利?高校生Jリーガーからサッカーの身長について考える

2012年10月25日

キーワード:育成

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「大切なのは身体のサイズじゃない、ハートのサイズだ」
 
 これは身長2mを超す大男たちがコート狭しと動き回るNBAの、小さなスター選手、アレン・アイバーソンの言葉です。背が伸びるタイミングや身体の成長には個人差があります。どこまで背が伸びるのか、身体が小さいとサッカーに不利じゃないのか。身長の問題で悩んでいる子どもたち、親御さんも多いことでしょう。サカイクのアンケート、身体に関する心配事でも「背が伸びない」は上位に来る回答でした。身長を伸ばす方法を知りたいという声も多いと思いますが、今回はサッカーをするには身体が大きい方が良いのか? それを埋めるものはないのか? ということについて考えてみたいと思います。
 
 

■166㎝の高校3年生がJ2でハットトリック達成!

 先週行われたJ2第39節、東京ヴェルディ対栃木SC戦でJリーグの最年少記録が更新されました。18歳、高校3年生にしてハットトリックを達成し、松波正信(現・ガンバ大阪監督)の記録を抜いたのは中島翔哉選手。166㎝の新鋭です。中島選手の持ち味は抜群のボール・コントロールと切れ味鋭いドリブル。ヴェルディ・ジュニア時代から注目される存在でした。彼がヴェルディ・ジュニアでプレーしていた小学生時代、実は取材先で短い言葉を交わしたことがあります。
 
 

■プロ対小学生 中島少年の日常

 場所はよみうりランド内にあるヴェルディ・グラウンド。その日はヴェルディ・ジュニアユースのセレクションで、ジュニアの練習はお休みでした。ピッチの端にヴェルディのジャージを着た小柄な少年がいました。セレクションを受けに来たわけでも、セレクションの手伝いをしているわけでもないその少年はずっとボールを傍らに置いて、ドリブルをしながらセレクションの様子を見ていました。
 
 セレクションが終わり、日が暮れた後も彼はずっとグラウンドでボールを蹴っています。ナイターの照明がつき、隣のピッチではトップチームの練習がはじまりそうな雰囲気です。すると彼は早めに出てきた当時ヴェルディに在籍していた弦巻健人選手と1対1を始めたのです。体格差は歴然、しかも弦巻選手はユース時代からテクニックに定評のある選手です。なかなかボールを奪えませんが、真剣に、懸命にそして執拗と思えるくらいにボールを追い回しています。
 
「弦巻君とは仲が良いの?」
 1対1を終えた彼に挨拶をして、少し話しかけてみました。
「お兄ちゃん同士が仲良かったから」
 少しはにかんだ様子で話す彼。
「いつも遊んでもらっています」
 
 彼のいう遊びはあの1対1、端から見たらとても遊びには見えませんが、周囲の反応からも、確かにいつもの光景ではありそうです。ジュニアの選手とユースの選手が気軽に触れ合えるヴェルディの環境、伝統、そしてそれ以上に、ジュニアとしても小柄なその少年が気になりました。
 
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■身長が伸びても伸びなくてもやることは同じ

 その後、彼がヴェルディ・ジュニアの10番、中島翔哉選手だということを知りました。それから彼に注目していたのですが、ジュニアユース、ユースと活躍を続けましたが、やはり小柄なままで、それぞれの年代の当初は体格面で苦労している様子が見て取れました。現在の身長は166㎝。Jリーガーとしても小柄な部類ですが、見事にトップ昇格を果たして、残留争いをするチームを救う得点を決めています。
 
 中島選手に関しては「誰よりも早く練習に来て、最後まで帰らない」練習の虫であると誰もが口を揃えます。取材先でたまたま見た光景が中島選手の日常で、彼にとっては当たり前のことだったわけです。
 
 身長は食生活の改善や運動による刺激で伸びるともいわれていますが、遺伝的な要素も否定できません。サッカーにおいても、背が高いことはアドバンテージのひとつになり得ますが、それがすべてではありません。Jクラブもジュニアやジュニアユース、ユースの選手たちの身体の成長曲線を考慮して選考しますが(親の身長、足の大きさなどを聞く例はあるようです)、単純な身体の大きさを求めてはいません。
 
「身長が伸びる選手も、伸びない選手もやることは同じ。いつ背が伸びても良いように基礎となるテクニックを鍛えるべきだし、もし背が伸びなくてもそのテクニックが武器になる」
 
 あるチームの育成普及担当者から聞いた言葉です。
 努力する強いハートと優れたボールコントロール、素早い判断ができるサッカー頭・・・・・・。世界に目を向ければ、シャビにイニエスタ、メッシなど170㎝に満たない(公称は170㎝でも)選手たちが自分たちの武器を駆使して活躍しています。身長を伸ばす努力を探ることは決して無駄にはなりませんが、身長が伸びても伸びなくても獲得できる武器を磨くこと。それこそが“いますべきこと”なのかもしれません。
 
 次回はマラドーナ以降、小さくても決してひ弱ではないテクニシャンを生み出し続けるアルゼンチンの育成、「本当の強さ」とは何かについて考えてみたいと思います。
 
 
続き(アルゼンチンの育成)を読む>>
 
 
大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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文/大塚一樹 写真/サカイク編集部(ダノンネーションズカップ2012より)

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