子どもの本気と実力を引き出すコーチング

2019年5月20日

どんなに集中力を欠いていても「やる気がないなら出ていけ」と言ってはいけない理由

自分の指導していることが子どもにうまく伝わらない。「なぜ出来ないんだ」と言ってしまうあなた。人間の本能と心理を理解すると、ガラっと子どもを見る目が変わります!! するとあなたの指導力もグッとレベルアップします。

4月6日に発売された「子どもの本気と実力を引き出すコーチング」(内外出版社)より、「なぜ出来ないの?」ではなく「どうすればできる?」のか、失敗を怖がって無意識にかけてしまうブレーキの外し方、緊張のコントロールなど、現代の子どもたちのコーチングに必要なスキルと、ケガの応急処置など大人が知っておかなければならないことをピックアップしてご紹介します。

「子どもにこうなってほしい」と思っているだけでは現状は変わりません。
あなたが変われば子どもも変わるのです。指導者だけでなく、保護者の方も普段の会話に取り入れるなど参考にしてください。

第四回目の今回は、国際武道大学でスポーツ心理学、コーチング科学の教育・研究に携わる前川直也准教授による、練習に身が入っていない時の声のかけ方をご紹介します。

<<前回:「落ち着け」は逆効果! ビビるのは力を出しきるのに「準備OK」なサイン

■「やる気がないなら出ていけ」は指導者の甘え

指導の場で子どもに「やる気がないならここから出ていけ!」「もう帰れ!」と言ってしまったことはありませんか?


あとで話を聞くから、と伝えるなど子どもに「守られている」と感覚を保たせることが大事

これが子どもの心をとても傷つけます。

見捨てられ、関係を遮断され、守られた状態がなくなってしまうわけです。しかも実際に出ていったり、帰ったりしたらさらに怒られる。子どももどうしていいかわからず困ってしまいます。その前に何かすることがありませんか?

例えば、言うことを聞かない、集中力を欠いている練習に身が入らない、プレーがどうしても上手くいかずジレンマを感じている。そういう時は、そのまま続けても練習の効果はありませんから、一度、練習の輪から外すということも必要な時があります。

ただその時も、練習場の外に出したり、家に帰したりせず、「あとで話を聞くから、今日は練習を外れて、そこで見ていなさい」とフォローの声をかけて、指導者の目の届く手の届く位置にとどまらせてください。

「あなたを見捨てていないから」「あなたのことはちゃんと見ているから」ということがわかるようにして「守られている」という感覚を保たせ続けてください。そうやって、反省を促す、気持ちをリセットさせる、外から練習を見て自分のプレーを客観視させます。

■「俺は帰る」指導を投げ出すと子どもたちに自棄的な感覚が芽生える

さらに傷つくのが指導者が言う「私が出ていく」です。

「こんなたるんだ練習をやるんだったら俺は帰る」という言葉です。あなたも身に覚えはありませんか?

これは見放されたという感覚に加え、指導を放棄し「練習が上手くいかないのは子どもたちのせい」という無責任感が伝わります。子どもたちにも「もういいよ」という反発自棄的な感覚が芽生えてしまいます。これでは傷は埋まりません。

厳しい言い方になりますが、指導者側に「残ってくれる。とどまってくれる」「自分を引き留めてくれる」という子どもに対する甘えがあるのではないでしょうか?

チーム全体がどうにも浮ついて練習にならないという状態になったら、その場を放棄するのではなく、「今日の練習どう思う? あまりやりたくないのかな? それだったら今日はもう止めようか?」と、相手の話を聞いた上で、自分の責任において練習を終わらせてしまった方が、子どもたちに傷も残らず、次の練習につなげることができるでしょう。

次回はパフォーマンスを上げる目標設定のしかたについてご紹介します。

<<前回:「落ち着け」は逆効果! ビビるのは力を出しきるのに「準備OK」なサイン

【著者プロフィール】
前川直也(まえかわ・なおや)
1977年生まれ
国際武道大学体育学部准教授、同大学大学院武道・スポーツ研究科准教授  
博士(スポーツ健康科学)
著書...「公認柔道指導者養成テキストA指導員」公益財団法人全日本柔道連盟
その他...日本傳講道館柔道六段、全日本柔道連盟公認Aライセンス審判員、全日本柔道連盟公認柔道指導者A指導員、公益財団法人日本スポーツ協会公認柔道コーチ、国際武道大学柔道部コーチ

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