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子どもの本気と実力を引き出すコーチング

具体的な目標設定がパフォーマンスを上げる! 目標設定の5原則とは

公開:2019年5月27日

キーワード:やる気コーチングパフォーマンスモチベーション目標

自分の指導していることが子どもにうまく伝わらない。「なぜ出来ないんだ」と言ってしまうあなた。人間の本能と心理を理解すると、ガラっと子どもを見る目が変わります!! するとあなたの指導力もグッとレベルアップします。

4月6日に発売された「子どもの本気と実力を引き出すコーチング」(内外出版社)より、「なぜ出来ないの?」ではなく「どうすればできる?」のか、失敗を怖がって無意識にかけてしまうブレーキの外し方、緊張のコントロールなど、現代の子どもたちのコーチングに必要なスキルと、ケガの応急処置など大人が知っておかなければならないことをピックアップしてご紹介します。

「子どもにこうなってほしい」と思っているだけでは現状は変わりません。
あなたが変われば子どもも変わるのです。指導者だけでなく、保護者の方も普段の会話に取り入れるなど参考にしてください。

第五回目の今回は、国際武道大学でスポーツ心理学、コーチング科学の教育・研究に携わる前川直也准教授による、パフォーマンスを上げる目標設定のしかたをご紹介します。

<<前回:どんなに集中力を欠いていても「やる気がないなら出ていけ」と言ってはいけない理由

■目標を設定するとパフォーマンスが上がる

ここに挙げた表は立ち幅跳びのテストの結果を表したものです。

coaching5_01.jpg
調査の結果、「目標」の有無がパフォーマンスに大きく影響することを示しています

1回目は何も指示を出さずに普通に跳んでもらいました。2メートル跳んだとしましょう。
2回目は「1回目の記録である2メートル(これが100%の目標:1回目の跳躍距離に対する割合を意味する)」という具体的な目標を設定しました。すると2メートルをクリアします(100%の目標の場合、1回目に比べ102.3%発揮された。しかし、目標のない場合は1回目に比べ98.2%の発揮ですから、1回目の2メートルはより低値を示し、目標が必要であることを示しています)。

さら少しずつ目標を上げていくとグラフのようなパフォーマンスが見られました。

人は目標を設定すると、それを達成しようとパフォーマンスが上がっていくものなのです。

力の100%をと言われるとそれほどでもありませんが、110%と言われると、さらに上がっています。それ以上になるとパフォーマンスは下がっていきます。110%が最適な設定になります。これを目安にタイム・距離、また回数・負荷など、数値化できるものは目標として設定しやすくなります。

■目標を設定すると、なぜ人間は頑張るのか

理想とする目標を設定することで人は現状とのギャップを認識します。ギャップを感じるとそこには必ず緊張が生まれます。その緊張をなんとか解消したいと感じるのが人間です。その解消しようとする行為がギャップを埋めていくわけです。

例えば練習でランニングをやるとする。気の利いた選手ならまず「何キロ走るんですか?」「何分走るんですか?」と聞いてきます。つまりゴール、終わりを見ている。知りたいわけです。

coaching5_02.jpg
終わりが見えると頑張れるのです

そこで「とりあえず走りなさい」と言ったらどうでしょう。必ず不満が出るはずです。ブツブツ言いながら走る選手もいれば、口には出さなくても不満そうな顔をして走っているはずです。目標が見えないことには、埋めるべきギャップもわからず、それがストレスになるからです。

ある程度走ったところで「はい、あと1周」とか「あと3分」と言ってみてください。心理的には「終わりが見えた」「もうすぐ終わる」となり、急に走りが変わります。

終わりという目標が見えてきた時、人はそれを埋めようとして頑張るからです。

■目標設定の5原則

目標設定の原則ですが、5つあります。

coaching5_03.jpg
具体的な目標を立てることが達成への近道。可能な項目は可視化するといいでしょう

 

1.現実で挑戦的な目標を設定する。主観的な成功確率が50%くらいの目標が最適
例えば10回そのプレーにトライして5回は成功するが5回は失敗する、というくらいの目標を与えてあげてください。

つまり「確実に成功する」「まず失敗する」とわかっている目標よりも「50%ほど成功するかもしれない」という目標においてモチベーションが高まります。大切なのが主観的な確率。本人がそう感じる目標です。

100%成功するものに対してはやはり手を抜くものです。逆に難しすぎると「どうせ無理だよ」と無気力になってしまう。モチベーションを長く維持するためには成功確率50%くらいが最適です。

それを踏まえた上で、時には自信をつけさせるために80~90%成功する目標にしたり、自信を失わせて基礎からやりなおさせたいような時は10~20%の目標にチャレンジさせたりという使い分けも必要かと思います。

