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[いつでも、だれでも、ずっとサッカーを楽しむために]JFAグラスルーツ推進

「補欠ゼロ」を謳いながらも出場時間にバラつきがあることも。全員同じだけプレーさせて強くなる、を実践しているチームの取り組み

公開:2019年4月18日 更新:2019年5月 8日

キーワード:JFAグラスルーツ推進サッカーコンサルタント全員出場勝利至上主義市川GUNNERS補欠ゼロ

日本サッカー協会(JFA)技術部グラスルーツ推進グループ長の松田薫二氏が、『補欠ゼロ』『引退なし』『障がい者サッカー』、そして今年加えられた3つの新テーマ『女子サッカー』『施設の確保』『社会課題への取り組み』を実践している方にお話を聞くこの連載。

今回は『補欠ゼロ』をテーマに、サッカーコンサルタントであり、FC市川GUNNERS(ガナーズ:旧アーセナル サッカースクール市川)代表の幸野健一さんに、話を聞きました。
(取材・文:鈴木智之)

後編:全員出場の成果も! 試合の強度UPのために導入した「3ピリオド制」とは>>

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写真はサカイクキャンプ

<グラスルーツ推進6つのテーマ>
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■補欠ゼロの現状

松田:今回のテーマは『補欠ゼロ』です。日本サッカー協会の技術委員会でも従来から『補欠ゼロ』を提唱していますが、ジュニア年代で勝利至上主義が根強く、いわゆる「上手な子」しか試合に出られない現状があります。

幸野:はい。

松田:一方で、JFAグラスルーツ賛同パートナー制度の「補欠ゼロ」のテーマに認定された団体の中には、選手全員が試合に出ることの大切さを理解し、そのような趣旨の大会を開催し、地域から評価されたりしています。幸野さんはご自身のクラブだけでなく、各地の現場にも精通されていますが、『補欠ゼロ』の現状はいかがですか?

幸野:まず『補欠ゼロ』という考えには賛成で、非常に素晴らしいと思っています。実際に私のクラブでも『補欠ゼロ』を実現するために、8人制のU-12は16人、11人制のU-15とU-18は22人くらいしか選手をとりません。さらに「選手全員を年間の試合の40%以上、出場させる」と決めて、ジュニアからU-18までのカテゴリー、およそ200名の出場時間を集計して管理しています。

松田:それは素晴らしいですね。

幸野:目の前の試合や大会に勝ちたいのなら、上手な子を10人程度選んで、メンバーを固定して戦う方法もあります。でもそれをすると、上手な子は毎回試合に出られるので楽しいかもしれませんが、その他の子はつまらないですよね。練習ばかりで試合に出られないのなら、サッカーがつまらなくなって辞めてしまうかもしれません。

松田:そのとおりですね。サッカーだけでなく、日本の競技スポーツは学校のクラブ活動の中で育って来たので、小学校、中学校、高校、大学と学校数が減るのに比例して活動の場も減っていきます。一方で、どの世代でも大会の成績が最重要視されるため勝利至上主義に陥り、上手い人しか試合に出れなくなります。試合に出れない人はつまらなくなり、上に上がればあがるほど競争は激化するので、サッカーを続けることを諦めてしまいます。また、コーチからのパワハラや理不尽な扱い、クラブ内でのいじめなどもあります。これらは偏った勝利至上主義の産物ではないかと思います。

幸野:ドイツを始め、サッカー大国と言われる、ワールドカップ優勝経験のある国の競技人口は、子どもと大人の数を比べると、ほぼ円柱です。子どもの頃に始めたサッカーを、大人になってもやり続けているわけです。しかし日本の場合はピラミッド型で、子どもの競技人口は多いのに、年齢を重ねるに連れて辞めていってしまいます。

松田:そうですね。イングランドサッカー協会では2001年に「THE FOOTBALL DEVELOPMENTSTRATEGY(サッカー発展戦略)」という中長期戦略を策定し、各事業を進めていきました。その中に、プロクラブを頂点にした地域におけるクラブのヒエラルキーが図式化されていました。レベルに応じてクラブが層別され、プロクラブはその地域のヒエラルキーの中で選手のパスウェイに責任を持たなければならないという育成重視の内容のものでした。日本は大会成績重視なところが多く、プロクラブも町クラブも同じ土俵で争っています。全員がプロになれるわけではないのですから、目先の勝利に目くじらを立てないで、レベルに応じてプレーできる環境を創ることが大事ですよね。

