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U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2019

日本の文化が弱点に? バルセロナ、バイエルンの監督が指摘する、日本サッカーの改善点

公開:2019年9月 6日 更新:2019年9月30日

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ナイジェリア選抜の優勝で幕を閉じたU-12世代の国際大会「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ 2019」

多様な価値観に触れることのできるこの大会は、日本と海外の違いを間近で感じられる、絶好の機会でもあります。日本のチームと対戦した、FCバルセロナ、バイエルン・ミュンヘンの監督は、日本サッカーについて、どのような印象を受けたのでしょうか。

両者が口にした、日本の文化がピッチ内に与える影響とは?

(取材・文:鈴木智之、写真:吉田孝光)

 

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最終日に開催されたバルセロナ対バイエルンのフレンドリーマッチ(C)吉田孝光

 

■バルサ監督が語る、日本サッカーがよりよくなるために必要なこと

U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2019は日本以外にスペイン、ドイツ、中国、タイ、シンガポール、アメリカ、オーストラリア、ナイジェリアと、ヨーロッパ、アジア、アフリカなど各地から参加チームが集まり、多種多様な価値観、考え方に触れることのできる場でもありました。

普段、日本人同士で試合をしていると気づかない違いが、異文化と交わることで浮き彫りになることがあります。FCバルセロナのアルベルト・プッチ監督は、アジアのサッカーの印象を次のように話します。

「アジアのチームは、それぞれ特徴が異なっていました。栃木SCは小柄ですがテクニックがあり、JFAトレセン大阪はバランスのとれたサッカーで、全員で戦うチームでした。中国はフィジカルの強い選手が多く、最終ラインと前線に体の大きな選手を置き、パワープレーを仕掛けてきます。いまの時代は様々なサッカーの情報が入って来るので、グローバルでレベルが上がっている印象を受けました」

プッチ監督に「日本サッカーがより良くなるために、育成年代でどう取り組めばいいのでしょうか?」と尋ねると、次のような言葉が返ってきました。

「もう少し、選手に自由を与えたほうがいいかもしれません。日本の文化が影響しているのだと思いますが、規律があって教育が行き届いているので、サッカーにもそれが出ているんです。決まった枠の中でプレーするので、次にどうするかが読みやすい。サッカーの原理原則をわかった上で、あえて違うことをする選手はほとんどいませんでした。文化的に規律やルールを重んじる部分が、サッカーに出てしまっているなと感じます」

プッチ監督はそう言いますが、FCバルセロナの方が、明確なプレーのイメージがあるように見えます。プレーモデルがあり、バルサの選手はこうプレーすべきという指針があるので、「日本のサッカーよりもバルセロナの方が、決まったプレーの枠があるのではないですか?」と返すと、プッチ監督はこう答えました。

「バルサにプレーモデルはありますが、重要なのは原理原則。正解は一つではなく、状況によって変わっていきます。プレーの大枠はありますが、その中でいくつもオプションがあるイメージです。練習や試合の中で、選手自身にもオプションを出させます。正解は状況に応じて変わり、一つではないんです」

 

■人と同じことをしても、ゴールを決められない

日本の文化的な部分で、サッカーに不利に働く面を指摘するのは、バイエルン・ミュンヘンのソンウェーバー・ラファエル監督です。

「日本チームの団結力はとても素晴らしいですし、我々のチームに足りない部分だと思います」と前置きをした上で、次のように言います。

「日本人は、周りの人と同じことをするのが好きですよね。だけど、ゴール前で点を決めるには、相手の裏をかかなくてはいけません。つまり、人と同じことをしていては、点は取れないのです」

ラファエル監督は「パスを回してスペースを作り出して攻めていく、日本チームの攻撃は素晴らしい」と賛辞の言葉を送りながらも「日本の選手は、自分がゴールを決めるんだという気持ちが少ないのではないでしょうか。バイエルンは日本ほどのパス回しはありませんが、個人が最終的にどうにかして点を取るのです」と、違いを語ります。

自分がゴールを決める、試合を決めるという責任と決断を背負ってグラウンドに立つのは、トップレベルに駆け上がるために必要なメンタリティです。それは、決断をするのが苦手、周りに合わせることが好きな日本の文化とは相反する要素でもあります。

ラファエル監督は言います。

「日本の選手がバイエルンに入っても、性格の強さがないから大変だと思います。反対に、バイエルンの選手が日本のチームに入ったら、団結力が求められるので大変かもしれません。ただし、試合で点を決めるためには性格の強さ、個人の力が必要です。点を決めたチームが、最終的には勝つのですから」

 

■「僕たちは僕たちだ」というバイエルンの哲学

バイエルンには育成の哲学があります。アカデミーに対して、クラブから「こういうサッカーをしてほしい」とリクエストが届くそうです。

「バイエルンはトップからアカデミーまで、同じスタイルでサッカーができるようにしたいと思っています。我々のユニフォームには、ドイツ語で『ミア サン ミア』(英語では We are We。『僕たちは僕たち』という意味)と入っています。相手に合わせるのではなく、自分たちのプレーにフォーカスすること。ボールをキープし、試合を支配することを目指しています」

FCバルセロナとバイエルン・ミュンヘン。両チームの監督が言及する、日本の文化とサッカースタイルの関係性。サッカーほど、文化がピッチに色濃く反映されるスポーツはありません。サッカーはグローバルなスポーツであり、自分で考えること、決断することが求められます。しかしながら、それは日本の文化、教育的にもっとも苦手とする部分でもあります。

日本的な考え方、文化は尊重すべきですが、サッカーというスポーツに取り組む際に、それが足かせになることがあるのです。一方で、団結心を持ち、目標に向かって進むこと、与えられた任務を、迷うことなく遂行する能力は、日本人の長所であると言えます。

日本人の長所と短所を見極め、グローバルなスポーツであるサッカーに対してアジャストさせていく。それが、今後日本サッカーがさらなる高みに到達するために、必要なことではないでしょうか。

 

【全試合結果・詳細】U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2019 公式ホームページ>>

 

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▼これまでの大会の記事はこちら

【2018年】3連覇狙うバルサが日本チームに大苦戦
【2017年】「ソルティーロ世界選抜」躍進の影に本田圭佑の哲学
【2016年】バルサ選手のふるまいに世界中が大絶賛
【2015年】バルサに勝った東京選抜が見つけた世界との差
【2014年】バルセロナに0-9で負けたチームが学んだこと
【2013年】久保建英選手が「バルサの選手」として出場

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取材・文:鈴木智之 写真:吉田孝光

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