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こころ

サッカーのチームにおける"本当のエース"とは?

2012年1月12日

キーワード:メンタル悩み育成

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 先日、『エースと呼ばれるゆえの重圧に苦しみ、気持ちをコントロールできない』という小学5年生の親御さんから相談が届きました。人生の中でいつか必ず経験するプレッシャー、期待との闘いにどのように立ち向かっていったらいいのか?『大西貴の親子でサッカーを楽しもう!』の連載でもおなじみの大西貴さんに、アドバイスをいただきました。
 
<<ご相談内容 ※原文のまま掲載しています>>
 息子は小学5年生の男の子で、所属している地元の少年団チームでは、いわゆる「エース」です。少年団の他にもいくつかサッカースクールなどにも通っています。目標はもちろんサッカー選手。日本代表になって海外でプレーするのを夢に日々頑張っています。
 
 そんな彼ですが、今、壁にぶつかっています。小さい頃から、かなりの負けず嫌いで、自分がゴールをはずすと、「くっそー!!」と地面を蹴ったり、試合に負けると人目をはばからず、いつも大号泣です。私としては、負けず嫌いなところ、向上心があるところは、きっとスポーツにはいい影響を与えてくれる部分でもあると思うし、彼の個性として伸ばしてやりたいなと思うのですが、苦しい試合や、試合中思い通りにいかないと、つい感情があらわになって、チームメイトにも容赦ない言葉が出てくることも少なくありません。
 
 そんな姿に、コーチやチームの子供たちも、そして私自身も、彼のせいで・・・みたいな雰囲気が流れてしまっているのを感じ、最近辛くなってきてしまいました。逆に言えば、彼が自分の感情をコントロールできるようになれば、チームのみんなが前を向いて元気になって、チームとしていい結果につながっていくのかもしれません。
 
 サッカーは、チームスポーツです。いろんなメンバーがいて、みんなの長所短所をみんなでカバーしあいながら、気持ちがひとつになっていって、それが勝利に結びついて、喜びを感じて、絆ができて、人としても成長していく・・のがサッカーの醍醐味だと思っています。
 
 彼には、技術もさることながら、今は精神的な強さの成長が求められていると思います。「自分が何とかしなければー!!」という思いはあっても、その「何か」がわからなくて、悩んでいるようです。そんな彼が自分で、今回の壁を乗り越えるきっかけになればと思い、相談させていただきました。本当のエースは、苦しい時にこそ、みんなの前に立って、叱咤激励できる人だと思います。高校時代、キャプテンをされていた大西さん、「本当のエース」について、彼にアドバイスいただけたらうれしいです。
 
 

■本当のエースは、みんなに認められる存在

――「エースのプレッシャー」、高校時代はキャプテンだった大西さんもそんな経験はあったとは思いますが・・・。
 
大西「僕自身、彼と同じ小学校5年生のことはかなり幼稚でした。ですから、この時期における感情のコントロールは難しいところだとは思います。でも、トレーニングなどで技術を上げるのはコーチや監督の仕事ですが、感情のコントロールの大切さを彼に気付かせてあげるのは、親御さんの仕事でもあるでしょうね。
 
 そして彼がなぜ「エース」なのか。実際、「エース」の称号は本人でなく周りが決めることなんです。たとえば周りを納得させるだけのトレーニングが彼にできているのか?ないしはみんなより早く練習場に来てボールを蹴っているのか?ということですよね。本当のエースであれば、そうしていくことで仲間ができ、仲間が彼を成長させてくれるはずです。
 
 そこでもし、しっかりと自分で目標を持って彼が練習や試合に取り組んだ上で、感情が出てくるのであれば、1つのきっかけが彼には必要かもしれないですね。それは1つのゴールかもしれませんし、ひょっとしたらヘトヘトになるまで前からボールを追っかけることかもしれません。その姿勢を見れば、周りも本当のエースとして認めてくれるでしょう。
 
 僕も小中学生時代は時に感情的になる中でも仲間が助けてくれましたし、南宇和高校でキャプテンをして、自分の仲間を必要な存在と思えたことで、仲間にも自分の弱みを見せることができるようになったんです。その意味でこの彼は仲間に弱みを見せることができれば、自分自身も変わってくるのはないかと思いますよ」
 
――「弱みをみせても支えてもらえるような取り組みをしなさい」ということですね。
 
大西「そうですね。また、彼が試合で点を取れず人目をはばからず泣くことにしても、そのときに周りの選手たちがどんな行動を起こしているかを見てあげればいいと思います。
 
 点を取るエースという存在はサッカーを見る上ではわかりやすいですけど、本当のエースは点を取るだけがエースじゃない。日本代表キャプテンのMF長谷部誠(ドイツ・ヴォルフスブルグ所属)にしても彼自身は試合でそんなに点を取る選手ではない。でも、僕は日本代表のエースだと思っていますし、皆さんもエースと認めている。周りから認められる選手がエースなんです。長谷部選手は若い選手に叱咤激励をする中でも、周りに対して気遣いをできる人間です。
 
 ですから、彼についても周りに対して気遣いをできるようになれば、もっと成長できる。そのきっかけが彼には必要ですね」
 
――彼自身もその「きっかけ」をつかむ作業が必要ですね。
 
大西「それもそうですし、きっかけをつかむ作業を監督やコーチが考えるべきでしょうね。中学生や高校生でいい選手になるために、この年代では周りに気を使える下地を兼ね備えていた方がいいとは思います。
 
 チームを引っ張るきっかけをつかみたいのであれば、彼に長谷部選手についての本を読んでもらうのもいいでしょう。サッカーだけでなく、違うアプローチからも成長のきっかけを与えて、彼自身に気付かせるサポートをしてあげることも必要ですね」
 

■「なぜ」を解きほぐして、成長のきっかけを与えてあげよう! 