幸野:おっしゃる通りで、プロ選手になれるのは2万人に1人です。これを世の中の人は知るべきで、そもそもプロになるのは狭き門なのです。

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全員出場させることで日々の試合の強度が高まりチーム力が上がることを実践している市川GUNNERS代表の幸野さん

 

■長い目で考えると全員出場の方がチーム力が上がる

幸野:僕から言わせると、上手な子だけを使って試合に勝って得られるのは、目先の勝利だけなんです。長い目で選手の育成を考えると、全員を試合に出した方が、チーム力はアップするんですね。

たとえば、私が監督をしているチームと、松田さんが監督を務めるチームがあって、毎月1回試合をするとします。私のチームは全員出場させるので、最初の2、3ヶ月は負けます。なぜなら、松田さんのチームは上手い子しか試合に出さないので、うちのチームのサブの選手を試合に出すと、そこから崩されて点を取られて負ける。しかし、3ヶ月、4ヶ月、半年と経つと、僕のチームと松田さんのチームの力関係は逆転していきます。最初は上手くなかった子たちでも、試合で使い続けることによって、試合の中で成長していきます。日々の練習の密度が濃くなっていくからです。週に1度の試合も大切ですが、同じように大事なの試合と試合の間にある日々の練習です。試合だけをしていてもうまくはなりません。練習も大事なんです。

僕のチームのうまくない子と松田さんのチームのうまくない子を比べたときに、3ヶ月後には僕のチームのうまくない子の方が、うまくなっているんです。毎週、試合に出ているので、当たり前ですよね。そうすると、何が起きるかというと、練習の質が高くなるんです。松田さんのチームは上手い子しか試合に出ていないので、1対1の練習をしたとしても、上手い子がそうでもない子を簡単に抜いて、シュートを打ててしまいます。

松田:力の差が埋まることはないですからね。

幸野:でも、僕のチームの子は試合に出ることで上達しているので、上手な子も簡単には1対1で抜けなくなる。そうすると練習の質や強度が上がり、結果的に、チーム全体のレベルが上がるんです。だから、最初の3ヶ月は負けるかもしれないけど、半年、1年というスパンで見たときに逆転できる。意外と、このことをわかっていない指導者が多いように感じています。大事なのは試合で得る刺激であり、日々の練習の質を上げることなんです。

 

■子どもたちに満足させる環境を与えるのが大人の役目

松田:とてもよくわかります。目先のチームの勝利だけではなく、子どもたち一人ひとりをどう育てていくかという視点が大事ですよね。サッカーに夢中になれば、自ら上手くなりたいと思い、練習にも力が入るでしょうし、その夢中にさせる最も大きなものはやはり試合でプレーすることだと思うんです。

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サッカーに夢中にさせられる要因として試合出場は大きいと語るJFAグラスルーツ推進グループの松田さん

幸野:去年の『全日本U-12サッカー選手権大会』の千葉県予選でベスト8に入ったのですが、そういう公式戦でもできるだけ全員を出場させてきました。目先の勝利のためには、上手な子を順番に選んで、メンバーを固定したほうが勝ちやすいかもしれません。でも、全員を上手くするために試合に出して、その結果、日々の練習の強度が上がることで、全員がサッカーの楽しみを感じながらうまくなることもできるんです。

松田:サッカーを心から楽しめる環境が、創造力に富み、自立した選手を育んでいくのではないかと思いますね。

幸野:僕ら指導者には、選手に対する責任があります。このクラブを選んで入ってきてくれた子たちに、「市川GUNNERSに入って良かったな」と思ってほしいじゃないですか。そのために上手い子、そうでない子の区別をせずに、クラブとして子どもたちに満足させる環境を与えるのは、僕ら大人が子どもたちに果たすべき、義務だと思っています。

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取材・文:鈴木智之

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