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親子でチャレンジ

子どもの自主性を育てる「ジェフ式クワトロサッカー」の秘密

公開:2012年5月 9日 更新:2023年6月30日

キーワード:ゲームコミュニケーションジェフユナイテッド

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2012年4月15日(日)、フクダ電子スクエアでジェフユナイテッド市原・千葉(以下:ジェフ千葉)の主催イベント『クワトロサッカー大会』が開催されました。“クワトロ”とは、イタリア語&スペイン語&ポルトガル語で『4』を表す言葉。すなわち、クワトロサッカーとは4対4(GKなし)の少人数ゲームを指します。さらに今回は大人も参加対象とする、『親子クワトロサッカー大会』として行われました。
 
このイベントの趣旨は、子どもたちがサッカーを通じて自主性や創造性を伸ばすこと。それを実践するために、ジェフ千葉のコーチたちは運営方法にさまざまな工夫を凝らしていました。その内容が実に面白いのです。
 

大雑把なようで、細かく考えられており、
放任しているようで、じっくりと子どもを見守っている。

 
クワトロサッカー大会の運営には、『子どもに対する大人の関わり方』として参考になる点がたくさんあります。大会を担当する河野太郎アカデミーコーチのインタビューと共に、ひとつずつ紹介していきましょう。
 
 

【クワトロサッカー大会:運営ポイント】

●チームメートや対戦相手が毎回変わるシステム

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普通、サッカー大会といえば、チームメートや対戦相手が最初から決められていますが、ジェフ千葉のクワトロサッカー大会は違います。まず、子どもたちはコートごとに用意された用紙に名前を記入し、自分が名前を書いた欄の試合スケジュールを確認します。そこには「3試合目のAチーム」「5試合目のBチーム」といった自分の参加チームが書かれており、子どもたちは自分のスケジュールを把握した上で試合時間になったらコートへ入ります。


●個人成績のポイント計算

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大会は個人のポイント数で競います。自分が所属していたチームが勝った場合は20ポイント、引き分けた場合は10ポイント、負けた場合は0ポイント。さらに自分がゴールを決めた場合は、そのゴール数が加わります。例えばチームが勝利し、自分が3点決めた場合、その試合の自分の点数は23ポイントになります。これを試合が終わった後にそれぞれが用紙に記入します。
 


●試合ルールを話し合いで決める

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どちらのチームがビブスを着るのか? ボールがタッチラインを出たときはスローインで始めるのか? キックインで始めるのか? オフサイドはあるのか? ワンタッチシュートだけゴールと認めるのか? などなど細かくあげるときりがないですが、このような試合のルールは、対戦するチーム同士で毎回決めます。運営側からはルールを与えません。

 

●審判なし

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大人の審判を置かず、プレーヤー同士の話し合いや関わり合いの中で、試合を進行します。

 

~河野太郎コーチのインタビュー~
 
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――子どもたちは自分のスケジュールを、自分で管理しなければ試合に出られないわけですが、このような運営方法にしたねらいは何ですか?
 
河野氏「子どもの自主性を育むためです。最初のうちは子どもたちが仕組みを理解し切れず、もたついたところがあったかもしれませんが、だんだん子どもたち自身が“1人足りない”と呼んでみたり、用紙を確認しに行ったり、いろいろな判断と行動が起きるようになりました。自分たちでルールを決めて、試合を始めて、点数を数えて、記入までを行う。普通の試合になると、大人の審判やコーチが点数を数えているので、自分の中で数えない子どもが多いのですが、今回の大会は、ちょっとした足し算や集計を自分でやらなければいけないように仕組まれています。それは自主性を育むことにつながります」
 
「また、いろいろな人とチームを組んで触れ合うという目的もあります。今回は親子参加なので、子どもも大人も関係なく、一緒にサッカーを通じて触れ合うのがコンセプト。昨今のなでしこの人気もあり、例年に比べると女の子やお母さんの参加も増えています。性別や年齢の垣根なく、一緒にボールを蹴って楽しむのが今回のクワトロサッカーです」
 
