U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022

2022年8月29日

バルサのPKを3本連続阻止、ヴィッセル神戸のGKに聞いた「蹴る方向が分かった」タイミング

8月22日から4日間にわたって行われた、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022。準優勝に輝いたのが、ヴィッセル神戸U-12です。準決勝ではFCバルセロナをスコアレスドローからのPK戦で破り、決勝に進出しました。

チームを率いる坪内秀介監督のもと、4-3-3のシステムを用い、最終ラインからビルドアップして攻めるスタイルは、大会有数の完成度でした。

8月上旬に行われたフットサルの全国大会「JFA バーモントカップ 第32回全日本U-12フットサル選手権大会」に続き、準優勝に輝いたヴィッセル神戸U-12の坪内秀介監督(以下、坪内)と、準決勝でPKを3本止めたGK田口創一朗選手(以下、田口)、的確な守備でバルサを無失点に抑えたDF浅田連選手(以下、浅田)に話をうかがいました。
(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)

 


PK決着で決勝進出を決め喜ぶヴィッセル神戸の選手たち(C)新井賢一

 

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■子どもたちがファイトし、チャレンジしてくれたことが一番嬉しい 

――準決勝、PK戦とはいえバルサに勝ちました。試合を振り返って感想をお願いします。

坪内 素直に嬉しいです。勝ったこともそうですが、子どもたちがすごくファイトしてくれて、チャレンジしてくれたことが一番嬉しいです。そのご褒美として、PKとはいえ勝つことができたのかなと思います。

 

――PK戦で3本止めた、1番・GK田口創一朗選手の活躍については?

坪内 順位トーナメントの試合でもPKを止めているんです。だから、ここまで4本中4本を止めています。自信を持って臨んでくれたと思いますし、よく頑張ってくれました。

 

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■バルサと試合をしただけで満足するのではなく、「いま」の自分たちの力を知れた

――バルセロナはウイングに突破力のある選手がいましたが、サイドの守備対応についてはいかがでしょうか?

坪内 選手たちには「DFラインとFWまでの距離をコンパクトにしよう」と言ってきました。サイドは1対1になってもしょうがないので、そうなったときにインサイドマークやカバーの意識を高くすること。何よりも、ファーストディフェンダーになった人が抜かれないように、粘り強く対応しようと伝えていました。


――大会を通じて、最終ラインからのビルドアップ、中盤の関わり、ボールの出口の作り方など、すごく良いオーガナイズをしている印象を受けました。普段から、そのような指導をしているのでしょうか?

坪内 ヴィッセルにはアカデミーのメソッドがあります。まずはしっかりと立ち位置を取ってマークを外すことや、相手と駆け引きをすることで、リアクションではなくこちらからアクションを起こすスタイルを目指しています。

ドリブルにしても、相手に向かって行って相手の意識を割らせることや、ドリブルで進入することで、相手の守備をどう迷わせるかといった練習を行っています。

メソッドには、状況を見て判断する要素も入っているので、アカデミーではそれらを共通して指導しています。

 

■バルサに勝ったからといって過信してほしくない 

 


バルサと対戦しただけで満足するのではなく、積極的にチャレンジしたことを評価したいと語った坪内監督(C)新井賢一

 

――今大会、そのあたりの成果は出ていますか?

坪内 選手たちは本当に頑張ってくれました。今大会に臨むにあたり「バルサと試合をする」「優勝する」という二つの目標を立てました。準決勝でバルサとやれるところまで来たので、「今までヴィッセルのジュニアに入って、やってきたことを表現しよう」と言って送り出しました。

選手たちはバルサと試合をしただけで満足するのではなく、積極的にチャレンジをすることで、いまの自分たちの力がどのぐらいなのかを感じることができたので、その基準をひとつ上のレベルに引き上げることができるのではないかと思います。


――彼らはまだ12歳。これからのサッカー人生は長いですが、この経験をどのように活かしていってほしいと考えていますか?

