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子どものサッカー 父親の役割

サッカー審判を始めて新たな発見があった、子どもたちとの関わり

公開:2013年9月24日 更新:2020年3月24日

キーワード:サポート審判

「お父さんの役割」について考える連載の第三弾。今日はお父さんが子どもたちのためにできるサポートとして一般的な審判について考えます。1学年にコーチが複数いるようなクラブは別ですが、ほとんどのクラブが練習試合や大会などでお父さんに審判をお願いしています。サッカー経験者ならば4級の審判資格を持っている人も少なくありませんが「子どものために」と資格を取り、そこからサッカーへの関わりが大きく変わる人もいます。
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■お父さん審判が支える子どもたちのサッカー

 先日、3人のサッカーキッズを持つお父さんにお話を聞く機会がありました。スケジュール帳は子どものサッカーで数ヵ月先までびっしり。さらに空いている時間があればご自身の草野球にも出かけるというスポーツマンのお父さんです。でも、野球? サッカーじゃないの? と水を向けると「元々は野球、中、高はバスケットボールをしていたんです」との答え。3人目のお子さんがサッカーを始めたのを機に「同じクラブに3人もお世話になるんだから少しでも役に立たないと」という思いで、4級審判講習会に出向き、笛を吹くようになったそうです。
 車出しや、引率、審判などの役割を不公平にならないように各人に完璧に割り振っているチームもあるようですが、日本各地に数多あるサッカークラブのほとんどが、こうしたお父さんの善意の協力で成り立っています。県大会クラスの大きな大会、しかも本戦レベルを除いて、多くの試合は指導者、お父さん審判が笛を吹きます。「自分の子どもなんだから当たり前」みなさんそうおっしゃるでしょう。しかし、日本のサッカーは、ウィークデーは仕事に、週末は子どものためにと汗を流し続けるお父さんの尽力に支えられているのです。
「この前みたいに台風のときくらいですね。予定がなくなるのは」
 中学3年生、小学校6年生、小学校4年生のお子さんを持つお父さんは、現在次男と三男が通うクラブに関わり始めてもう10年近く。三男がサッカーを始めたのを機に「クラブに恩返しを」という思いで、審判資格を取りました。
「はじめは大変でしたね。外から見ているのがどんなに楽かわかりました」
 学生時代は野球、バスケットボールに没頭、180㎝を超える長身のスポーツマン。しかし、サッカーとなると、社会人になってから会社のサッカーチームにGKとして借り出されていたとはいえ「ほとんど素人」。そんなお父さんが、いまでは毎週末、子どもたちのサッカーに関わりを持って、お願いされれば笛を吹いています。
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■審判をやって見えてきたこと

「最初はもちろん副審から。でも練習試合から始めて、その年のうちに主審もやるようになりました。色々なところを見なければいけないのでとにかく疲れました。面白かったのは、子どもたちがピッチの中で意外に会話していることです。いつもは『もっと声かけ合って!』と思っていたのですが、実はいろんなことを話していたんです」
 審判をやってはじめて気づいたことがあった。お父さんは楽しそうに話してくれます。週末の予定がすべてサッカーに費やされるつらさはないのでしょうか?
「いやぁ、子どものサッカーってただ見ているだけでも楽しいんですよ。もちろんイライラすることもそれと同じくらいありますけどね(笑)」
 審判はもちろん子どものため。サッカーも子どもを通しての関わりですが、お父さんもお父さんなりの関わり、いい距離感を保っているようです。
「公式戦はやっぱり緊張しますね」
 お父さん審判といえども、4級資格を持った審判である以上、公式戦で笛を吹くこともあります。8人制への移行に新オフサイド。日々更新されるルールに追いつくのも容易ではありません。
「チームの中で情報を共有しあって、現役でサッカーやっているお父さんなんかに最新情報を聞いて、みんなで勉強しています」
 いくら新たな魅力を発見できるとは言え、審判はあくまでもお手伝い。一人審判には「オフサイドを一人で見るのは無理ですよ。狙いはわかるんですが、私には難しい」。これって多くのお父さんの本音なのかもしれません。
「それとカードを出すのは躊躇しますね。特にレッドカードは、ルール上は退場のプレーでも、その子がプレーできなくなることを考えるとなかなか出せない。実際にあとから審判部の方に『あれはレッドだった』とご指摘を受けたこともあります」
 たしかに子どもたちにとっての貴重なプレーの場を奪ってしまうのは残念なこと。しかし、一方で、フェアプレーをしなければピッチに立つ資格がないと教えるのも大切なこと。主審としてサッカーに関わることで、サッカーの新たな一面が見えてくることもあります。
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■支え合って成り立つサッカー

「どこまで関わったらいいのか、どこまでサポートしてあげていいのか。もしかしたらお節介になっているのかもと思うときはありますね」
 審判を積極的にやることで、コーチが子どもたちに割く時間を増やせる。そう思って、自分たちの試合後の審判を買って出たとします。お父さんは完全に善意での行動ですが、このときコーチは子どもたちだけでミーティングをさせて、自分たちで次の試合に向けて準備をしてほしいとあえて自分が審判をする予定でいました。こういうことが起らないとも限りません。明確に「いつ、何台必要」とはっきりわかる車出しなどのお手伝いと、資格を持っていて、できる人がやる審判では「どこまで?」という難しさがあります。
 資格が必要な審判は全員に平等に割り振ることができません。自ずと審判に名乗り出たお父さんの負担は大きくなります。そういう役割が嫌で、サッカー経験、審判資格をあえて申告しないお父さんもいると聞きます。
 一方で、今回ご登場いただいたお父さんのように、子どもたちのサッカーを通じて、自分のサッカーとの関わり、子どもたちとの関わりに新たな発見をして、それを楽しんでいる人もいます。
 これだけ育成年代にサッカーが普及し、毎週末大小様々な試合が行われている以上、すべてを外部の審判でまかなうのは現実的にはあり得ないことです。審判資格を取る人間の数だけ揃えても、現実には「子どもがサッカーをやめたら、クラブを卒業したら審判をやらない」のが当たり前です。子どもたちのサッカーを支えているのは、こうして子どもたちのサッカーに向き合ってくれているお父さんたち。審判だけが子どものサポートではありませんが、周囲はこうしたお父さんたちの努力を正しく知ってほしいと思います。
「お父さん、お母さんのおかげでサッカーができている。兄弟の我慢があってサッカーを続けられる。だからみんなに感謝してプレーしないといけないよ」
 あるコーチが「サッカーをする前提として」と子どもたちに最初に伝える言葉です。
 子どもたちのサッカーはみんなの協力で成り立っている。サッカーのプレーも仲間との協力なしにはうまくいかない。もう一度サッカーに関わるみんなで考えてみたいことです。

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大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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取材・文/大塚一樹 写真/新井賢一(第37回全日本少年サッカー大会決勝大会より)

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