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[いつでも、だれでも、ずっとサッカーを楽しむために]JFAグラスルーツ推進

怒鳴るコーチの対応、中学生審判が保護者を退席処分に... 日本も参考にしたいドイツのグラスルーツ環境

公開:2019年2月25日

キーワード:JFAグラスルーツ推進U-10U-12U-8ドイツ怒鳴るコーチ発育状況育成環境補欠ゼロ

日本サッカー協会(JFA)技術部グラスルーツ推進グループ長の松田薫二氏が、「補欠ゼロ」「引退なし」「障がい者サッカー」を実践しているサッカーチームを訪ね歩くこの連載。今回は特別編と題し、海外のグラスルーツ事情に詳しい識者との対談を行いました。

お相手はドイツのフライブルガーFC U-16で監督を務める、中野吉之伴さんです。ドイツでの指導経験をベースに、育成年代の現状について話を聞きました。

後編では、大会当日の過ごし方で日本と異なる点やプロになるためのパスウェイ(道のり)、怒鳴るコーチの対応についてご紹介します。

(取材・文:鈴木智之)

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ドイツでは大会会場で「まず見かけない」光景とは? ※写真は少年サッカーのイメージです

 

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■日本でよく見る"試合の合間の練習" ドイツでやったら「新聞に載るかも(笑)」

松田:中野さんの本「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社刊)にもありましたが、ドイツでは本当に審判なしでやるのですか?

中野:大会形式がクラブ持ち回りなので、主催クラブが、審判がいた方がいいと判断した場合は、小学生の試合であればそのクラブの中学生が担当することもあります。審判のある、なしは主催クラブに委ねられています。

松田:審判がいない試合で、たとえばタッチラインを割ったボールがどちらのチームかわからない時などはどうしていますか?

中野:どっちもがマイボールと主張するか、どっちのボールだろう? と止まってしまうこともあります。その時は近くで見ていた指導者が「こっちのチームのボールだよ」と教えることもありますが、基本的には子どもたちの判断で進んでいきます。たまに勢いのある子が、強引にスローインを始めてしまうこともありますが、そこで細かく言うのではなく、すでにプレーが再開しているのだから、ボールを追いかけた方がいいんじゃない? という感じですね。

松田:たしかにそのとおりですね。

中野:日本の場合、指導者が審判をしなければいけないことも多いですよね。引率のコーチが足りなくて、試合の合間に子どもたちを見ることができないという話を聞いたことがあります。それに、日本では試合の合間に練習をしているクラブもあります。ドイツではまず見かけない光景ですね。

松田:ドイツでは試合の合間に練習をしているチームはあまりないのですか?

中野:おそらく、ドイツで小学校低学年の子たちが、試合の合間に練習をしていたら、新聞に載ると思います(笑)。ドイツの場合、子どもたちにとって好ましくないことをコーチがした場合、指導者を注意することのできる立場の人がいます。育成部長という立場の人が、たとえば子どもたちに怒鳴って指導をするコーチがいた場合、それがボランティアコーチであっても「うちのクラブには合わないから辞めてほしい」と言います。

松田:日本の場合、現場の指導を尊重する傾向が強いですね。

中野:はい。保護者の扱いについても同様で、自分の子どもが所属するチームの試合を見ていた時に、相手チームの保護者が客席から選手のプレーに文句言っていたことがありました。そうしたら、審判をしていた中学生が「言い過ぎだから、グラウンドから出て行って欲しい」退席処分にしたこともありました。そのあたりの、人としてどうするべきかという態度の部分は、ボランティアコーチであろうが、保護者であろうが厳格に対処します。

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ドイツでは試合の合間に練習している風景は見かけないと中野さんは言います

 

■サッカーを続けられる環境づくりの必要性

松田:日本の場合、選手のパスウェイにはクラブだけでなく、中学校や高校の部活、大学と様々な道がありますが、ヨーロッパではどのように選手のキャリアが進んでいくのでしょうか?