坪内 変に過信して欲しくないと思っています。「バルサに勝ったから、俺たちすごいんだ」ではなく、いやもっと行けるよ、まだまだできることはあるよと伝えたいです。この年代は成長期に個人差があります。現状できているからといって、そこで満足するとすぐに抜かれてしまいます。なので、満足しないように求めていきたいです。

 

■諦めずに戦い切った選手たち。PK決着は誰も責められない

坪内監督には、決勝戦終了後にも話をうかがいました。

――惜しくもPK戦の末に準優勝となりましたが、決勝戦の感想をお願いします。

坪内 選手たちは2度のビハインドの中、諦めずにプレーして、最後に追いついてくれました。PKはしょうがない。誰も責められません。

普段ユースに帯同しているトレーナーが遠征に来てくれて、朝から体重を測り「きみは何グラム落ちているから、これぐらいは食べよう」「水分を取らないと明日、動けないよ」というアドバイスをしてくれたのはすごく助かりました。それもあって、最後まで戦い切ることができたと思います。

 

■11人制の練習ができてないなかで挑んだ大会だったが、選手たちが上手くやってくれた

――大会を通じて、プレーモデルに基づいた組織的なプレーが印象的でした。11人制の練習はどのぐらいしたのでしょうか?

坪内 フットサルの大会(バーモントカップ)が8月7日まであったので、そこまではフットサルをやっていました。その後、8人制の大会に出たりと、11人制の練習はあまりできていない中で、あのぐらいやってくれたので、繋がってるんだなと思いました。

立ち位置の話は常にしていますし、マークの外し方や相手を引き付けて一歩ずらしてパスを出すとか、そういう細かいところは出せていたと思います。

 

――最後に、大会を振り返って感想をお願いします。

坪内 バルサが来てくれて、彼らと試合ができたことは、すごくいい経験になりました。大会関係者のみなさんに感謝したいと思います。「バルサと試合をする」という目標を掲げる中で、勝ち進むことで選手たちが手に入れた権利なので、そこも含めてよく頑張ったと思います。

 

■PKは蹴る瞬間に分かった

準決勝のFCバルセロナ戦で活躍した、GK田口創一朗選手とDF浅田連選手に、話を聞きました。

 


PKストップなどで活躍したGK田口創一朗くんとセンターバックとして守備で活躍した浅田連くん(C)新井賢一

 

背番号1・GK 田口創一朗(たぐち そういちろう)

――PKを3本連続で止めて、勝利に導きました。PKのときは、どんなことを考えていましたか?

田口 PKになったときは、自分が止めないといけないなと思いました。1本目の結果によって、相手の蹴る方向が変わるので、自分の立場に置き換えて考えたら、止めることができたので良かったです。

1本目は蹴る瞬間にわかって、2本目と3本目は蹴る前に「こっちに来るかな」という気がしました。


――バルサの印象は?

田口 一人ひとりの技術が高いので、どっちのコースを切るとか、体の向きを指示しながらやりました。攻撃はサイドからクロスを上げて来たので、クロスの対応に気をつけました。

――チームの守備については?

田口 最終ラインを上げることを意識しながらやりました。PKでも勝ち切れたので良かったです。勝ったときの気持ちは最高でした。でも、あまり実感が湧いていません。

 

背番号8番・DF 浅田連(あさだ れん)

――バルセロナとの準決勝を振り返っていかがですか?

浅田 バルセロナはいままでやったことないぐらい圧がすごかったです。日本のチームとは違って冷静なところがあったり、一発で背後に蹴ってきたり、ひとり剥がしてからサイドチェンジをしてきたりと、とてもやりにくかったです。

――どんなことを考えてプレーしていましたか? 

浅田 センターバックだったので、クロスが上がったときは責任を持って競ること、ひとりが抜かれてもカバーに行けるように、準備することを考えていました。バルサに勝ったことは信じられません。

 

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