あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

2023年5月 1日

選手のノイズになるから細かい声かけをやめたら、チームが盛り上がってない印象に...... 試合中の声かけ、何を心がければいい?

市内でも下から数えた方が早いチーム。とある公式戦で久しぶりの勝利にベンチのコーチ陣も盛り上がったが、選手たちが嬉しそうじゃない。

選手の話を聞いて、試合中の指示がノイズになるならと気づきを与えるに留めるようにしたら、選手はやりやすくなったが、試合会場では相手チームに比べ盛り上がりに欠ける雰囲気だし何となく押し込まれているような印象に。 チームを盛り上げる声かけって、どうすればいい? とのご相談をいただきました。

今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが指導者の悩みに答えます。
(取材・文 島沢優子)

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(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません

 

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<お父さんコーチからの質問>

いつも記事を拝見しとても勉強になっています。 「伸ばしたいと思うなら離れなさい」の書籍は見つけた時に「これだ!」と思い同じ学年の保護者同士で回し読みをしていた程です。

U-11、12の指導をしていますが、試合中の声かけについてご相談があります。

うちのチームは決して強くはなく市内でも下から数えて何番目......というレベルですが、選手達は仲良く楽しくサッカーができていると思います。

今、私は試合中の声かけは最低限を心がけています。 前述の通り決して強いチームではないのですが、以前、公式戦で勝てそうな展開の試合がありました。結果、めでたく勝つことができたのですが、試合後の選手達の表情を見て大きな疑問が湧きました。

せっかく掴み取った久しぶりの勝利なのに選手が全く嬉しそうでないのです。その後、色々と観察し、話も聞いてみると、どうやら試合中にベンチの指示が多すぎた事が気になっているようでした。

良い展開のためベンチも盛り上がり声が増えていましたが、自分たちの大事な試合を指導者に横取りされた......、みたいな気持ちなのかと推測しています。

そのような事もあり、また、展開の早いサッカーの試合中に簡潔にメッセージを伝える難しさを実感し、選手達のノイズになるくらいなら余計な事は言わないでおこう、と思いました。 

試合中は良いプレーを(ボールに絡んでなくても)とにかく見つけて褒める、アドバイスはプレーの合間に「逆サイド空いてたよ、見えてた?」「後で呼んでたのは聞こえてた?」などの気付きを与える程度に留め、細かい振り返りは試合後にする事を意識しています。

選手もその方がやりやすいらしく、逆にこちらのメッセージをよく聞いてくれるようになりました。 

ただ、そうなると相手チームのベンチと比べて自チームのベンチが盛り上がっていない、選手の後押しをしていない、という雰囲気になり、何となく試合全体の空気も押し込まれたものになる印象を受けています。

選手にもチーム内で良いプレーを褒める、意思表示をする、という声を出すように伝えていますが、まだ試合の空気を動かす程にはなっていません。

池上さんは試合中のベンチからの声かけはどのような事を心がけていらっしゃいますでしょうか? また、チームを盛り上げるベンチからの声かけについてアドバイスをいただけると嬉しく思います。

以上よろしくお願いいたします。

 

 

<池上さんからのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

拙書も読んでくださったようで、ありがとうございます。

さて、試合に勝っても子どもたちがこころから喜んでいなかったと反省した、言い過ぎだったという結論に達して過度な声かけをやめたら、ベンチがおとなしいことに気づいた、とあります。

「相手チームのベンチに比べて盛り上げっていない」と、対戦相手のベンチと比較していますが、このベンチが指導者が盛り上げていたのか、選手だけで支えていたのでしょうか。いずれにしろ、大人が引っ張らないと静かになってしまうことの原因を探らなくてはなりません。

 

■声が出ていなかったのはどうしてか、を子どもたちに問いかけよう

「自分たちの仲間がピッチで戦っていて、いいプレーがあっても声が出ていなかったね。どうしてだろう?」

まずは、子どもたちに問いかけてください。

4種(小学生)の監督さんのなかには「自分たちのプレーで観ている人を喜ばせよう」と子どもに伝える方もいらっしゃいますが、私は違和感があります。小学生がサッカーをするときは、自分たちが嬉しくて、楽しくてたまらない。それしかないはずです。

ここでいう「自分たち」は、試合に出ているレギュラーも、ベンチにいるサブのメンバーも全員のはずです。

 

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■子どもたちにとってサッカーが「自分ごと」になっているか

一つめ。全員が試合に出ているか? 交代しながら出ているのか? 自分も目の前で行われている試合に出ると思えば、その試合は「自分事(じぶんごと)」です。一方で、試合に出るのは先発メンバーだけ、交代してもひとりか二人といった状況であれば、その試合は子どもの目から見れば「他人事(たにんごと)」に映ります。

中学生や高校生には「チームのためにひとつになれ」「チーム一丸」といった価値観は通用します。しかし、サッカーの入り口である小学生には通用しません。

何より、そういった言葉で説得させるのではなく、全員をなるべく均等に出場させてほしいと私は思います。このような「試合における環境設定」に問題はないか、考えてみましょう。

 

■子どもたちのサッカー認知度は育っているか確認しよう サッカーを理解してないと声が出ないもの

二つめは、サッカーの認知力が育っているかどうかを振り返りましょう。サッカーを知っているからこそ、ベンチから声を出せます。よく理解していなかったり、自信がなかったりすると声が出ません。

そのチームの子どもたちがどのくらいサッカーのなりたちを理解しているかは、ベンチメンバーがピッチにいる仲間にかける指示や声かけでそのレベルがわかります。

例えば、自陣のゴール前まで攻め込まれたとき、守備をしている選手がそのボールを取り返したとします。そのとき、子どもたちはどんな声かけをしているでしょうか?

「大きく蹴って!」とベンチから叫んでしまうチームはどうでしょうか? そうではなく、「ほら、キーパーがいるよ」とか「つないで!」と声をかけるチームは、多くの場合良いサッカーをしています。

つなごうとしてキーパーに戻してミスしたとしても、結果はどうでもよいのです。何も考えずただ蹴り出してしまえば、同じ場面がきて、カウンターに切り替えられるパスが出せるのに結局また蹴り出してしまいます。

 

■子どもが声を出しやすい環境か、チーム全体の雰囲気を観察しよう

三つめ。試合をしている子どもたちの様子はどうでしょうか? 嬉しくて、楽しくて、生き生きと試合をしているでしょうか? 

勝たなければいけない、ミスしてはいけないと委縮してはいないでしょうか? 子どもは大人の目や周囲の目を気にして縮こまってしまうと、声は出ません。そういったチーム全体の雰囲気はどうなのかを、よく観察してください。

コーチは、試合までに準備するのが仕事です。よって、試合中に指示や命令を出さなくていいはずです。

子どもたちに「相手チームの特長はわかった?」「トップに足に速い子がいるね」などと話します。子どもたちに「あとは考えてね。練習してきたことを思い出して試してみよう」と試合前に声をかければ、それで役目は終了です。

そのような三つのことを、他のコーチや保護者など大人たちで話し合って、どうすれば子どもたち全員が楽しく生き生きと試合をできるのかを考えてみましょう。大人が子どもたちの気持ちやチームの空気を感じることが重要です。そこをきちんと感じ取って、良い方向に替えていってください。

 

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