[いつでも、だれでも、ずっとサッカーを楽しむために]JFAグラスルーツ推進

2022年2月 8日

チャレンジしたくてもできない状況があった。障がいのある子どもたちを主体にチャレンジフットサルに取り組むバルドラール浦安デフィオ

「JFAグラスルーツ宣言」に賛同するチームを認定し、つながりを作ることで、グラスルーツの環境改善を目指すJFAグラスルーツ推進・賛同パートナー制度。引退なし、補欠ゼロ、障がい者サッカー、女子サッカー、施設の確保、社会課題への取り組み、という6つのテーマに、それぞれ賛同するチームが認可を受けています。

今回グラスルーツ推進グループの松田薫二さんと荒谷潤さんがお話を聞いたのは、千葉県浦安市に拠点を置くフットサルチームバルドラール浦安デフィオの監督兼選手として活動する泉洋史さん。グラスルーツ推進パートナーとしてどんな活動をしているか伺いました。
(取材・文:松尾祐希 写真提供:バルドラール浦安)

チャレンジフットサルでの集合写真(提供:バルドラール浦安)

 

 

<グラスルーツ推進6つのテーマ>

 

■障がいのある子たちを主体としたチャレンジフットサルなどの活動も

松田:バルドラール浦安の下部組織としてデフィオは活動されていますが、具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか。

泉:私たちはインクルーシブのチームとして活動しています。2014年に立ち上がったチームで、今は聴覚障がい者、知的障がい者、精神障がい者、視覚障がい者、健常者が在籍しています。その中で私たちのチームは主に2つの活動を行っています。

1つ目は健常者のリーグにチャレンジする競技活動。2つ目は障がいのある子どもたちを主体としフットサル教室を主催する社会貢献活動です。私たちは競技と社会貢献の両方をやっていきたいと考えています。

 

■チャレンジしたくてもできない状況があった


2014年のチーム立ち上げ当初(提供:バルドラール浦安)

松田:なぜデフィオやチャレンジフットサルの取り組みをされようと思われたんですか?

泉:障がいのある方がチャレンジしたくてもできない状況があると知ったからです。聴覚障がいの方がプレーするデフサッカーの存在を知り、一般的な健常者のチームではなかなか馴染めないという声や、健常者のリーグにエントリーしたくても耳が聞こえない理由で受理されない事例があったみたいなんです。

そうした現状を変えたいという気持ちでチームを立ち上げました。また、元々自分はバルドラール浦安のセカンドチームでトップ昇格を目指してプレーしつつ、特別支援学校の教員免許を取るために学校へ通っていたんです。そこで耳が聞こえない友人ができ、それがきっかけで聴覚障がい者のフットサルがあるというのを知りました。

バルドラール浦安でトップチームを目指してやっていく夢を追いながら、仕事では特別支援学校の教員になりたい。自分が持っている二つの夢が合わさった世界があるかもしれないと気が付き、そこから関心を持つようになったんです。

いろんなイベントに足を運び、チャレンジがしたくてもできない人がいることを知りました。今後の活動目標として、障がいがある人と健常者が一緒にプレーできる場をもっと作りたいと思うきっかけになりました。

 

■聞こえる人、聞こえない人をセパレートしたら意味がないと思った

松田:その中でバルドラールの下部組織としてチームを作られたのはどういう経緯だったのでしょうか?

泉:実はバルドラールでチームを作ろうとは思っておらず、イベントで知り合った方々と一緒に、チームを作ろうという構想を立てていました。ただ、タイミング的にはFリーグでの挑戦を終えてからと思っていました。しかし、引退を決めた時にトップチームのコーチ就任を打診され、チームを立ち上げるのであれば、このコーチの経験が活きると思ったので、1年間やらせてもらいました。そこで経験を積んだので、いよいよチームを立ち上げようとなった時にその想いをクラブの方に伝えたら、浦安で立ち上げないかと言ってもらったんです。

松田:バルドラールのどなたと話されたのですか?