中野:ヨーロッパに限らず南米もそうですが、ドイツであればトップにブンデスリーガのクラブがあり、その下に地域の街クラブという形でヒエラルキーが決まっています。上手な子が目標にするのは、ブンデスリーガのアカデミーに入ることで、その道に行くためにはどうすればいいかを考えます。ドイツにもトレセンはありますが、役割のひとつに「現時点ではブンデスリーガのアカデミーに入るレベルにはないが、将来的に可能性がある」という、才能がある子を引き上げるために実施されています。

松田:日本とは少し違いますね。

中野:トレセンのチームで出場する大会もありますが、そこで勝つ、勝たないではなく、街クラブだけではできない要素をトレーニングしたり、上手な子たちと一緒にプレーをして、刺激を与えることで成長につなげていくという考え方です。ドイツにはブンデスリーガを頂点としたヒエラルキーがあり、そこへ通じる道が張り巡らさられています。大切なのは、子どもたちが「この先、選手としてやっていけるのか」を、自分で気づくことができるかどうかだと思います。もし、プロになるのは難しいと考えれば、他の道を考える必要があります。ただ、だからといってサッカーを辞めるわけではありません。アマチュアのクラブでプレーする大人も含めると、ドイツには協会に登録しているだけで420万人ほどいますから。

松田:ドイツはサッカー協会に登録している人数が、大人も子どもも合わせて700万人ほどで、その半数以上が大人ですよね。日本とは正反対の構造です。日本の場合は4種(小学生)の登録者がもっとも多く、年齢が上がるにつれて減っていく、ピラミッド型です。そこは日本サッカーの課題だと思っています。登録チームの数も、カテゴリーが上がれば上がるほど減っているのが現状で、強いチームしか残らなくなり、そこで試合に出られなくなると、もういいやとサッカーを辞めてしまう。ヨーロッパのクラブのように、誰もが続いて行ける形がないんですよね。それは今後、たとえば学校の施設を使うなどして、上下に年齢が広がっていくようなシステムを模索していく必要があると思います。

中野:ドイツでも年齢が上がれば上がるほど、サッカーを辞める子は増えます。それは人の成長を考えれば、仕方がないことです。環境も変わりますし、視野も広くなり、他に面白いことが見つかることもありますよね。日本の現状を見ていて残念だなと思うのは、本当はサッカーが好きで続けたいのに、そのレベルについて行けないから辞める子が多いこと。

松田:そうですね。上手な選手はプレーする場がありますが、レベルは高くないけれど、サッカーがしたい、仲間と楽しみたいという人が所属するクラブがほとんどないんですよね。サカイクで取材した中には、少年団の子どもたちが大人になったときにプレーする場を作りたいということで、成人のカテゴリーを作るクラブもありますが、全国的に見たら数は少ないと思います。

 

■目的の見えない練習は辛さが増幅

中野:やりたかったサッカーをやれていたら、大人になっても続けると思うんです。でもサッカーの練習で走りが多かったり、いろんなことを我慢してきて、サッカーって辛いな、もういいかなと思って、学校を卒業するタイミングで辞めてしまうのだと思います。選手目線で考えると、ボールを使って、適度な負荷のかかった練習であれば、監督に言われなくてもいくらでも走れると思うんです。でも、ボールを使わずにただ走る練習だったり、いつ終わるかわからない練習であれば、体力はつくかもしれないけど、辛いという感情の方が大きいですよね。

松田:サッカーを辞めてしまう子が多い現状を、なんとかしたいんです。上のカテゴリーでは通用しないから、進学と同時に辞めてしまう。小学生のときはがんばっていたけど、中学ではもういいやとか。レベルの低い子はカテゴリーが上がるに連れて、どんどん選択肢がなくなっていき、サッカーを辞めざるを得なくなってしまいます。日本の場合、たとえば小学6年生の登録者数が9万人いたのに、高校卒業時には1万人強ほどになってしまう。それだけの人数が進学の節目節目でサッカーを辞めてしまうんです。

中野:途中でサッカーを辞めたとしても、また戻ってくることのできる場所も必要ですよね。

松田:おっしゃるとおりです。そこをなんとか改善できないか、引き続き考えていきたいと思います。本日はありがとうございました。

中野:ありがとうございました。

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サッカーを辞めてしまう子を増やさない、一度辞めても戻ってこれる環境など、JFAとしても改善策を検討したいと語る松田部長

日本とドイツはグラウンド環境を含め、様々な違いがあります。高校や大学からJリーグに入団というルートは日本特有の育成環境だと思いますし、色んなルートでプロにチャレンジできる道があるのは良いことだと思います。

一方で、子どものころにある程度自分で「プロになれるかどうか」の現実を意識せざるを得ないドイツ。それでも中学生年代以降も誰もが自分のレベルに合ったチームでサッカーを続けることができる。

大人になるまで、大人になっても、ずっと継続してサッカーを楽しめる環境はとても素晴らしいと思います。

好きで始めたサッカーを嫌いになって辞めてしまうのは悲しいこと。すぐに全てを取り入れるのは難しくても、サッカー大国ドイツが取り組む「補欠ゼロ」「引退なし」の環境は、日本のサッカーファミリーも参考にしたい取り組みではないでしょうか。

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取材・文:鈴木智之

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