2.抽象的でなく具体的な目標を設定する
「私は一生懸命頑張る」では抽象的な目標になってしまいます。「一生懸命」の基準は指導者と、選手とでは違います。プレーがうまくできなかった、試合に負けた。でも「一生懸命頑張りました」から目標を達成しましたということでは、課題も改善点も自覚できませんし、評価のしようがありません。つまりフィードバックができないのです。

例えば体重計に乗らずにダイエットに成功する人はいません。ダイエットを指導する栄養士が必ず毎日体重を測らせ、体重の増減のグラフを書かせて、客観視できるようにします。言い換えれば努力したことに対する見返りになり、モチベーションにつながります。運動をして、食生活に気をつけて、体重計に乗ったら、少し体重が減っていた。それを見て、また頑張ることができるわけです。そのためにも数字・記録などの具体的な目標を作っておくことが大事です。

3.長期目標短期目標を設定する
目標を設定する場合は最終目標から設定してください。そこから逆算して一年後の目標、半年後、三か月後、一か月後、一週間後、明日と目標を決めていきます。

よく間違えるのは今日の目標から作ってしまうことです。そうすると目標を足し算にしていくことになる。これが大変です。途中でネタがつきてしまうのです。最後を決めてそこから引き算をしていく方が段階ごとの目標は決めやすいものです。

目標設定する際には、短期目標は欠かすことのできないものです。なぜならば、長期目標は、達成できたかを評価するのに時間がかかるため、モチベーションの維持が難しいものだからです。

しかし、短期目標は、フィードバックを早期に得ることができるため、達成感満足感を早く味わうことができ、長期目標に対するモチベーションが維持しやすくなります。

4.チームの目標だけでなく個人目標も重視する
チームの目標を踏まえた上で、それを達成するために練習の前に、個々の目標・テーマを問いかけます。さらに練習の後に良かったところ反省点を聞くと効果的です。口頭ではなく、紙に書いて提出するという形式をとると、より目標を強く意識するようになります。

私はその日の目標をホワイトボードに書いてもらっていました。私が練習に遅れることがあっても、それを見ればこの選手は何を目標にしているかわかりますし、どこにアドバイスしてあげればいいのかがわかりやすくなります。そうやって目標を可視化することは選手にとっても指導者にとっても効果的です。

5.結果目標だけでなくプレー目標も重視する
これは「過程を重視する」と置き換えてもいいでしょう。

例えば「全国大会出場」といった結果を目標に掲げることはありません。1回戦で負けたりすれば、そこでチームの目標が無くなってしまいます。また「何回戦突破」では、まだ残りの試合がある段階で目標を達成してしまったことになってしまいます。

優勝という目標でもいいのですが、それを達成するために具体的な方法論を考えることです。それが過程としての目標になります。

受験などでも同じです。「●●大学合格」それはそれで素晴らしい目標ですが、その目標を達成するためにどの教科をどれだけ勉強するのかという過程を目標としなければ学力は上がりません。

スポーツでも「大会までにこの練習メニューをこれだけ消化する」「練習試合を何試合行う」「シュート練習を何本打つ」 といった「過程」の要素を掲げていく方が、目指すところがわかりやすくなります。

「笑顔でプレーする」「基本に忠実に」といったことや、生活習慣に関わる「みんなが大きな声で挨拶をする」「時間を守る」といったことでもチームとしての立派な目標になります。

■結果だけを重視すると敵意が生まれる

結果だけで判断するようになると、勝っている時や調子がいい時、自分の能力が高いと思っている時はいいのですが、その逆のケースになった時に必ず無力感を覚えます。

そしてもう一つ。結果だけをチームの目標に設定すると、必ず人に対する敵意を持つようになります。

結果と過程の決定的な違いが何だかわかりますか?

結果と言われるものは自分だけではコントロールできないものです。対戦相手やチームメイトといった他人によって左右されてしまうものです。

例えば自己新記録を出したとしても、優勝という目標を掲げていたら、他の選手に記録を上回られたら目標は達成できません。また集団で結果を目標にした場合、「~~が足を引っ張った」「~~がミスをした」と人間関係がギスギスし始めます。他人に敵意を持つようになるわけです。

これが組織において怖いところなのです。連載の第一回で説明したように、人は優劣をつける、相手に勝つことに価値を求める生き物だからです。

次回は承認欲求を満たしてパフォーマンスを上げる声かけのしかたについてご紹介します。

<<前回:どんなに集中力を欠いていても「やる気がないなら出ていけ」と言ってはいけない理由

【著者プロフィール】
前川直也(まえかわ・なおや)
1977年生まれ
国際武道大学体育学部准教授、同大学大学院武道・スポーツ研究科准教授  
博士(スポーツ健康科学)
著書...「公認柔道指導者養成テキストA指導員」公益財団法人全日本柔道連盟
その他...日本傳講道館柔道六段、全日本柔道連盟公認Aライセンス審判員、全日本柔道連盟公認柔道指導者A指導員、公益財団法人日本スポーツ協会公認柔道コーチ、国際武道大学柔道部コーチ

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