――イベント中のあいさつで、サッカー解説者のセルジオ越後さんのお話を紹介していましたね。「ブラジルでは同年代だけで固まってサッカーをするのは珍しい。大人と子どもは一緒にサッカーをするし、大人は真剣にプレーをして子どもを吹っ飛ばす。そうすることで、子どもはどうすれば大人に勝てるのかを考えるようになる」と。そのような考え方がクワトロサッカーにもあるのですか?
 
河野氏「さすがに日本で吹っ飛ばすくらいにやると問題になると思いますが(苦笑)、今回の様子を見ていても、日本は大人が子どもの良さを引き出そうとしてパスを回してあげるなど、子どもに合わせて試合をコントロールしてくれています。日本には日本の文化があるので、すべてをブラジル式にするのではなく、大人と子どもが一緒にサッカーをやるという、ブラジル文化の一部分だけを取り入れたいと考えています」
 
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――なるほど。とはいえ、たまに本気を出すお父さんもいたりして、子どもからは「大人気ない!」という声も飛んでいましたよね(笑)
 
河野氏「そういうところもあったほうがいいと思うんです。お父さんは弱かった、で終わるよりも、一瞬でもそういう鋭い動きを見せたほうが親の面目というか、それが親子のつながりであって、全部が全部子どもに合わせるのではなく、そういうお互いのコミュニケーションが取れるとすごく良いものになっていくのではないかと思います」
 
――今回のテーマの一つである『自主性』は、小学生くらいで身に付けておかなければ、なかなか中学や高校に行ってからでは身に付かないのでは?
 
河野氏「そうですね。中学や高校になると、それは自主性ではなく、上からの圧力になることもあります。自主的にやるのと、やらされるのは全然違うので、自分で考えて判断することを小学生のうちにやらなければと思います。“これ何?”と聞かれて答えを与えるのは簡単ですけど、“ちょっと自分で見てごらん”と考えさせ、判断してもらう。それが小さいころからできていると、中学や高校でもできるはずです。僕らはサッカーを通じて、将来いろいろなことに通用する人間になってほしいという気持ちでやっています」
 
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~まとめ~
とかく現代社会は、子どもに対して過保護になる傾向があります。“くつ!”と言えばお母さんが靴を用意してくれる。困っている様子を見せれば、お父さんが答えを与えてくれる。よかれと思う親切心が、時として子どもの自主性を奪うという皮肉な結果を生むこともあります。自分で考え、自分で判断し、自分のことは自分でやる。このような子どもの自主性を育むことへの取り組みは、サッカー界が社会に伝えられる重要なメッセージではないでしょうか。
 
元日本代表監督のイビチャ・オシム氏は、このような発言を日本に残しています。
「サッカーは人生の大学。人生に必要なことはすべてサッカーから学ぶことができる」
 
サッカーは自由度の高い、創造的なスポーツです。広いピッチの中で選手たちは自主的にプレーを創造し、自分を主張しつつ、それが1人よがりで孤立しないようにお互いを尊重しながらプレーしなければいけません。サッカーに必要な能力は、社会に出るすべての人間が必要とするものでもあります。「人生に必要なことはすべてサッカーから学ぶことができる」。オシム氏が言っていたのはそういうことです。
 
今回、ジェフ千葉が開催したクワトロサッカー大会も、子どもたちにとっての素晴らしい『人生の大学』になったのではないでしょうか。
 
 
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河野太郎//
かわの・たろう
埼玉県出身。現役時代は、ジェフリザーブズのキャプテンとして活躍した。2007年に引退後、指導者に転身。現在はジェフユナイテッド市原・千葉のアカデミーコーチを務める。
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取材・文/清水英斗 写真/サカイク編集部

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