――それともう1つ、エースと呼ばれるためには自分の絶対的な武器を持つことも必要ではないですか?単にゴールを取ることではなく、飛び出しや、1対1の強さなど、「彼にこれを任せたら必ずやってくれる」と思わせる部分があれば周囲にエースと認めてもらえるきっかけになると思いますが。
 
大西「何をもって『エース』といわれるかと考えれば、チームの中でできることはいくらでもあるんですよ。南宇和高校時代の僕自身であればDFラインでチームを統率してゲームを落ち着かせる役割については、石橋智之監督から信頼も頂いていました。となると、そこで普段から自分ができることをピッチ内だけでなく、ピッチ外でも考えるようになる。『自分でやらなきゃいけない』というより、『自分でやる』ようになりましたね。
 
 そうなると自分が相談できる仲間ができて『ああしよう、こうしよう』という会話にもなる。コミュニケーション能力も高校時代に磨くことができたんです」
 
――そう話していくと「エース」の定義がまだ彼にはわかっていないかもしれませんね。
 
大西「でも、この質問を読むと親御さんの側は子どもの状況をよく把握されているようですから、まずは子どもさんにエースとして認められる作業をするきっかけをつかむための会話をしていくことからはじめればいいと思います」
 
――これを機会に、親御さんも原点に立ち返って「子どもさんの強み、よさ」について考える時間にできればいいですね。
 
大西「そうですね。そこで悩みが解決しないようであれば、親御さんがチームの指導者とコミュニケーションをとることも必要でしょう。彼自身が今置かれている立場、起こったことを責めるよりも、『なせ、地面を蹴ってしまうのか。なぜ、チームメイトに容赦ない言葉を言ってしまうのか』をみんなで考えて、いい方向に向けてあげることも大事ですね」
 
――彼自身も自分で何をしたらいいかわからず、混乱している部分もあるのでしょうね。そこを周りが解きほぐしてあげられればいいですね。
 
大西「それとこの質問を見ると、もしかしたら彼自身は自分の目標とする選手がまだないのかもしれませんね。たとえば長谷部選手や、FW岡崎慎司選手(ドイツ・vfbシュツットガルト所属)など、目標となる選手ができれば進むべき道も定まると思うんです。
 
 そこで目標とすべき選手が決まったら、特に日本人の選手であればその選手についての何らかの本やインタビューが出ていると思いますので、次はその選手の考え方がわかる文章を、できればその選手が語っている文章を子どもさんに読ませてあげるとよいですね」
 
――目標とすべき選手が決まれば、話をするにもわかりやすいですし、話も素直に入っていきますからね。
 
大西「そうですね。『こうなりたい』と思えば、その選手を見ることでわかる部分も多いでしょうし、親御さんからもヒントが出しやすいでしょうから」
 
――でも、この子どもさん。感情が出ないよりははるかにいいですよね?
 
 大西「サッカーというスポーツを大きくとらえると、選手が成長する過程で感情を出す時期は必ずあります。この状態が大人になった時点で、ないしは大学で出ているようではマズイですけど、小学5年生であればまだ間に合いますし、サッカー選手のベースとして負けず嫌いの要素は絶対に必要です。それがないとプロにもなれなせん。
 
 あとは周りに認められ、『アイツが言うなら仕方がない』と言われるようになるために、自分が変わってくればいいと思います。高飛び競技でもわかるように、高く飛ぶためにはいったん低くなるときがあるんです。ジャンプへのホップ・ステップを自分自身が受け止めること。『点が取れないのは自分自身が悪い。じゃあ、どうしよう』と思うきっかけを大人たちが与えてあげればいい。
 
 大丈夫。壁にぶつかっていることはいいことですし、壁にぶち当たらない人間はいません。あわてなくていいし、悲観する必要はないので、ぜひ今の自分を打破していってくださいね!」
 
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大西 貴(おおにし・たかし)※写真の後列中央//
1971年・愛媛県生まれ。南宇和高では主将として1989年度の第68回全国高校サッカー大会制覇。福岡大を経て1994年に広島へ入団し主にDFとして広島で3年間、京都で1年間プレーしJ1・21試合に出場。広島時代はマンチェスター・ユナイテッドへの短期留学も経験する。そして1998年には当時四国リーグ所属だった愛媛へ里帰り。愛媛FCでサッカースクールコーチを務めつつ2001~2003年には選手兼監督・2004年には監督専任で4年間JFLでも采配を振るった。その後は2年間の愛媛ユース監督経験を経て、現在は愛媛県立松山北高コーチ、スカパー!愛媛中継解説者として活躍中。日本サッカー協会公認A級ライセンス保持。
 
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取材・文・写真/寺下 友徳、写真/サカイク編集部(ダノンネーションズカップ2011より)

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