泉:バルドラールで当時監督をやっていた岡山さんと話していく中で、今経験していることを活かし、障がい者スポーツとフットサルが連携できるチームを作りたいと相談しました。そこで賛同を得て、最初は東京などで立ち上げる話をしていたんです。そこから塩谷社長とお話する機会がありました。

自分としては障がいのある方がチャレンジできる場を作りたかったし、クラブとしてもFリーグのクラブとして社会貢献を行うメリットがあると考えていました。素人みたいなプレゼンだったかもしれませんが、社長に伝えたらやってみるかといってもらえました。ただ、チームを立ち上げていく中で、自分としてはデフメンバー主体としつつ、いろんな人が関われる場にしたいという想いがあったんです。もちろん、デフの人だけにしても良かったのですが、セパレートしたら意味がないと思っていました。ただ、聞こえる人はあくまでサポートとしての位置付けで、デフの人が主体になるチーム。そこからさらに高みを目指せるチームをイメージして作りました。

 

■「健常者と戦う所に価値を求めている」正直な気持ちが受け入れられた

松田:現在、デフィオは健常者とともに千葉県リーグの3部に所属しています。参加するための過程はかなり大変だったのでは?

泉:そうですね。自分は前例を調べ、どこで断られたとか、どこでうまくいかなかった理由を聞いていたので、申請が通らない可能性があると思っていました。ですが、エントリーをして代表者会議があった時に、「実は僕たちは耳が聞こえないメンバーが大半で、コミュニケーションの部分で工夫が必要なチームです。健常者と一緒に戦うところに価値を求めているのでお願いします」という気持ちを話させてもらったところ、拍手をもらったんです。

自分としては「なにそのチーム?」って思われると考えていたのですが、後から考えれば、バルドラール浦安の中にチームを作らせてもらったことも大きかったと感じます。皆さんが全く知らないチームではないので、スムーズにエントリーできたのかもしれません。

 

■聞こえないことでの工夫を、「こうすればできるんだ」というチャレンジとして見せたい

松田:実際に健常者の人たちと同じリーグを戦ってみての難しさはありましたか?

泉:リーグに加盟した当初、ホイッスルが聞こえづらいのに一緒にできるの? という疑問を持たれていたんです。他のチームの方などはあまり言葉にされていませんが、実際にはあったと思うんです。

でも、デフのメンバーはプレーを見て判断できますし、聞こえていなくても周りがサポートをしてきました。聞こえていなければ、ベンチから身振り手振りでサインを送ったり、手話も使って伝えたんです。

一見大変に見えるところをデフィオなりに工夫してきました。やっぱり、健常者と同じステージで戦うことに価値がある。一般の人にこうすればできるんだとか、こんなチャレンジがあるんだと思ってもらいたいんです。

僕自身も最初はこのチャレンジを躊躇していましたが、自分たちを見て新しいことを始めるきっかけにしてくれたら嬉しいですね。なので、リーグ戦を戦う上で色んな壁に当たりましたが、常にポジティブに考えて難しいことも工夫して乗り越えようという想いで取り組んでいます。

 

■試合で笛を吹く際は、サポートできる体制をとっている

松田:例えば、リーグ戦ではチームから第1審判以外のレフリーを出す必要があります。そこはどのようにされていたんですか?

泉:デフィオのメンバーも審判の資格を取りに行きました。知り合いを通じて、講習会に手話通訳の方に来てもらい、補助することで審判資格を取得してもらいました。実際に試合で笛を吹く際は、自分も近くにいて、何かあったらサポートする体制を取っていました。

3部の場合は第2審判と第3審判とタイムキーパーを努めますが、フットサルは第1審判と第2審判でジャッジをするので役割は大きいです。難しい部分もありますが、一緒の条件でオフィシャル業務も行っています。

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